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令和2年版 防災白書|特集 第1章 第1節 1-2 令和元年房総半島台風による災害


1-2 令和元年房総半島台風による災害

(1)概要

令和元年房総半島台風(台風第15号)は、令和元年9月7日から8日にかけて小笠原近海から伊豆諸島付近を北上し、同月9日3時前に三浦半島付近を通過して東京湾を進み、同日5時前に強い勢力で千葉市付近に上陸した。その後、同日朝には茨城県沖に抜け、日本の東海上を北東に進んだ。台風の接近・通過に伴い、伊豆諸島や関東地方南部を中心に猛烈な風、猛烈な雨となった。

特に、風については、伊豆諸島と関東地方南部の6地点で最大風速30メートル以上、伊豆諸島と関東地方南部の3地点で最大瞬間風速50メートル以上となるなど、猛烈な風を観測した。また、千葉市では、最大風速35.9メートル、最大瞬間風速57.5メートル(観測史上1位)となるなど、関東地方を中心に19地点で観測史上1位の最大風速や最大瞬間風速を観測し、記録的な暴風となった。

主な瞬間風速の上位5地点(9月7日0時~9月9日24時)
主な瞬間風速の上位5地点(9月7日0時~9月9日24時)
期間最大風速(9月7日0時~9月9日24時)
期間最大風速(9月7日0時~9月9日24時)
(2)被害状況

この令和元年房総半島台風による大雨と暴風により、死者3名(千葉県2名、東京都1名)、重傷者13名、軽傷者137名となった(消防庁情報、令和元年12月23日現在。参照:https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/taihuu15gou40.pdf)。

人的被害(令和元年12月23日現在)
人的被害(令和元年12月23日現在)

住家被害については、全壊が391棟、半壊・一部損壊が76,483棟、床上・床下浸水が230棟であった(消防庁情報、令和元年12月23日現在。参照:https://www.fdma.go.jp/disaster/info/items/taihuu15gou40.pdf)。

住家被害(令和元年12月23日現在)
住家被害(令和元年12月23日現在)

この台風の影響で、記録的な暴風により、送電線の鉄塔や電柱の倒壊、倒木や飛散物による配電設備の故障等が発生し、首都圏をはじめとして最大約93万4,900戸の大規模な停電が発生した。電力に関しては、現場の被害状況の確認や倒木の処理に時間を要したこと等により、復旧作業が長期化するなど、大きな被害が生じた。この長期間にわたる停電の影響により、通信障害が発生したほか、多くの市町村で断水等のライフラインへの被害や、鉄道の運休等の交通障害が発生し、住民生活に大きな支障を及ぼした。また、想定を超える高波により、護岸が損壊し、背後に立地する企業の浸水被害が発生した。

ライフライン被害
ライフライン被害

また、災害救助法の適用団体も2都県42市町村に上った。避難所については、千葉県内の市町村を中心に、多くの市町村において避難指示(緊急)及び避難勧告等が発令され、ピーク時における避難者数は2,200人超に達した(消防庁情報、令和元年9月9日現在。)

[コラム]
鉄道の計画運休

令和元年房総半島台風は、令和元年9月9日(月)明け方に千葉市付近に上陸し、風の強い時間帯が通勤時間と重なったなか、多くの鉄道事業者は、同月8日より計画運休を実施した。千葉県成田市の成田国際空港では、空港機能に大きな支障がなく、同月9日は、滑走路が正常に運用されていた一方、鉄道の運休や道路の通行止めにより、都心等と空港を結ぶ交通アクセスが途絶していたことから、同月9日夜には約1万3,000人が同空港内に滞留した。

鉄道の計画運休については、平成30年9月の台風第21号・第24号を受け、同年10月、国土交通省は「鉄道の計画運休に関する検討会議」を開催し、利用者の安全確保等の観点から計画運休は必要との考え等を示す中間取りまとめを公表し、令和元年7月には利用者等が適切な行動を選択できるよう具体的な情報を適時提供すること等を追記する「鉄道の計画運休の実施についての取りまとめ」を公表した。このうえで、令和元年房総半島台風で実施された計画運休を踏まえ、令和元年東日本台風の上陸前の同年10月11日、国土交通省は本取りまとめを更新し、空港アクセス路線を有する鉄道事業者は空港と連携して情報提供等を適切に実施すること、運転再開に当たっては、利用者に対しきめ細かく混乱が発生しないよう工夫して情報提供を行うこと、テレワークや時差出勤など輸送需要の抑制に係る社会的理解の醸成に努めること等について追記を行い、同取りまとめを踏まえた対応について、令和元年東日本台風の計画運休で実施するよう各鉄道事業者等に周知した。このようななか、令和元年東日本台風の際には、多くの鉄道事業者により計画運休が実施されたほか、成田国際空港では航空機の着陸制限等の対策により空港滞留者の抑制が図られるなど、令和元年房総半島台風での教訓を踏まえた対応が行われた。

