報告書(1923 関東大震災第3編)

災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成21年3月
1923 関東大震災【第3編】

報告書の概要

  • はじめに

    1923年の関東大震災では、東京市や横浜市などが壊滅的な被害を被った。その甚大な被害から、いかにして都市と生活あるいは経済、文化の再建をはかったか、その復興の過程を詳細に考察することにより、そこからの都市復興への教訓を明らかにした。
    後藤新平を中心にした帝都復興計画の策定とその実践の過程はもとより、いままであまり明らかにされていなかった被災者の住宅や生活の再建過程や、経済や産業さらには文化の復興過程にも焦点をあて、現代的視点からの関東大震災後の復興の再評価を試みた。

  • 第1部

    • 第1章 帝都復興と県下の復興

      東京と横浜を対象として国が主導して実施された帝都復興事業と、地方自治体と地域有力者層が主体となって実施された神奈川県や千葉県などの復興事業の概要を、震災当時の時代背景や社会状況、とりわけ都市計画に関わる技術的状況に触れて明らかにした。
      帝都復興の計画過程では、集団的な論議の中で当初の理想案が縮小されていく状況や、その中で区画整理を中心とした復興計画の骨格が形成されていく過程を明らかにしている。この中では、横浜における計画策定の過程にも詳しく触れている。
      帝都復興の事業展開では、近代日本の都市空間形成の基礎をつくったという観点から、土地区画整理事業などの成果を評価した。街路だけではなく、公園、橋梁、学校、病院、住宅、鉄道などの事業についても、その成果を具体的に考察している。

    • 第2章 県下等の住まい・生活・産業の復興

      ここでは、帝都復興計画の枠外となった神奈川県、千葉県、埼玉県、静岡県の復興の状況を、住まいや生活あるいは産業の復興に焦点をあてて考察をした。国からの十分な支援が得られない中で、被災者の生活を守るという地方政府の使命感のもとに、官民連携の復興組織が大きな役割を果たしたこと、義援金などによる復興財源の確保に努力したこと、地域の産業振興や社会事業の実施に力を入れたことなど、自立的な復興の展開過程を具体的に、明らかにしている。

  • 第2部

    • 第1章 被災者の生活再建過程と復興都市計画の関連

      被災者の居住移動過程と住宅再建過程を考察した。避難所や応急仮設住宅の環境整備とその撤収プロセスの考察では、震災後の集団バラック住宅の建設とその解消を目指して建設された公的な代替住宅は被災者の生活安定という面から大きな役割を果たした反面、バラックという不法状態の既得権化を生んでスラム形成につながったことを明らかにした。
      避難民の移動によってもたらされた郊外スプロールの考察では、郊外鉄道の整備もあって郊外部では急速な市街化が進展したこと、その中で基盤整備がしっかり行われた地域は限定されていたこと、その結果として密集木造市街地や不良住宅地区が拡大再生産された問題点を明らかにしている。

    • 第2章 産業と経済の復興

      関東大震災の経済被害の実態とそこからの復興過程や金融措置について明らかにした。
      震災による経済被害は当時のGNPの3割以上に及んだが、復興過程における設備の更新効果と労働力の削減効果によって、急速な産業回復と産業構造の革新を果たしたことを明らかにしている。その産業復興が、京浜工業地帯の形成にもつながっている。
      政府や日銀の金融措置や資金援助は、被災者の救済と金融秩序の安定維持に効果があったことを明らかにするとともに、真の震災被災者への救済が行き届かなかったことや不良企業の温存に手を貸した形になったことが、その後の日本経済の足枷になったことを明らかにしている。

    • 第3章 生活と文化の復興

      都市生活や文化の復興を、地域社会の再編成という視点から町内会組織の復興過程を考察するとともに、情報メディアに関する変化や思想言論や風俗の領域にも着目して考察した。震災後に町内の住民組織が救援や相互扶助で大きな役割を果たしことを踏まえて、地域生活の基礎組織としての町内会の結成が促進されたこと、その中で「共」の大切さが自覚されたことなどを明らかにしている。

  • おわりに−関東大震災の復興対応における教訓

    復興の成果を生みだしたものとして、第1に都市計画の理論や制度の用意、第2に地域社会での共助システムの存在、第3に比較的安定した経済基盤の存在、第4に施政者におけるリーダーシップの発揮、を指摘できる。他方、復興の問題点を生みだしたものとして、第1に復興のための財源確保、第2に計画における長期的視点の欠落、を指摘できる。

報告書(PDF)

※報告書の刊行日(平成21年3月)が誤っていましたので、訂正いたしました(令和5年6月)。

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