特集 激甚化・頻発化する豪雨災害
近年、世界中で気象災害が頻発している。令和元年(2019年)も、各地で豪雨災害が発生し、大きな被害をもたらした。同年7月から10月には、インドを中心とした大雨により、南アジアでは死者が合計で2,300人以上となるなど甚大な被害が発生した。インドの同年8月及び9月の総降水量は1983年以来最も多かったなど、記録的な大雨となった。我が国でも、平成29年7月九州北部豪雨、平成30年7月豪雨をはじめ、近年の豪雨災害により大きな被害がもたらされており、令和元年も、令和元年東日本台風による災害をはじめとする豪雨災害により、甚大な被害が発生した。
また、令和元年の年平均気温は、世界の陸上の広い範囲で平年より高く、東アジア北東部含め世界各地で異常高温が発生した。我が国でも全国的に気温の高い状態が続き、1898年の統計開始以来、日本の年平均気温は最も高かった。一般に、異常気象は過去に経験した現象から大きく外れた現象であり、人が一生の間にまれにしか経験しないものであるが、今後、地球温暖化等の気候変動により、世界的に異常気象が増加する可能性も指摘されている。
このため、令和2年度版防災白書の「特集」は、激甚化・頻発化する豪雨災害をテーマとし、令和元年の災害のうち、特に甚大な被害をもたらした、令和元年8月の前線に伴う大雨災害、令和元年房総半島台風による災害及び令和元年東日本台風による災害について、その被害状況、政府対応等を振り返り(第1章第1節)、これらの災害を踏まえた対策として、災害救助法の対象拡大、被災者対策支援パッケージについて概説する(第1章第2節)。この上で、令和元年房総半島台風・令和元年東日本台風等にかかる検証と対策(第2章第1節)、住民の避難行動対策(第2章第2節)について、政府の検討状況と今後の取組の方向性について概説する。また、気候変動と防災の連携した取組について概説する(第3章)。