防災の動き

アジア防災センターの国際的な取組み20年

アジア防災センターのメンバー国

アジア防災センターのメンバー国

1 アジア防災センターの設立

国連は1990年代に「国際防災の10年」の活動を進め、1994年に国連防災世界会議を開催し、国際防災の指針となる「横浜戦略」を策定した中で、地域レベルでの防災協力の推進とそのための地域センターの設立を行動計画に位置付けました。

一方、1995年に発生した阪神・淡路大震災の教訓を広く各国に紹介していくことは防災分野における重要な国際貢献の一つと認識されました。

このような状況を背景とし、1998 年7月30日にアジア防災センター(ADRC)が兵庫県神戸市に設立されました。

アジア防災センター開設式典

アジア防災センター開設式典

2 アジア防災センターの20年の活動

メンバー国との緊密な協力のもと、ADRCは2018年に設立20周年を迎えました。アジア地域での防災活動の成果が評価され、参加国数は当初の22か国から31か国に増加しました。ADRCは、1)防災情報の共有、2)メンバー国の人材育成、3)コミュニティの防災力向上を活動の柱とし、メンバー国の防災能力の強化を図ってきました。

1. 防災情報の共有
ADRCは毎年メンバー国防災担当者や国内外の防災専門家を招へいしてアジア防災会議を開催しています。これまでに日本を始めインド、カンボジア、韓国、カザフスタン、インドネシア、スリランカ、タイ、アゼルバイジャンで開催し、各国の現状も共有してきました。

また、世界中の災害識別のため「世界災害共通番号(GLIDE)」を提唱し、活用を推進しています。


●平成29 年度 広報誌「ぼうさい」88号参照。

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さらに、宇宙技術を用いた防災協力であるセンチネル・アジアの緊急観測受付、国連宇宙情報プラットフォーム地域支援事務局、利用促進のための能力強化を支援しています。

2. メンバー国の人材育成
ADRCではメンバー国の人材育成を支援する活動のひとつとして、1999年以来研究員を受入れ、現在までに26か国合計108名の研究員を受け入れました。革新的・実用的な防災の取組みや技術を学ぶとともに各国における防災対策の将来について意見交換する機会となっています。

アジア防災センターの歴史

アジア防災センターの歴史

3. コミュニティの防災力向上
効果的な防災には住民の防災力の向上が不可欠と考え、ADRCはさまざまなツールの開発や普及の取組みを行ってきました。「防災タウンウォッチング」は、住民主体の活動が期待できる簡単かつ実践的なツールとして、多くのメンバー国で実施されました。また、2004年のインド洋津波を受けアジア各国向けに作成した「稲むらの火」津波啓発教材は、各国での津波に関する知識の普及に貢献しています。


●ADRC20年の活動詳細は以下。

https://www.adrc.asia/adrcreport_j/

3 アジア防災会議(ACDR)2018 の開催

設立20周年を記念し、アジア防災会議(ACDR)2018を内閣府共催で10月30日(火)~ 11月1日(木)に兵庫県の淡路夢舞台で開催し、2018年10月に新規加盟したトルコを含む25メンバー国及び関係機関から合計118名が参加しました。

アジア防災会議(ACDR)2018の参加者

アジア防災会議(ACDR)2018の参加者

最初に濱田センター長がADRC20年の活動を振り返るとともに今後の重点課題を提案し、メンバー国から(i) 人材育成、(ii)民間を含むデータ収集、(iii) 計画、政策、プログラムにおける防災主流化、(iv) 自治体活動を含むコミュニティ強化の取組みという共通問題が述べられました。そして中央大学山田教授の基調講演では、今後災害の変化に合わせた新しい防災戦略が必要であることが強調されました。

技術セッションにおける主なト ピックは以下のとおりです。

1. 国境を越えた災害に対する地域協力
国際河川の水害や森林火災の煙害・火山噴出物等、自然災害の影響範囲は国境を越えることから、大規模災害対応の経験共有、捜索救助支援、早期警戒、情報共有、共同教育・訓練、相互援助等地域協力のメリットが確認されました。

2. 世界的な災害データの強化
防災の取組みを政策に効果的に反映させるためにSDGグループと協力すること、国連が指標評価方針を策定すること、GLIDE、GCDS、遠隔教育等利用可能なすべてのツールを整備することが推奨されました。また、仙台防災枠組の指標をモニタリングするネットワーク形成を提案しました。

3. ADRC客員研究員制度を含む人材育成制度
元ADRC客員研究員からの発表を受け、同制度の強化、地域研修機関がニーズや状況に応じた研修プログラムを開発すること、防災の主流化や防災投資等を推進するため人材育成を引き続き強化することが推奨されました。

4. 宇宙技術と防災促進のための実用的ソリューション
センチネル・アジアが防災活動に貢献してきたこと、リアルタイム衛星利用による早期警戒や防災対策を促進する様々なソリューションを確認しました。

更に、サイドイベントとして震災対策技術展、JICA主催の「2020年に向けた地方防災計画策定促進ワークショップ」、UNESCAP主催の「障害を包括する防災に関する国際フォーラム」、センチネル・アジアJPTMが開催され、多くの参加者の情報共有とネットワーク化の機会となりました。

●ACDR2018の詳細は以下。

https://www.adrc.asia/acdr/2018_index.html QRコード

4 アジア防災センターの今後の活動

アジア地域は経済活動のさらなる進展や、気候変動による自然災害の激甚化・頻発化による被害の増大が懸念されます。ADRCは、20年の活動を通して強化されたメンバー国や関係機関のネットワークを活用し、アジア地域のさらなる防災能力の強化を目指して活動を進めていくことが求められます。



〈アジア防災センター〉


所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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