防災の動き



南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応の検討について
〈内閣府(防災担当)調査・企画担当〉

1. はじめに

日本はその地理的要因から、過去より各地で大規模な地震に見舞われています。平成23年の東日本大震災をはじめ、近年も熊本地震や大阪北部地震、胆振東部地震などが発生し多くの尊い命が失われており、また首都直下地震や南海トラフ地震など一度発生すれば甚大な人的・経済的被害が予想される巨大地震の発生も懸念されています(図1)。特に南海トラフ地震においては、M8~9クラスの地震が今後30年以内に発生する確率が70~80%(地震調査研究推進本部地震調査委員会の調査、平成30年1月1日現在)とされており、大規模地震発生の切迫性が指摘されています。

南海トラフ地震の被害軽減に向けた防災対応の検討が急務であり、国・都道府県・市町村・企業等が一体となって対策を講じていく必要があります。

図1 南海トラフ地震で想定される震度分布図(特定のケースの場合)

図1 南海トラフ地震で想定される震度分布図
(特定のケースの場合)


2. 南海トラフ沿いで異常な現象が観測された際の防災対応の検討

南海トラフ沿いでは過去にも大規模な地震が発生しており、その発生形態は多様です(図2)。現在の科学的知見では、南海トラフ地震の発生時期・発生場所・規模を確度高く予測することはできませんが、現在の科学的知見を防災対応に活かすという視点は引き続き重要です。平成28年度の「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ」において、南海トラフ沿いで観測され得る異常な現象のうち、観測される可能性が高く、かつ大規模地震につながる可能性があるとして社会が混乱するおそれがある典型的な4つのケースについて、現在の科学的知見に基づき、異常な現象の観測時におけるその評価情報を活かした防災対応の基本的な方向性を整理しました(図3)。また、平成30年12月には「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ」による報告を取りまとめ、どのような現象が典型的なケースに該当するか、またその具体的な基準等について検討を行うとともに、住民や企業における基本的な防災対応の方向性とそれらを実行性のあるものとするための必要な仕組み、地方公共団体・企業等が今後防災対応を具体的に検討・実施するための配慮事項等について示しました。

図2 過去に起きた大規模地震の震源域の時空間分布

図2 過去に起きた大規模地震の震源域の時空間分布


 図3 典型的な4つのケースにおける基本的な対応

図3 典型的な4つのケースにおける基本的な対応

平成31年3月には地方公共団体や企業等がとるべき防災対応を検討し、あらかじめ計画として取りまとめる際の参考となる「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン」を公表し、地方公共団体が地域防災計画に定める「南海トラフ地震防災対策推進計画」(以下、推進計画という。)や、企業等が定める「南海トラフ地震防災対策計画」の策定に取り組んで頂いています。概ね令和元年度中を目途に推進計画を策定し早期の本格運用ができるよう、今後も引き続き地方公共団体や企業等と連携しながら南海トラフ地震対策を推進していきます。

3. おわりに

南海トラフ地震対応等、災害対応は、予防的な対策から、発災後の応急復旧、復興等まで、自助、共助、公助の観点から総合的に取り組んでいくことが求められます。地震はいつでもどこでも発生することを前提として、これらの取組みを推進しつつ、南海トラフ地震の被害の甚大性を考慮し、少しでも被害を軽減するために、現在の科学的な知見を活かし、社会全体でどのように備えることが適当なのか、検討を進めていきます。なお、本報で紹介したワーキンググループのとりまとめ結果等は、内閣府防災情報のページ(https://www.bousai.go.jp/)で公開しているのでご参考にしてください。





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