Disaster Management News―防災の動き

災害対策基本法改正(放置車両対策等の強化)

平成26年2月の大雪の教訓や今後発生が懸念される首都直下地震対策の必要性等を踏まえ、災害時に立往生車両や放置車両によって道路が閉塞してしまった場合に、緊急通行車両の通行を確保するため、道路管理者が車両の所有者等に移動を命じたり、それが困難な場合には自ら車両の撤去を行ったりすることができることとする「災害対策基本法の一部を改正する法律(平成26年法律第114号。以下「改正法」という。)」が、平成26年11月に成立いたしました。ここでは、この改正法について紹介します。

大雪により立往生車両が発生した国道192号(平成26年12月5日)

除雪が行われる国道192号

1.改正法の経緯

平成26年2月の大雪では、多数の立往生車両が生じ、それらの車両が支障となって除雪作業が停滞、数日に渡って交通が遮断されました。また、平成25年12月には中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループがとりまとめた「首都直下地震の被害想定と対策について」において、道路そのものの被災、鉄道の運行停止による道路交通への負荷の増大などが相まって、深刻な交通渋滞、放置車両が発生する可能性が示されました。
一方、改正前の制度では、
・道路災害の現場では破損を含む車両の移動が可能であるものの、被災地へアクセスするための、直接被災していない周辺道路については対応できないこと
・長時間放置された車両の移動は可能であるものの、平常時を想定した制度のため車両を破損してまで移動ができず、迅速な対応が図れないこと
といった限界がありました。
このため、災害時により迅速な対応を行うため、平成26年10月14日に、災害時の放置車両対策等を強化する「災害対策基本法の一部を改正する法律案」を閣議決定、同日に国会に提出しました。本法案は衆参両院での審議を経、平成26年11月14日に全会一致をもって可決・成立、同21日に公布されました。

2.改正法の概要

(1)災害時における車両の移動等
・道路管理者は、災害が発生し、緊急通行車両の通行を確保するため必要な場合には、その管理する道路の区間を指定して、緊急通行車両の通行の妨害となっている車両や車両から落下した積載物等の物件(以下「車両等」という。)の所有者等に対し、車両等の道路外への移動、車間を詰めて空いたスペースへの車両等の移動等の措置をとることを命ずることができること 
・次に掲げる場合には、道路管理者は、自ら車両の移動等の措置ができるとともに、当該措置をとるためやむを得ない限度において、車両等を破損することができること
①措置をとるよう命じられた所有者等が措置をとらない場合
②所有者等が不在の場合
③道路の状況等により所有者等に措置をとらせることができないため、道路管理者が命令をしないこととした場合
・道路管理者は、措置をとるためやむを得ない限度において、他人の土地を一時使用し、障害物を処分することができること
・独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構や地方道路公社は、上記道路管理者の権限を代行するとともに、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が当該事務を高速道路株式会社に委託するときには、あらかじめ、会社と協議し、委託する事務や費用負担を定めておくこと

(2)国土交通大臣及び都道府県知事による指示
・被災現場までのルート全体を広域的に俯瞰して、ネットワークで緊急通行車両の通行を確保するため特に必要があるときは、国から都道府県及び市町村に、都道府県から市町村に対し、必要な措置をとるよう指示することができること

(3)都道府県公安委員会の要請
・都道府県公安委員会は、通行禁止等を行うため必要があるときには、道路管理者に対し、道路の区間を指定して必要な措置をとるよう要請することができること

(4)損失補償
・道路管理者、機構又は地方道路公社は、やむを得ない限度において車両等を損失した場合に、その所有者等へ補償しなければならないこと

(5)改正法の施行日
・この法律は、公布の日から施行すること

改正災対法により道路管理者の権限が強化され、立往生車両の迅速な移動が可能に

3.改正法の適用について

改正災対法は、平成26年12月5日に国道192号で初めて適用され、平成27年2月10日現在、44区間で適用実績があります。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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