2-4 指定緊急避難場所と指定避難所の確保
「指定緊急避難場所」は、津波、洪水等による危険が切迫した状況において、住民等の生命の安全の確保を目的として住民等が緊急に避難する施設又は場所を位置付けるものであり、「指定避難所」は、避難した住民等を災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させ、または災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させることを目的とした施設となっている。
東日本大震災時においては、避難場所と避難所が必ずしも明確に区別されておらず、そのことが被害拡大の一因ともなった。そのため、内閣府は平成25年に災害対策基本法を改正し、市町村長は指定緊急避難場所及び指定避難所を区別してあらかじめ指定し、その内容を住民に周知(公示)しなければならないこととした。平成28年4月1日現在の指定緊急避難場所の指定状況は図表1-2-4のとおりとなっている。
内閣府は、消防庁とともに、地方公共団体に対して指定緊急避難場所の速やかな指定等を促しているところである。なお、災害の種類ごとに指定緊急避難場所を指定することとなっているため、避難者が明確に判断できるように制定した「災害種別避難誘導標識システム(JIS Z 9098)(平成28年3月)」による案内板等の整備について、早急に着手するように全国の地方公共団体に呼びかけている。
また、平成28年4月1日現在の災害対策基本法第49条の7に基づく指定避難所の指定状況は図表1-2-5のとおりであるが、平成28年10月1日現在で全国の市町村を対象に行った内閣府の調査では、協定を含めた避難所数は92,561施設であり、協定を含めた福祉避難所数は20,185施設であった。
近年の災害における状況等を受け、避難所の生活環境の確保に関する様々な問題や、避難所のトイレの改善に関する課題などが指摘された。災害時に避難所において不自由な生活を強いられる状況下においても、生活の質を向上させ、良好な生活環境の確保を図ることが重要と考えられる。このため、内閣府では、市町村における避難所や福祉避難所の指定の推進、避難所のトイレの改善、要配慮者への支援体制や相談対応の整備等に係る課題について幅広く検討し、必要な対策を講じていくため、平成27年7月以降「避難所の確保と質の向上に関する検討会」を開催し、検討を重ねている。
本検討会では、避難所の確保や質の向上全般について審議が進められるとともに、避難所一般における生活環境の整備等を検討する「質の向上ワーキンググループ」と、福祉避難所の確保推進、災害時の円滑な運営等を検討する「福祉避難所ワーキンググループ」を開催し、これまでも各ワーキンググループにおいて、東日本大震災や広島市での土砂災害等今般の災害等も踏まえた検討が行われてきた。
平成28年度は、本検討会での議論を踏まえ、熊本地震の本震の翌日に「避難所における良好な生活環境の確保に関する取組指針(平成25年8月内閣府策定・公表)」の一部改訂を行い、同時に、本取組指針を受けるものとして、「避難所運営ガイドライン」、「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」、「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」の3つのガイドラインを公表した(図表1-2-6)。災害時に避難所を適切に運営することができるよう、地方公共団体においては、地域で想定される災害に応じて事前に避難所の指定を行うなどの準備が必要である。
平成25年の災害対策基本法の改正により「指定緊急避難場所」の指定制度が導入されてから、国土地理院、内閣府及び消防庁は、都道府県、市町村と協力し、ウェブ地図上に表示可能な指定緊急避難場所データの整備を進めてきた。
これを受けて、平成29年2月22日より、国土地理院へ提供された「指定緊急避難場所」の情報について、国土地理院管理のウェブ上の地図である「地理院地図」において公開を開始した。
本データはパソコンやスマートフォンから簡単に利用できるものとなっており、国土地理院のホームページ http://www.gsi.go.jp/から、指定緊急避難場所の位置や名称、対応している災害種別等について、地図や空中写真、その他様々な情報に重ね合わせて確認ができるものである。このホームページを利用することで、住民一人ひとりが、災害が発生した場合に、自分が避難すべき指定緊急避難場所を容易に確認することが可能となっている。