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平成30年版 防災白書|第1部 第1章 第3節 3-1 南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応について


第3節 発生が危惧される災害への対応

3-1 南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応について

昭和53年に制定された「大規模地震対策特別措置法」(以下、「大震法」という。)では、地震予知情報を受けて警戒宣言が発令された場合に、国及び地震防災対策強化地域内の地方公共団体及び関係事業者等が、それぞれ事前に定めた計画に基づいて緊急的な対応を的確に実施することで被害を軽減すること等が主に定められており、法律制定以来東海地震のみが対象となっている。

しかし、平成25年に中央防災会議の下に設置された「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査部会」(参照:https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/yosoku/index.html)で、現在の科学的知見からは確度が高い地震の予測は困難との報告がなされた。その一方で、南海トラフ沿いにおける観測網の充実により地震に関する様々な異常な現象を捉えることも可能になってきた。また、南海トラフ全体についても、昭和東南海地震・昭和南海地震から70年以上が経過しており、大規模地震の切迫性が高まってきている。

こうしたことを背景に、内閣府は平成28年6月に中央防災会議防災対策実行会議の下に、「南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ」を設置し、同ワーキンググループの下に設置された「南海トラフ沿いの大規模地震の予測可能性に関する調査部会」において最新の科学的知見に基づく大規模地震の予測可能性について改めて検討が行われるとともに、同ワーキンググループでは、この調査部会での報告を踏まえ、現在の地震学の知見を前提とした防災対応の在り方について検討が行われ、その基本的な方向性が平成29年9月に報告書としてとりまとめられた。

(参照:https://www.bousai.go.jp/jishin/nankai/taio_wg/taio_wg.html

同報告書では、大震法に基づく現行の地震防災応急対策では、2、3日以内に東海地震が発生するおそれがある旨の地震予知情報を基に警戒宣言が発せられることを前提とし、地震発生前の避難や各種規制措置等を講ずることとされているが、現在の科学的知見から得られた大規模地震の予測可能性の現状を踏まえると、大震法に基づく現行の地震防災応急対策は改める必要があるとされた。

その一方で、現在の科学的知見を防災対応に活かしていくという視点は引き続き重要であるとされた。そのため、南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合に、どのような防災対応を行うことが適切か、地方公共団体や企業等と合意形成を行いつつ検討していくことが必要であるとされ、今後の検討を進める際の参考となるように、津波避難の場合の考え方の例が示された(図表3-1-1)。

この考え方の例では、地震発生の可能性の高さと住民が受忍できる程度を考慮して防災対応を実施する期間を設定し、その防災対応の内容は津波到達時間等の地域の脆弱性に応じて設定することが示されている。また、その新たな防災対応が決まるまでの間に南海トラフで異常な現象が観測された場合に備え、国・地方公共団体は当面の暫定的な防災体制を定めておく必要があると指摘された。

同報告書を受け、内閣府は、静岡県、高知県、中部経済界と協力し、南海トラフで異常な現象が発生した場合にどのような新たな防災対応が考えられるか、その防災対応を実施した場合にどのような課題があるのか等について、地域の実情を踏まえながら検討を進めることとした。具体的には、静岡県静岡市、沼津市、高知県室戸市、黒潮町において住民の津波避難等についての検討や、平成29年11月に新たに設置した「南海トラフの地震観測に基づく新たな防災対応中部検討会」において企業の防災対応についての検討を進めている。

さらに、これら地域での検討を踏まえ、南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合の防災対応の在り方や、防災対応を実行するに当たっての社会的な仕組み等について検討するため、平成30年3月に中央防災会議防災対策実行会議の下に、「南海トラフ沿いの異常な現象への防災対応検討ワーキンググループ」を設置した。

また、南海トラフ地震に対する新たな防災対応が定められるまでの当面の間、南海トラフ沿いで異常な現象が発生した場合や地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価した場合等に、気象庁は「南海トラフ地震に関連する情報」を発表することとし(図表3-1-2)、南海トラフ地震発生の可能性が相対的に高まった旨の同情報が発表された際に、内閣府は「関係省庁災害警戒会議」を開催し、南海トラフ地震による被害が想定される地域の住民に対して日頃からの地震への備えの再確認を促すことを目的として、今後の備えについて呼びかけを行い、関係省庁は、情報収集・連絡体制の確認、所管する施設等がある場合には必要に応じこれらの点検、大規模地震発生後の災害応急対策の確認を行うなどとした政府の対応が定められた(平成29年9月26日中央防災会議幹事会決定、平成29年11月1日より運用)。

図表3-1-1 短期的な地震発生の可能性に基づいた防災対応の基本的な考え方(住民の津波避難の例)
図表3-1-1 短期的な地震発生の可能性に基づいた防災対応の基本的な考え方(住民の津波避難の例)
(参考)南海トラフ沿いで発生する典型的な異常な現象のケース
(参考)南海トラフ沿いで発生する典型的な異常な現象のケース
図表3-1-2 気象庁が発表する南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件
図表3-1-2 気象庁が発表する南海トラフ地震に関連する情報の種類と発表条件

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