防災の動き

国際防災を産官学で進めると言うこと

一般社団法人 日本防災プラットフォーム
代表理事 西口 尚宏

2014年6月の日本防災プラットフォーム(JBP)の設立から早くも3年半が経った。当構想を開始したのが2011年の5月であるから、既に6年半このテーマに取り組んでいることになる。本稿ではJBP3年半の歩みを振り返り、今後の展望について述べたい。なお、国際防災の活動は、政府の進める質の高いインフラ輸出戦略とも軌を一にするというのが私たちの基本的なスタンスである。

ご案内の通り、日本は自然災害が非常に多い国土であり、数百年に渡り幾多の自然災害に見舞われてきた。毎回、多くの尊い人命の犠牲を出しながらも、常に立ち上がり復興を続け、次の自然災害に備えた防災・減災の努力を続けてきた重層的な蓄積がある。その努力と実績については、国際社会からも高い評価を勝ち得ていることは周知の事実である。一方、経済の発展段階を問わず、世界各国で引き続き自然災害被害が発生し続けている。日本防災プラットフォームは、そのような事態を鑑み、日本の重層的な経験を海外の自然災害被害の低減、すなわち国際防災活動、に各社事業として進めていく意思をもつ企業によるプラットフォームである。社会の課題を事業として解決するというスタンスは、持続開発可能な開発目標(SDGs)の実現に民間セクターの事業参加が必須であるという流れとも合致している。

ちなみに、日本語の防災と言う言葉には、自然災害に対して、計画、準備、防御、予測、警報、避難、救助、復興という各段階において人命、財産の損失を軽減させる総合的な取り組み、という意味が込められており、災害発生時の対応のみならず、非常に広範囲な活動を含んでいる。JBPが国際的な活動を意図しているにも関わらず組織名にあえて「防災:BOSAI」と入れた理由は、総合的な活動の重要性を国際社会へ訴えていくという意図の表れでもある。また、パリ条約の締結から明らかなように地球温暖化も含む気候変動の影響や都市への人口集中化の流れから、今後さらに災害発生の頻度が増えるとの予測もあり、「防災力を高めるための事前投資や防災の主流化」は経済発展上の重要なテーマである。この分野で、現在までに数多くの災害を乗り越えて、社会経済の発展を達成してきた我が国日本の潜在的な役割は大きい。

一方、日本国内にノウハウがあるのは事実であるが、担当省庁、業界団体、各社が縦割りで個別に活動することも多い。そこで、日本の官・民・学のそれぞれの強みとノウハウに横串を通して持ち寄り、組み合わせることによって、世界各国の人々にとって意味のある成果が生まれると考えたのがJBP活動の基本思想である。特に、官の総合的防災行政のノウハウと、民間の実践的な専門技術力と、学の最新の知見が組み合わされることによって、今までにない付加価値を生み出すことが可能になるのではないか、という仮説に基づいている。従って、行政、業界、専門分野の縦割りの枠組みを超えて、国際防災というテーマによる横串を通し、合目的な協働をするような「場」であることが「日本防災プラットフォーム」の特徴である。国交省を始めとして多くの関係者の皆さまの絶大なご協力を得てJBPを設立して以来、数々の活動を行ってきた軌跡は次の通りである。

❶2015年3月に行われた「第三回国連世界防災会議」にて他国と共に民間セクターの役割の重要性を訴え、JBP会員企業の展示を行なったこと。なお、「仙台防災枠組2015-2030」の採択により、防災に関わる事前投資の重要性が合意事項として定着したこと。

❷国交省を起点としつつ、総務省、内閣府、経済産業省、外務省の各省の皆様との具体的な活動が本格稼働したこと。なお、JBP理事会や情報交換会においては各省の皆様も参加し、各省の取り組みの共有を一緒に行うなど横串連携の実現の場になっていること。

❸国交省の進める防災共同対話において、インドネシア、ミャンマー、ベトナムでの防災ビジネスに関心を持つ企業による検討会が結成され、現地視察や相手国行政との活発な議論を続けていること。

❹内閣府や日本国大使館との協業によるルーマニアでのセミナー実施や、バンクーバー総領事館との連携によるバンクーバーでの産官学合同セミナーなど、欧州、北米においての活動他、各国からの訪日団に対して真摯に対応を続けていること。

❺2017年4月に実施した一般社団法人化により、事務局体制が確立し、より機動的な活動を行う体制が整ったこと。

❻ JICA、世界銀行、国連開発計画(UNDP)、国連防災戦略事務局(ISDR)、アジア開発銀行(ADB)などと協力関係を個別に議論し、具体的な案件形成についての対話を継続していること。

❼会員どうしがお互いの事業内容や強みを知って企業連携のきっかけを作るため、また他社のビジネス方法や成功事例を自社の海外展開に活かすため、ビジネス連携推進会を定期的に開いていること。

❽会員企業の技術を英語で対外発信するデジタルプラットフォームへの海外からのアクセスが140国を超えるまでになったこと。

民間企業の立場では、長年の交渉が先方の政権体制の変化によってゼロクリアするなど政治リスクとも隣り合わせの分野でもあるが、日本政府や国際機関との一層の連携を強化し、国際防災分野の事業としての確立への挑戦を続けていきたい。

  • 日本・ミャンマー防災協働対話ワークショップの様子
    2月7日(火)~8日(水) ミャンマー・ネピドー市
    「日本・ミャンマー防災協働対話ワークショップ」
    ミャンマー検討会のメンバーが政府の防災担当省庁に JBPの活動や各会員の防災技術を説明
  • ルーマニア・ブカレスト市「日本・ルーマニア防災会議」の様子
    3月13日(月) ルーマニア・ブカレスト市「日本・ルーマニア防災会議」
    JBP事務局と会員2社がルーマニアにて内閣府が主催する防災会議に出席し、
    防災事前投資の重要性と日本の優れた防災技術を説明。

(画像提供:すべて一般社団法人 日本防災プラットフォーム)

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