防災の動き

火山の避難計画策定の取組み事例集の公表について

平成30年3月10日霧島山(新燃岳)の状況(写真提供:国土交通省九州地方整備局)

平成30年3月10日霧島山(新燃岳)の状況
(写真提供:国土交通省九州地方整備局)

1 はじめに

火山が噴火すると、多数の住民、登山者等の避難が必要になります。こうした避難を混乱なく迅速に実施するためには、避難計画をあらかじめ具体的に定めておく必要があります。

火山は複数の市町村や都道府県の境界に存在することも多いことから、各火山地域において、火山単位の統一的な避難計画の策定が進められています。今回は、この取組みをまとめた事例集を公表しましたので紹介します。

2 これまでの経緯

平成26年の御嶽山噴火災害の教訓等を踏まえて「活動火山対策特別措置法」(以下、「活火山法」という)が平成27年に改正され、火山災害警戒地域として指定された23都道県、140市町村(延べ155市町村)に対し、火山防災協議会の設置が義務づけられました。この協議会において、複数都道府県・市町村間で整合のとれた火山単位の避難計画等について協議を行い、噴火時等の避難計画を都道府県及び市町村の地域防災計画に位置付けることとされました。

内閣府ではこの「活火山法」の改正を踏まえて、各地方公共団体の避難計画策定の取組みを支援するために、平成28年に「噴火時等の具体的で実践的な避難計画策定の手引き」(以下、「手引き」という。)を改定するとともに、火山防災協議会を構成する地方公共団体と内閣府が避難計画を協働で検討する取組みを平成28年度から実施してきました。

3 避難計画策定の取組み事例集の概要

(1)避難計画策定における課題

「手引き」においては、火山防災協議会において避難計画を策定する際の参考として、避難計画に定めるべき項目ごとに、重要となる事項やポイントとなる点、火山地域の特性に応じて特に留意すべき点等を解説していますが、実際に避難計画の検討を行う中で、地方公共団体の担当職員から以下の2点の課題が挙げられました。

  • 避難計画の検討における、必要な基礎データの整理、ハザードマップを踏まえた対象地区ごとの安全な避難方法の検討の具体的な進め方がわからない。
  • 検討した結果の避難計画へのまとめ方がわからない。

(2)事例集の構成と内容

(1)の課題を踏まえ、「手引き」に基づき避難計画を策定する、または見直す際の検討の参考となるよう、これまでの避難計画の検討の取組みから得られた知見・成果を、次の3つの資料からなる「避難計画策定の取組み事例集」(図1)としてとりまとめ、具体的な検討手順、検討結果の避難計画へのまとめ方、各火山地域に特徴的な課題に対する検討のポイントを解説することとしました。

図1:避難計画策定の取組事例集の概要

図1:避難計画策定の取組事例集の概要

1.「 実践的な避難計画策定のための検討手順」(具体的な検討手順の解説)(図2)
火口周辺地域における避難の場合と、居住地域における避難の場合のそれぞれについて、避難計画の主要な項目である避難対象地域、避難経路、避難場所等及び避難所等を検討する具体的な手順を整理し、さらに、検討の準備段階で収集すべき資料や、地図を使った避難方向の検討手法、共通の様式を用いた検討結果のとりまとめ方法等について解説しています。

図2: 実践的な避難計画策定のための検討手順(居住地域)の流れ(左)と避難方向の検討例(右)

図2: 実践的な避難計画策定のための検討手順(居住地域)の流れ(左)と避難方向の検討例(右)

2.「標準的な避難計画の記載事例」(検討結果の避難計画へのまとめ方の解説)
「手引き」において避難計画に定めるべきとされている事項を、具体的にどのように記載するかの参考となるよう、各火山地域の避難計画の記載内容を収集、「手引き」の目次に沿って整理し、記載内容を検討する際に着目すべき点や紹介事例のポイント、火山防災協議会で検討した火山単位の避難計画を市町村の地域防災計画に反映する方法等を解説しています。

図3: 標準的な避難計画の記載事例のページ構成(左)と避難経路の設定の例(右)

図3: 標準的な避難計画の記載事例のページ構成(左)と避難経路の設定の例(右)

3.「 先進的な検討事例」(各火山地域に特徴的な課題に対する検討のポイントの解説)
離島からの島外避難や居住地域における段階的な避難誘導など、各火山地域における個別の課題について対策を検討する際に参考となるように、地方公共団体と内閣府が協働で検討した火山における特徴的な課題を抽出し、課題解決に至るまで考え方や検討のポイントを解説しています。

4 おわりに

避難計画の策定状況を見ると、「活火山法」において定めることとされた6項目全てについて避難計画に記載のある市町村は、火山災害警戒地域の延べ155市町村のうち、平成28年3月時点の調査では20市町村でしたが、その後、平成30年3月時点の調査では68市町村と増加し、また、全体的に記載のある項目数が増えるなど、各地方公共団体において避難計画策定の取組みが進められています。

一方で、本年で「活火山法」の改正から3年が経過していることも踏まえ、避難計画策定の取組みを一層加速させるため、内閣府では、今回公表した「避難計画策定の取組み事例集」も活用しつつ、各地方公共団体の取組みを支援してまいります。



●「手引き」及び事例集については、内閣府防災担当のHPに公表しておりますので、ご参照ください。

「噴火時等の具体的で実践的な避難計画策定の手引き」
▶https://www.bousai.go.jp/kazan/shiryo/index.html QRコード

「避難計画策定の取組み事例集」
▶https://www.bousai.go.jp/kazan/tebikisakusei/jireisyu/index.html QRコード



〈内閣府(防災担当)調査・企画担当〉


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