平成26年版 防災白書|第1部 第2章 第1節 (3)復興のステージに応じた取組


(3)復興のステージに応じた取組

<1> 住宅再建・復興まちづくりの加速化

住宅再建・復興まちづくりの加速化に向け、復興大臣の下にタスクフォースを設置し、「住まいの復興工程表」の策定、用地取得の迅速化、人員不足・資材不足対策、商業集積・商店街の再生加速化策、民間住宅の早期自立再建支援等、5度にわたる加速化措置を打ち出した。

こうした措置を講じた結果、復興は、がれき処理や住宅再建・まちづくりの計画策定の段階から、工事の段階へと着実にステップアップしている。高台移転については、全地区で法定手続きを完了し、約9割の地区で着工するとともに、災害公営住宅についても約7割で用地確保済である。

併せて、被災者の方々が住まいの再建についての見通しを持てるよう、すべての市町村の地区ごとに、スケジュールを明示して、住宅・宅地の整備に関する工事の工程や、住宅・宅地の数を示した「住まいの復興工程表」が策定され、その内容については、四半期ごとに更新されている。

今後とも、事業進展や社会状況の変化に伴って生じる新たな課題について、タスクフォース等の活用により、機先を制する形で柔軟かつ迅速に対応していく。

<2> 産業・なりわいと暮らしの再生

i )産業・なりわい

産業やなりわいの復興については、企業立地に係る補助を津波被災地域へ拡充したほか、グループ補助金の拡充、復興交付金の運用のさらなる柔軟化等の対応を行っている。

産業の復興については、早急な事業再開を支援するため、仮設工場・仮設店舗の整備を進め、569箇所で完成している。また、中小企業等グループ補助金等により、被災地域の産業復興を総合的に支援を行ってきた。その結果、中小企業等グループ補助金の交付先企業の約4割が、震災直前の水準以上まで売り上げが回復している。今後、復興交付金による産業復興の基盤の整備とあわせ、産業の本格復旧・復興に向け、商業集積や商店街の再生、新産業創造の取組等を推進する。

農業の復興については、津波被災農地の営農再開に向けて農地復旧や除塩等を進め、平成26年度作付期までに全体の約7割で営農再開が可能になる見通しとなっている。今後とも、農地復旧と一体的に農地の大区画化や利用集積を進めるとともに、新技術を積極的に活用するなど、全国のモデルとなるような取組を推進する。

水産業の復興については、岩手県、宮城県、福島県において、主要な魚市場の水揚数量は、被災前に比べて約7割まで回復し、水産加工施設は、業務再開希望者のうち約8割が業務を再開している。しかしながら、水産加工業においては、震災により失われた販路の回復等の問題もあり、売り上げの回復が遅れている。引き続き、漁港の本格復旧を実施するとともに、高度衛生管理に対応した荷捌き所の整備や、水産加工施設の復旧・復興、販路の回復等の取組を一体的に推進する。

観光業の復興については、太平洋沿岸エリアへの送客強化や観光地域づくりの基盤整備、訪日外国人向けに海外での観光イベントの開催、海外メディアや旅行会社の招請等の取組を実施している。観光客中心の宿泊施設はまだ厳しい状況が続いているが、宿泊者数全体としては回復傾向にある。観光需要の厳しい東北地域の状況を踏まえ、引き続き取組を推進する。

また、平成26年4月18日に復興推進委員会で取りまとめられた「提言」では、人口減少、高齢化、産業の空洞化等の課題を抱える被災地で、持続可能な地域経済を実現するためには、産業の復興をこれまでよりも加速していく必要があり、特に、被災地外の需要をもたらす、ものづくりや水産加工業、農業・漁業、観光業といった基幹産業と、小売商業や生活関連サービス業といった地域の暮らしを支え、コミュニティを維持する産業について、バランスのとれた発展とその好循環の構築へ向けた取組が重要であると提言された。こうした提言を踏まえ、同年4月25日に「産業復興推進に関するタスクフォース」を設置し、関係府省庁の産業復興の現状と課題を把握し、その上で産業復興のための施策の体系化を行い、被災地域の自治体、産業界等に浸透させ、産業復興を強力に推進していくこととしている。

ii)暮らしの再生

避難の長期化に伴う健康面を中心とした影響や本格的な住宅再建が始まり、新生活定着までの様々な不自由に対しての支援については、省庁横断的なタスクフォースを設置し、保健師による健康支援、子どもに対する心のケア、医療・介護人材の確保策等の施策パッケージを取りまとめて対応を行っている。避難の長期化など現場の状況や課題を踏まえつつ、引き続き施策を推進する。

<3> 福島の復興・再生の加速化

原子力災害により深刻かつ多大な被害を受けた福島の復興・再生については、除染や、一時帰宅支援、帰還に向けた環境整備等の帰還促進の取組、復興公営住宅の整備等の長期避難者への支援等を実施している。避難指示区域の見直しについては、平成25年8月に完了した。また、平成25年12月20日に復興加速化のための指針である「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」を閣議決定した。今後、準備が整った区域から地元の方々との協議を踏まえ、避難指示を解除していく段階となっている。引き続き、早期帰還から長期避難者支援まで一括して、きめ細かな対応を強化するため創設した福島再生加速化交付金等を最大限に活用しながら、帰還する住民の被ばく低減、健康不安対策等の早期帰還支援や、復興拠点の整備等の新生活支援の両面から施策を推進する。

また、福島県に基金を造成し、営農再開を目的として行う一連の取組を、農地の除染や住民帰還の進捗に応じて切れ目なく支援することとしている。

さらに、「早期帰還・定住プラン」や、「原子力災害による風評被害を含む影響への対策パッケージ」を取りまとめている。

また、福島の方々の帰還・定住を支援するために、子どもの運動機会の確保の観点から、遊具の更新や運動施設の整備を進めるとともに施設の整備に併せて、子どもの興味・関心・創造性を引き出すプレイリーダーの養成などのソフト事業への支援を進めている。


所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.