6 課題及び今後への期待



6 課題及び今後への期待

自然災害に見舞われやすい我が国において,災害から生命・財産を守るためには,国や地方公共団体が行う「公助」や,国民一人ひとりの自覚に根ざした「自助」の精神が重要なことはいうまでもない。とりわけ,国民一人ひとりが防災意識をしっかり持ち,家具や備品の固定,食料や水の備蓄といった家庭や職場における身近な防災対策を着実に実施していくことは,災害時の被害を軽減するために不可欠である。

その上で,地域コミュニティ等の防災力の向上という視点に着目すると,少子高齢化や過疎化などにより地域社会の構造が変化を見せる中,地域の防災活動の担い手として,行政区域にとらわれない様々な経済活動や社会活動をきっかけとした新しいつながりにより,ボランティア,企業,学校等による防災に関する活動が広がりを見せてきている。今回の意識調査においても,これらの多様な主体による防災活動への期待の高さが確認されたところである。しかしながら,各地域の活動事例を調査し,また,国民やボランティア団体への意識調査を行った結果,これらの活動について,いくつかの課題が見えてきたことも事実である。

まず,現在,こうした防災活動に携わる様々な主体は独自に活動を進めているが,各主体間の横の連携や地元自治体,住民との連携が十分とは言えないところが見受けられるのも事実である。防災ボランティアセンターが普及してきたこともあり,ボランティア間相互の調整は進んできているが,一方で,ボランティア団体へのアンケート調査結果によると,行政とボランティアセンターとの間で情報共有が十分に行われていないであるとか,地域住民がボランティア等の活動に十分に理解を示してくれていないといった回答が多く見られたところである。東京の新宿駅周辺地区のように,行政,企業,学校などが連携して防災訓練を行うなどの取組を行っているところも既にあるが,各主体が連携をとり,行政,住民が一体となって防災活動を行い,地域防災力を高めていくことが期待される。

次に,こうした防災活動が一過性で終わってしまわないよう,息の長い継続的な活動をいかに続けていくかという課題がある。大規模な災害の直後は,国民の防災意識も高まり,個人レベルでも例えば転倒防止のため家具固定をする人も多いが,「喉もと過ぎれば熱さを忘れる」という格言どおり,しばらく災害が起こらないと,次第に意識は下がり行動も続かなくなってしまうという声もある( 図表3参照 )。「災害は忘れた頃にやってくる」ことを常に認識し,いつ襲ってくるかわからない災害に対し,日頃から緊張感を持って,継続的に活動を続けていくことが重要であり,子どものころからの防災に関する教育の充実や,ゲーム感覚で楽しみながら防災活動を行うなど,継続的な活動を可能とするための工夫が期待される。

さらに,こうした防災活動が,形式的なもので終わらず実践的で役立つものとなるよう工夫していくことも課題の一つである。防災訓練一つをとっても,マニュアルに沿って決められたことを淡々とこなすのではなく,各主体のこれまでの活動の経験,教訓を踏まえつつ,地域の実情に即した実践的な訓練が行われることが期待されるところである。

最後に,国民への意識調査においても期待の高さが伺えた地域の防災リーダーの育成についても重要な課題の一つである。地域の防災リーダーに求められる役割としては,地域で防災活動を行う各種主体間の調整を行うとともに,地域住民の防災意識を高め,災害発生時には,地域住民の迅速かつ有効な防災活動を導くことであると考えられる。

以上見てきたように,ボランティア,企業,学校等の多様な主体による防災分野の活動は今後とも広がりを見せていくものと考えられ,これらの多様な主体が連携し,適切な役割分担の下,それぞれの力を最大限活かし,実践的な防災対策が恒常的に行われていくことが重要である。


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