防災の動き

災害レジリエンス構築のための 科学・技術国際フォーラム2017の開催報告

東京大学 大学院工学系研究科 川崎 昭如
土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM) 小池 俊雄

国際防災における科学・技術分野のこれまでの経緯

2015年3月、第3回国連防災世界会議が仙台で開催され、世界各国で拡大する災害による人的、経済的被害を2030年までに軽減する目標を定めた『仙台防災枠組』が採択された。『仙台防災枠組』では4つの優先事項として、「災害リスクの理解」、「災害リスク管理のための災害リスクガバナンス」、「レジリエンスに向けた防災への投資」、「効果的な応急対応に向けた準備の強化とより良い復興(Build Back Better)」が定められるとともに、全国的防災組織(ナショナルプラットフォーム)の強化が謳われている。

それに先立ち、日本学術会議では2013年より防災・減災に関する国際委員会を組織し、国際的な防災・減災に関する議論を積み重ねてきた。その成果として、2015年1月、皇太子殿下ご臨席のもと、「防災・減災に関する国際研究のための東京会議」を開催し、防災・減災と持続可能な開発の双方を達成する科学・技術のあり方を主張する「東京宣言」をまとめ、国際社会へ提示した(小池、2016)。その内容は、『仙台防災枠組』において色濃く反映されている。また2016年2月には、提言「防災・減災に関する国際研究の推進と災害リスクの軽減」を発出し(日本学術会議、2016)、2016年5月のG7サミットへ向けてGサイエンス共同声明「持続可能な発展を支える災害レジリエンスの強化」の取りまとめを行った。このように日本学術会議では世界をリードする日本の防災・減災分野の学術活動を推進してきた。

開催概要

2016年1月、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)はジュネーブにて科学・技術会議を開催し、『仙台防災枠組』を実施するための科学・技術ロードマップを作成し、国際協力を推進するための科学・技術パートナーシップを構築した(Aitsi-Selmi et al., 2016)。その成果を踏まえて、『仙台防災枠組』の4つの優先行動の着実な実施に向けた更なる具体的行動を策定すること目的に、日本学術会議とUNISDR、国際科学会議(ICSU)、災害リスク統合研究(IRDR)、土木研究所、防災科学技術研究所の6機関が主催となり、「持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議ー災害レジリエンス構築のための科学・技術国際フォーラム2017」を開催した。2017年11月23日〜25日にかけて、大学・研究機関、政治家、行政機関、民間企業などの防災・減災に関わる世界各国の科学・技術の関係当事者(ステークホルダー)が日本学術会議に一堂に会し、参加総数は42カ国から228名に及んだ。

フォーラムの目的

本フォーラムでは、防災・減災に関わる科学・技術分野が一体となり、政治家・行政官・民間企業等のステークホルダーと協力して、『仙台防災枠組』の優先行動の実施に向けて、1)科学・技術分野と社会との連携によるナショナルプラットフォームの強化、および2)災害リスクの理解と影響評価、および災害リスク軽減に資する科学・技術の現状と将来像に関する統合的知見の取りまとめ(シンセシス)の必要性と意義を協議することを目的とした。その成果として、上述1)の指針(ガイドライン)と2)の報告書を取りまとめるための実施計画案を策定するとともに、『仙台防災枠組』の4つの優先行動、およびナショナルプラットフォームの強化、分野間連携、優先行動のシンセシスに関する7つの政策提言(ポリシーブリーフ)を取りまとめた。

全員参加型のフォーラム構成

本会議では、国際的指導者による全体協議(ハイレベルパネル)に加えて、4つの“優先行動における科学・技術の役割”と“ナショナルプラットフォームの強化”、“分野間連携”、“優先行動のシンセシス”について全部で7つの全体討議(プレナリー)を実施した。併せて、各優先行動に関する分科会を設け、科学・技術分野の各ステークホルダーでの熟議を行った。また、各日の昼食時には、ナショナルプラットフォームの事例紹介や、産学連携インキュベーションの事例紹介に関するポスター発表や討議も併せて実施した。

本フォーラムの特徴として、上述の7つのポリシーブリーフおよび後述する「東京宣言2017」をまとめるための各全体討議および分科会にて、228名の参加者全員それぞれが共同議長、パネリスト、ディスカッサントの何れかの役割を担った点にある。すなわち参加者全員が実質的議論に加わり、フォーラムの成果文書であるポリシーブリーフおよび「東京宣言2017」を協働で作り上げるプロセスを共有したことになる。これにより、参加者一人ひとりが成果文書のオーナーシップを持つとともにその実施に対して責任を持つ行動を取ることが期待できる。

東京宣言2017

最終日には、皇太子殿下のご臨席を賜るとともに、小此木八郎内閣府特命担当大臣(防災)、山極壽一日本学術会議会長、大西隆前日本学術会議会長、ロバート・グラッサー国連事務総長特別代表(防災担当)、韓昇洙防災と水に関する国連事務総長特使や国際機関の代表などのご出席のもと、災害レジリエンスの構築に向けた科学・技術の現状認識、目指すべき方向性、具体的活動をまとめた「東京宣言2017-Science and technology action for a disaster-resilient world-」が採択された。この中には、ナショナルプラットフォームの強化とより良い発展を支援する科学・技術のあり方に関する指針の作成計画、および分野間連携・社会と科学の連携に基づく災害リスク軽減のシンセシス報告書の作成計画が含まれている。また本フォーラムの参加者を中心として、今後これらの計画を国際チームとして実施することに関する合意を得た。本フォーラムの成果物である「東京宣言2017」及び7つのポリシーブリーフは本フォーラムのウェブサイト(http://wci.t.u-tokyo.ac.jp/ResilienceForum2017)で公表している。

  • 全体協議および全体討議の会場
    全体協議および全体討議の会場
  • 大西隆前日本学術会議会長の司会による全体協議
    大西隆前日本学術会議会長の司会による全体協議
  • 集合写真
    集合写真

●参考文献

小池俊雄(2016)第3回国連防災世界会議を踏まえた次世代の防災・減災、学術の動向、21(3), 3_83. 日本学術会議(2016)防災・減災に関する国際研究の推進と災害リスクの軽減 ―仙台防災枠組・東京宣言の具体化に向けた提言―

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-t225-1.pdf

Aitsi-Selmi, A., Murray, V., Wannous, C., Dickinson, C., Johnston, D., Kawasaki, A., Stevance, A.-S., Yeung, T., et al. (2016) Reflections on a science and technology agenda for 21st century disaster risk reduction. Based on the scientific content of the 2016 UNISDR Science and Technology Conference on the Implementation of the Sendai Framework for Disaster Risk Reduction 2015–2030. International Journal of Disaster Risk Science, 7(1), 1-29.


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