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令和元年版 防災白書|第1部 第1章 第1節 1-5 住民主体の取組(地区防災計画の推進)


1-5 住民主体の取組(地区防災計画の推進)

「地区防災計画制度」は、平成26年(2014年)の災害対策基本法の改正により、地区居住者等(居住する住民と当該地区に事業所を有する事業者を含む)が市町村と連携しながら、自助・共助による自発的な防災活動を推進し、地域の防災力を高めるために創設された制度である。これによって、地区居住者等が地区防災計画(素案)を作成し、市町村地域防災計画に地区防災計画を定めるよう、市町村防災会議に提案できることとなった。

内閣府調査によると、平成30年4月1日現在で3,206地区で地区防災計画の策定に向けた活動が行われており、248地区では地区防災計画として地域防災計画に反映されている。制度創設から5年が経過し、地区防災計画がますます浸透してくることが期待される。

(1)地区防災計画の動向

内閣府において、地域防災計画に反映された地区防災計画を166事例分析したところ、以下のような特徴が見受けられた。

<1>計画策定に向けた活動のきっかけは、行政(市区町村)側の働きかけによる場合が全体の69%であった。地区防災計画が本来、住民主体のボトムアップであることを確保しつつ、住民等が地区防災計画の策定に向けた取組を活性化するためには、行政からの働きかけが的確かつ適切であることが重要である。

<2>リスクを理解するために、住民が主体になって、地域のなかで発生する災害や危険な箇所を調査したり、地域の社会的な特性(高齢化率、昼夜間人口等)の調査を行っている取組が見られた。例えば、過去に当該地区で発生した災害を住民が検証している事例(例:岩手県大槌町安渡(おおづちちょうあんど)地区、福島県いわき市平城山(たいらしろやま)地区)、行政が提供した防災マップを地区の詳細な地図に重ねて表示し、危険な場所を認識した事例(例:東京都世田谷区等々力(とどろき)地区)、まち歩きを通じて危険な場所や課題をマップに整理した事例(例:東京都足立区千住元町地区)、地域の成り立ち、歴史、自然環境、社会環境等を分析した事例(例:静岡県伊豆市修善寺ニュータウン)等がある。

震度分布・液状化危険度分布
震度分布・液状化危険度分布

<3>計画内容としては、平常時、発災直後の初動期、避難(避難行動、避難所開設)、避難所生活等の時期別に、地区が必要と考える事項が幅広く書かれている(図表1-5-1)。

図表1-5-1 地区防災計画の計画事項例
図表1-5-1 地区防災計画の計画事項例

<4>町会・自治会、自主防災組織、その他の団体が「計画主体」として表示されている例が多い。なかでも、自治会・町内会や自主防災組織のほか、高齢者の見守りボランティア団体等と連携した事例(例:福島県いわき市内郷高坂(うちごうたかさか)地区)、災害時には自主防災会だけでなく地区が一丸となって対応する必要があるとの認識により、PTA、子ども会、民生・児童委員、地域安全関係団体との連携を目指した事例(例:静岡県富士市富士駅南地区)などがある。また、地域のなかにある企業が参画する事例、マンション単位、団地単位で地区防災計画の策定に向けた活動を始めた事例(例:UR都市再生機構の尾山台団地[埼玉県上尾市]、米本団地[千葉県八千代市])も見受けられる。

<5>計画作成プロセスでは、住民によるワークショップ、防災訓練、講習会、アンケートなどを実施し、広く住民の意識を高め、地域の課題を把握しようとする事例がある。地区防災計画の作成プロセスにおいて、地域の多様な団体(学校関係、福祉関連施設、まちづくりNPO等)との交流を行い、地域で生活・活動する様々な主体が被災時に課題となりえる事項や支援可能な事項などを共有していくことは、作成された計画の実効性を高めるためにも重要である。計画の完成を性急に求めず、時間をかけてでも丁寧な作成プロセスをたどることが必要である。

<6>計画策定後も、計画を定期的にモニタリングし、必要に応じて改定することが望ましいところ、63%の地区がそのような活動を定期的に、13%の地区が定期的ではないが、そのような活動を行っていることが分かった。

地区防災計画のモニタリング
地区防災計画のモニタリング

また、より多くの住民に地区防災計画を周知するために、集会やパネル展示、地区でのイベントに防災企画を行うなどの工夫を行う事例(例:愛媛県大洲市三善(おおずしみよし)地区)もあった。

(2)内閣府の取組

<1>地区防災計画フォーラムの開催

内閣府は、地区防災計画の事例や経験を共有することにより、地区防災計画の策定を促進するため、「地区防災計画フォーラム2019~地区防への道はひとつではない~」を平成31年3月16日に大阪市にて開催した。本フォーラムでは、山本内閣府特命担当大臣(防災)出席のもと、平成30年度に被災した大阪市、大洲市三善地区において地区防災計画の策定が功を奏した事例、岡山県倉敷市が被災の経験を生かして地区防災計画を策定していく意気込み等、また、UR都市再生機構、オフィスビル、防災士が地区防災計画に取り組む事例等が紹介された。

冒頭挨拶を行う山本内閣府特命担当大臣(防災)
冒頭挨拶を行う山本内閣府特命担当大臣(防災)
地区防災計画フォーラムの様子
地区防災計画フォーラムの様子

<2>地区防災計画に取り組む自治体職員ネットワーク「地区防’z(ちくぼうず)」の結成

上記フォーラムの閉会時に、地区防災計画に取り組む自治体職員が、より日常的に地区防災計画の作成について情報交換や意見交換を行い、自治体職員間での経験共有を円滑に行うための自治体職員ネットワーク「地区防’z」が正式に旗揚げされた。地区防’zには平成31年3月末現在で253名が参加しており、平成31年度以降、実質的な意見交換を進めることが予定されている。

フォーラムに参加した自治体職員(地区坊’zのメンバー)
フォーラムに参加した自治体職員(地区坊’zのメンバー)

<3>地区防災計画ライブラリの構築

内閣府は、平成31年4月より、地区防災計画の内容(対象とした課題、対策、取組主体等のテーマ)別にインデックスをつけ、内閣府ホームページ上から地域防災計画に反映された地区防災計画の本文を閲覧できるようにした。地区防災計画に取り組む方々に具体的にどのような計画が全国で策定されているのか検索を容易にすることで、策定に向けた具体的なイメージを持っていただくことを目指している。

地区防災計画ライブラリ
地区防災計画ライブラリ

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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