特集 コラム  「2011 年度防災教育交流フォーラム」基調講演東日本大震災に学ぶ減災のための防災教育

10 月15日、16日に立教大学池袋キャンパス(東京)で開催された「2011年度防災教育交流フォーラム」では、防災教育チャレンジプラン実践団体等による発表のほか、福和伸夫名古屋大学大学院教授による基調講演が行われました。

基調講演を行う福和伸夫名古屋大学大学院教授
(防災教育チャレンジプラン実行委員会事務局 提供)


福和教授からは、防災教育を推進するには、「災害をわがことと受け止める」教育が重要。「過去の歴史から学び、理科や社会をバランスよく取り入れた防災教育に取り組むことは、今後の減災につながる」というお話がありました。被災地から学んだことを、今後に生かしていく取り組みが求められています。
ここでは、福和教授の講演のポイントをご紹介します。

過去の伝承を学ぶ教育が災害を減らす
今回の東日本大震災は未曽有の災害といわれますが、過去の歴史をひもとくと、日本はこれまでもたびたび災害に見舞われています。三陸地方では3つの津波災害(1896年 明治三陸地震、1933年 昭和三陸地震、1960年チリ地震)を通じて、「津波てんでんこ」という防災教訓が伝承されてきました。「ここより下に家を建ててはいけない」という石碑の言い伝えを守って、災害の難をまぬがれた人もいました。
平安時代に起きた貞観地震は『日本三代実録』にも記録されていますが、そこには東日本大震災の被災地と同じ情景が描写されています。また、〈末の松山〉と〈沖の石〉という歌枕で知られる和歌も、津波の恐ろしさを後世に伝えています。「契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 なみこさじとは」という和歌では、末の松山は波が届かない場所にあったと伝えていますが、「わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らぬ 乾く間もなし」では、沖の石は津波に浸かりやすいところにあり、乾く間もなしと伝えています。
このように日本には防災にまつわる伝承がたくさんあります。福和教授は、ここに祖先からのメッセージが残されていると話されています。科学的根拠に基づく理科とともに、過去の歴史に目を向ける社会をバランスよく学ぶことも災害時の備えにつながるのはないでしょうか。災害時の被害を減らすには、被災地で助かった人たちにならい、「先人が残した教訓から学ぶ教育」が必要です。

防災教育は学校を起点に広がっていく
減災を根づかせる教育では「自分の命は自分で守る」という意識とともに、さらには「家族や地域を助けていく」という志を身に付けることも重要です。
命を守るためにはまずは衣・食・住の確保が不可欠。その後の生活の維持には医療、職業、教育が重要ですが、これらを継続させていくためには、学校教育が重要な役割を果たします。保健体育、社会、地学物理、技術課程・図画というのは、それぞれ命を守る教育、理屈を知る教育、社会・地域を知る教育、備える教育ということになります。学校は地域の中心であり、先生方は話を伝えるプロです。子どもたちが学校で受けた防災教育について、日ごろから家族に話すだけでも、学校を起点とした防災の輪が広がっていくことでしょう。
減災行動には、(1)理解する(勉強)(2)納得する(3)わがことと思う(4)決断する(互いに説得し合う)(5)実践する(協力者を得る)という5つのステップがあります。福和教授は、これらのステップを踏まえた防災教育を推進するためにも、学校の先生向けの教育と良い教材の必要性を挙げています。
福和教授は、身近な教材としてプリンと羊羹(ようかん)をゆすって揺れ具合を比べる実験をするだけでも、地盤がもろい地域(プリン)と台地(ようかん)の違いを確かめることができるとお話しされたほか、地震発生前後の物語を擬似体験できるWEB 絵本『災害シナリオ体験アプリescape』やロールプレイングゲームの『震度6 強体験シミュレ—ション』など、内閣府や大学のほか、各方面で防災教育を支援する様々な防災教材がつくられていると紹介されました。

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