防災の動き

いのちを見つける犬〜災害救助犬〜

緊急救助犬援助隊 代表幹事救助犬訓練士協会 理事長 村瀬英博
緊急救助犬援助隊
代表幹事救助犬訓練士協会
理事長 村瀬英博

災害が発生したとき、土砂や倒壊家屋の瓦礫に埋没してしまった見えない被災者の“いのち”を探し出すために、災害現場に出動する犬たちを皆さんご存知でしょうか?その犬たちを災害救助犬と言います。

災害救助犬は“臭い”(被災者が発する呼気や体臭)によって被災者を捜索しその位置を特定し、吠える事によって位置を知らせます。現場の状況にもよりますが、人が進入出来ない災害現場を遠隔操作により数分程度で探知することができます。科学技術王国日本においても捜索資機材(各種カメラ・ロボット・画像探知装置・音響探知装置)などありますが、現場到着からの展開の早さという面もあり、不特定多数の方々が被災した災害で安否不明者数が特定出来ない場合や広域な災害現場の場合、救助犬を捜索資機材の一つとして活用する事は機械的な捜索資機材のみの捜索に比べより効率的と考えます。

  • 優れた嗅覚で被災者を探し当て、救出の手助けをする災害救助犬。
    優れた嗅覚で被災者を探し当て、救出の手助けをする災害救助犬。
  • 優れた嗅覚で被災者を探し当て、救出の手助けをする災害救助犬。
    優れた嗅覚で被災者を探し当て、救出の手助けをする災害救助犬。

国際的には、特にヨーロッパにおいて古くから犬を育成活用することが始まりました。犬は昔から馬などの家畜と同様、人の生活に欠かせない存在でした。例えば、狩りで仕留めた鳥などを探し拾ってきたり、羊などの家畜を移動させる為に群れを統率させたりと、犬の優れた嗅覚や機動力などの能力を発揮し、人との関わりにおいて重要な役割を担ってきました。その後、山岳遭難において活用されるようになり、現在では災害救助犬をはじめ、麻薬や検疫等の嗅覚による探知活動において幅広く育成し活用されるようになりました。

地震災害の他にも、台風による風水害で起こる土砂災害や雪山での雪崩による災害現場など、あらゆる場面で災害救助犬が活躍しています。
地震災害の他にも、台風による風水害で起こる土砂災害や雪山での雪崩による災害現場など、あらゆる場面で災害救助犬が活躍しています。

国内では阪神大震災以降、災害救助犬の育成が始められましたが、未だ救助犬に対する認識が低く、一部を除き民間ボランティアによる活動になっています。

救助犬には捜索能力と服従能力が必要となります。捜索能力には倒壊建築物の瓦礫や土砂流木の災害現場等高度の障害がある現場に入り、生存者の反応を探知する突破力と体力、臭気を上手く読み取る集中力が必要です。服従能力とは、ハンドラー(救助犬に帯同する指導手)の指示に基づいてリモコンの様に前進や左右に進入して捜索させ、緊急退避が発令された場合には速やかに呼び戻すといった様に犬が正確にハンドラーの指示に従うことです。犬とハンドラーのペアーはこの様な捜索、服従の実地作業を行い、災害救助犬の認定試験を受験します。しかしながら、各救助犬団体の審査内容にはバラツキが多く標準化されていないという事実もあります。

また救助犬の運用面において日本の場合、ハンドラーが民間人になるので、責任の所在など、各災害救助機関や救助犬団体の救助犬の運用に対する考え方においても温度差があります。また、民間人が災害現場に進出する場合は車両の緊急走行や規制除外通行することが出来ず、東日本大震災や熊本地震では発災から2日〜3日後からの活動になり、迅速な捜索活動とはいえない実績があります。その結果、災害初動段階で災害救助犬という有効な一種の資機材を活用出来ていない状況にあります。

この様な状況の中で、救助犬団体合同による『緊急救助犬援助隊』を編成し、各地の災害発生時に共同連携する事を目指した活動も本格化しています。救助犬団体と各自治体との災害協定の締結が進み、機運が高まっているのと同時にその連携要領について各自治体や現場の災害対応機関と検討を重ね、今ある問題を解決し、近い将来生起するであろう大規模災害に対して準備する事が災害救助犬分野で急務となっています。

集合写真
〈画像提供:すべて救助犬訓練士協会〉

〈緊急救助犬援助隊 代表幹事 救助犬訓練士協会 理事長 村瀬英博〉

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