また、成田国際空港株式会社は、災害発生時の事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を改訂し、鉄道事業者等との調整等を行う総合対策本部を早期に設置することを新たに盛り込むなどの対応を行った。他空港のBCPについても、同様の内容が盛り込まれる取組がなされている。

[コラム<2>]
横浜港の被害による対応

令和元年房総半島台風は、横浜港を中心に、想定を超える高波による護岸の損壊や背後地の浸水、暴風で走錨した船舶の橋梁への衝突及びコンテナの飛散等の被害をもたらした。こうした従来の想定を超える高波・高潮・暴風による被害が近年相次いでおり、また、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が同年9月に「海洋・雪氷圏特別報告書」を公表したことを踏まえ、国土交通省は「港湾等に来襲する想定を超えた高潮・高波・暴風対策検討委員会」を同年10月に設置した。同委員会において、主要な施設の耐波性能照査の実施や脆弱箇所を把握した上での直前対策等を考慮した港湾BCP等の策定など、ソフト・ハード一体となった総合的な防災・減災対策について検討を進め、令和2年5月に最終取りまとめを公表した。

横浜市金沢地区 護岸の被災状況
横浜市金沢地区 護岸の被災状況
港湾等に来襲する想定を超えた高潮・高波・暴風対策検討委員会
港湾等に来襲する想定を超えた高潮・高波・暴風対策検討委員会
令和元年房総半島台風 被害状況
千葉県(富津市)住家被害(内閣府資料)
千葉県(富津市)住家被害(内閣府資料)
千葉県(香取市)倒木被害(内閣府資料)
千葉県(香取市)倒木被害(内閣府資料)
千葉県(鋸南町)住家被害(内閣府資料)
千葉県(鋸南町)住家被害(内閣府資料)
東京都(大島町)住家被害(内閣府資料)
東京都(大島町)住家被害(内閣府資料)
(3)政府等の対応

政府は、台風が上陸する前の令和元年9月6日、「関係省庁災害警戒会議」を開催し、政府としての警戒態勢を確保した上で、同月8日には気象庁が臨時の記者会見を実施し、命を守るための行動を強く呼びかけた。同月9日以降、国から千葉県庁及び市町村に連絡員を派遣し連携体制を整えたほか、同月10日に山本内閣府特命担当大臣(防災)(当時)出席のもと第1回目の「関係省庁災害対策会議」を開催した(10月11日まで同会議を計16回開催)。同月、武田内閣府特命担当大臣(防災)により、千葉県及び東京都(12日:千葉県庁、香取市、多古町、15日:東京都大島、新島、16日:千葉県館山市、鋸南町、君津市)の現地視察を実施し、今井内閣府大臣政務官により、千葉県(19日:千葉県庁、君津市、富津市、27日:館山市、袖ケ浦市)の現地視察を実施した。

また、停電や断水等による多くの避難者に対し、9月17日に約13.2億円の予備費の使用を閣議決定し、生活に必要となる物資を調達・発送し、被災された方々の支援(プッシュ型支援)を行った。さらに、自衛隊の各部隊による給水支援・入浴支援等をはじめ、海上保安庁では巡視船による入浴支援・給水支援や給電支援を実施し、観光庁では千葉県の宿泊団体に対して入浴支援や炊き出し等の支援を協力要請するなど、政府一丸となった支援を実施した。

激甚災害の指定については、令和元年8月13日から9月24日までの間の暴風雨及び豪雨による災害(台風第10号、第13号、第15号及び第17号の暴風雨を含む。)として、令和元年9月20日に指定見込みの公表を行い、10月11日に指定政令の閣議決定を行った(附属資料14-3「令和元年房総半島台風」参照)。また、今回の台風により、多くの家屋で暴風による屋根の被害や直後の強風を伴う降雨による屋内への浸水被害が生じたなか、被災地では消防機関や自衛隊によるブルーシート設置支援(特集第1節参照)が行われたほか、災害救助法による住宅の応急修理制度の対象拡充等の対応を行った(特集第2節参照)。

このほか、平成30年3月から運用が開始された「被災市区町村応援職員確保システム」に基づく被災自治体への応援職員の派遣が行われ、被災9市町の災害マネジメントを支援するため、9都県市から延べ約310名の総括支援チームを派遣し、災害対策本部の運営支援等を行った。また、被災9市町への対口支援団体を決定し、16都県市から延べ約3,500名の応援職員を派遣し、罹災証明に係る家屋調査や避難所運営等の支援を行った。

現地視察を行う武田内閣府特命担当大臣(防災)
現地視察を行う武田内閣府特命担当大臣(防災)
現地視察を行う今井内閣府大臣政務官
現地視察を行う今井内閣府大臣政務官

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