Disaster Management News—防災の動き

津波防災の日シンポジウム

11月5日、東京・港区のニューピアホールにて、津波防災の日シンポジウム2011が開催されました。

最初に、語り部・平野啓子さんによる臨場感あふれる津波防災の物語『稲むらの火』の“語り”があり、過去の災害の教訓から学ぶ大切さが伝えられました。
次に、釜石市立釜石東中学校の齋藤 真先生より『学校での防災教育の取組みや発災時の体験についての報告』がありました。齋藤先生は、これまで子供たちに「普段のことを真剣に行おう」と語りかけてきました。「釜石の奇跡」は偶発的に起こったのではなく、子供たちこそが奇跡そのものだったのですと話されました。
そして、片田敏孝群馬大学大学院教授により、『想定外を生き抜く力 大津波から生き抜いた釜石市の児童・生徒の主体的行動に学ぶ』と題した基調講演が行われました。
片田教授は「子どもたちは10年経てば大人になる、さらに10年経てば親になる。そして、次の世代が育っていくことで文化再生の礎ができるのではないか」という思いのもと、釜石で子どもを中心とした防災教育を展開しています。片田教授が行う津波防災教育の中心である『避難3原則』とは、どういうものなのでしょう。

●想定にとらわれない
例えば、明治三陸津波を想定して作られたハザードマップがあります。しかし、過去と同じ大きさの津波がくるとは限りません。そのことを子どもたちに説明すると、浸水想定区域外にある自分たちの学校も危ないかもしれないことに気づきます。相手は自然。人間の想定を超える事態も当然、あり得るのです。

●状況下において最善を尽くす
どんな規模の津波が来るかは、誰にもわかりません。できることは、その日、その時にできる最善を尽くすことだけです。地震の際、校庭で練習していた釜石東中学校のサッカー部の生徒たちは、大きな地割れに気づき、「津波がくるぞー!」と叫んで、すぐに走り出したそうです。そして、小学校に向かって同じように叫び、600人の子どもたちが最初の避難場所へと走りました。

●率先的避難者になる
いざというときには、まず自分が勇気を持って逃げる、ということです。釜石で津波にいちばん詳しいのは中学生たちです。その彼らが必死に避難している姿を見て、近所のおじいちゃんやおばあちゃんたちも避難場所へと走りました。

講演の最後を片田教授は次の言葉で結びました。「僕は、子どもは環境で育つと思っています。子どもたちに対する責任として、『津波警報が出たら逃げる』という文化を大人が実践し、そのなかで子どもを育て、親となり、次の世代を育てる……そういう社会を作ることが、今こそ必要だと思っています」。
さらに、この日の締めくくりには、危機管理教育研究所代表・危機管理アドバイザー国崎信江さんがコーディネーターを務め、林春男京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授や避難所となった福島県「ビッグパレットふくしま」館長の渡邉日出夫さんも参加してパネルディスカッションを展開。地震や津波などの大災害からいかに生き延びるかについて、それぞれの見地からメッセージが伝えられました。

取材・文 松本めぐみ

基調講演中の片田敏孝群馬大学大学院教授

講演の様子
津波防災の日

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内閣府政策統括官(防災担当)

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