内閣府防災情報のページみんなで減災

内閣府ホーム > 内閣府の政策 > 防災情報のページ > 会議・検討会 > 防災白書 > 令和2年版 防災白書 > 令和2年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-1 令和元年8月の前線に伴う大雨災害

令和2年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-1 令和元年8月の前線に伴う大雨災害


第1章 令和元年の災害

第1節 令和元年に発生した主な災害

我が国は、その自然的条件から、各種の災害が発生しやすい特性があり、毎年のように、水害・土砂災害、地震・津波等の自然災害が発生している。平成の時代は、未だ記憶に新しい東日本大震災や熊本地震、平成30年7月豪雨をはじめ、大規模な災害が発生した。令和元年5月1日、元号は令和となり新しい時代が始まった。同年、6月の山形県沖を震源とする地震(附属資料14-1参照)をはじめ、鹿児島県を主な被災地とする6月下旬からの大雨、同年8月の前線に伴う大雨、台風第5号、第10号、第15号、第17号による洪水・土砂災害が連続したほか、特に10月の台風第19号、第21号により広範囲にわたる被害が発生した。

これらの頻発した台風のうち、令和元年9月の「令和元年房総半島台風」(台風第15号)、同年10月の「令和元年東日本台風」(台風第19号)については、顕著な災害をもたらした自然現象として、後世に経験や教訓を伝承することなどを目的に、気象庁によりその名称が定められた。

令和元年に発生した主な災害
令和元年に発生した主な災害

また、水害・土砂災害をもたらす豪雨については、雨の強度や頻度などその降り方に特徴があり(特集第1節1-3参照)、長期的な傾向として、雨の降り方は変化している。

気象庁の観測によると、1日の降水量が200ミリ以上の大雨を観測した日数は、1901年以降の統計期間において有意な増加傾向にあり、その最初の30年と直近の30年とを比較すると、約1.6倍に増加している(全国51の観測地点)。また、全国約1,300の観測地点があるアメダスの観測データによれば、1時間降水量50ミリ以上の短時間強雨の発生頻度は、1976年以降の統計期間において有意な増加傾向にあり、その最初の10年と直近の10年を比較すると、約1.4倍に増加している(全国約1,300の観測地点)。

このように、雨の降り方が変化している背景には、自然変動の影響に加え、地球温暖化の影響もあると考えられている。また、気象庁の予測によると、今後、温室効果ガスの排出が高いレベルで続く場合、1日の降水量が200ミリ以上となる日数や1時間降水量50ミリ以上の短時間強雨の発生頻度は全国平均で今世紀末には20世紀末の2倍以上になると予測されている。

1-1 令和元年8月の前線に伴う大雨災害

(1)概要

令和元年8月26日以降、華中から九州南部を通って日本の南へのびていた前線が、同月27日には対馬海峡付近から東日本に北上し、同月29日にかけて停滞した。この前線に向かって暖かく非常に湿った空気が流れ込んだ影響等で、東シナ海から九州北部地方にかけて発達した雨雲が次々と発生し、「線状降水帯」が形成・維持された。

これにより、九州北部地方を中心に8月26日から同月29日までの総降水量が長崎県平戸市で600ミリを超える大雨となった。

期間降水量分布図(8月26日0時~8月29日24時)
期間降水量分布図(8月26日0時~8月29日24時)

また、福岡県及び佐賀県では、3時間及び6時間降水量が観測史上1位の値を更新する地域があるなど、記録的な大雨となった。

3時間降水量の期間最大値の分布図(8月26日0時~8月29日24時)
3時間降水量の期間最大値の分布図(8月26日0時~8月29日24時)
(2)被害状況

令和元年8月の前線に伴う大雨災害により、河川の氾濫、浸水害、土砂災害等が発生し、死者4名(福岡県1名、佐賀県3名)、重軽傷者2名となった(消防庁情報、令和元年12月10日現在。参照:https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/8gatu27ooame-30.pdf)。

人的被害(令和元年12月10日現在)
人的被害(令和元年12月10日現在)

住家被害については、全壊が95棟、半壊・一部破損が936棟、床上・床下浸水5,656棟であった(消防庁情報、令和元年12月10日現在。参照:https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/8gatu27ooame-30.pdf

住家被害(令和元年12月10日現在)
住家被害(令和元年12月10日現在)

また、この大雨の影響で、停電や断水等のライフラインへの被害や、鉄道の運休等の交通障害が発生し、住民生活や農林漁業にも大きな支障を及ぼした。避難所については、九州北部の多くの市町村において、避難指示(緊急)及び避難勧告等が発令され、ピーク時における避難者数が5,400人超に達した(消防庁情報、令和元年8月28日現在。)

このほか、この大雨により、鉄工所(佐賀県大町町)から焼き入れ油が流出し、六角川流域に広く拡散するなど、住家等に被害が発生した。また、有明海等において、船舶の安全な航行に支障となる大量の漂流物が確認された。

令和元年8月の前線に伴う大雨災害被害状況
佐賀県(大町町)の浸水被害(焼き入れ油の流出)(国土交通省提供)
佐賀県(大町町)の浸水被害(焼き入れ油の流出)(国土交通省提供)
佐賀県(武雄市)の浸水被害(内閣府資料)
佐賀県(武雄市)の浸水被害(内閣府資料)
佐賀県(武雄市)の住家被害(内閣府資料)
佐賀県(武雄市)の住家被害(内閣府資料)
佐賀県(大町町)の農業被害(焼き入れ油の流出)(内閣府資料)
佐賀県(大町町)の農業被害(焼き入れ油の流出)(内閣府資料)
(3)政府等の対応

政府は、令和元年8月28日、令和元年8月の前線に伴う大雨に関する官邸対策室を設置し、発災直後から安倍内閣総理大臣による指示の下、関係閣僚会議を開催したほか、自治体の災害応急対策を支援する等、被災自治体と連携しつつ災害応急対策に取り組んだ。同年8月31日には、山本内閣府特命担当大臣(防災)(当時)を団長とする政府調査団を佐賀県に派遣し、9月24日には、武田内閣府特命担当大臣(防災)による佐賀県武雄市、大町町の現地視察を実施した。

被災地では、自衛隊等による生活支援や鉄工所からの油流出への対応(オイルフェンスの設置、油吸着マットの設置回収等)を実施したほか、国土交通省による六角川での浸水被害対応(排水ポンプ車による排水作業等)や有明海での油流出への対応(海洋環境整備船等による航走撹拌等)、漂流物回収を実施した。

また、激甚災害の指定については、令和元年8月13日から9月24日までの間の暴風雨及び豪雨による災害(台風第10号、第13号、第15号及び第17号の暴風雨を含む。)として、令和元年9月6日及び20日に指定見込みの公表を行い、10月11日に指定政令の閣議決定を行った(附属資料14-2「令和元年8月の前線に伴う大雨」参照)。

現地視察を行う山本内閣府特命担当大臣(防災)(当時)
現地視察を行う山本内閣府特命担当大臣(防災)(当時)
現地視察を行う武田内閣府特命担当大臣(防災)
現地視察を行う武田内閣府特命担当大臣(防災)

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.