5−7 火災対策



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5−7 火災対策

(1) 災害の現況

近年の都市化の急速な進展に伴う人口の密集化,建築物の高層化・大規模化の進展,地下街の発達や,本格的な高齢化社会の到来などにより,火災による被害発生の危険性が増大している。

平成13年には,新宿区歌舞伎町の小規模雑居ビルにおいて火災が発生し,死者44人,負傷者3人の犠牲者を出す惨事となり,平成18年1月には,長崎県大村市の認知症高齢者グループホーム「やすらぎの里さくら館」において火災が発生し,7名の高齢者が犠牲になる惨事となり,さらに,平成19年1月には,兵庫県宝塚市のカラオケボックスにおいて火災が発生し,死者3名,負傷者7名を出す惨事となった。また,住宅火災による死者数(放火自殺者を除く)は依然として多く,平成17年中の同死者数は1,220人,対前年比17.5%増で昭和54年以降,最多となっている。

(2) 火災対策

a 防火安全の確保
 国及び地方公共団体では,火災の発生を予防し,被害を最小限に抑えるため,火災予防運動や民間防火組織の活動を通じ,防火意識の普及宣伝に努めている。また,多数の者が利用する旅館,病院,地下街等の防火対象物においては,消防法により,消防用設備等の設置,防火管理者の選任,防火管理業務の実施等が義務づけられている。
 特に,上記歌舞伎町の火災直後に実施した調査において全国の小規模雑居ビルの約9割に消防法令等(火災予防条例を含む)違反,4割に建築基準法の違反があること等が判明したことから,これらに対する防火安全対策について課題とされた。消防庁においては,平成14年度に消防法を改正し,消防法令違反等の是正の徹底を図った結果,消防法令違反等は3割程度に低減した。
 しかし,未だ十分な改善がなされたとは言えないことから,引き続き違反是正を推進するため,違反処理データベースの充実により違反処理体制の強化を図るほか,平成18年4月1日から一定の防火対象物に係る防火管理者への甲種防火管理者再講習を義務付ける等所要の整備を行い,防火管理制度の充実を図った。国土交通省においては建築基準法を遵守させるための方策の検討を行った。
 また,上記認知症高齢者グループホーム火災を受けて,消防庁において,「認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策検討会」を開催し,同種の施設における防火安全対策のあり方について検討し,平成18年3月に報告書をとりまとめた。
 当該報告書において,認知症高齢者グループホーム等において講ずべき防火対策の基本的な考え方として,①入所者の安全を優先的に考え,併せて関係者が安心して入所者のケアを行うことが重要であり,これらのことを踏まえて防火安全対策を講ずること,②火災時に全入居者が短時間で避難することが困難であることから,火災の早期発見及び迅速な消防機関への通報が必要とされるのと同時に,初期消火及び火災拡大防止についても,管理者に対して徹底していくとともに,具体的な防火対策として,防火管理者の選任を義務づける対象の拡大や自動火災報知設備,消防機関へ通報する火災報知設備等を設置することが必要とされた。

b 消防力の強化
 国及び地方公共団体は,より一層の消防力の強化を図るため,はしご付消防ポンプ自動車,化学消防ポンプ自動車,救助工作車,消防・防災ヘリコプター等の重点的な整備を図るとともに,消防水利の多元化,消防団の充実強化を推進している。
 また,平成15年,消防組織法及び消防法の一部改正により,大規模又は特殊な災害時における緊急対応体制の充実・強化として,消防庁長官による緊急消防援助隊の出動の指示及びこれに係る国の財政措置,国による主体的な火災原因調査の実施等を行うなど,所要の整備がなされた。
 さらに,平成18年6月,消防組織法の一部を改正し,市町村の消防の広域化をより一層推進することにより,広域化による総合的な消防力の強化を図っている。

c 建築物の不燃化の推進
 従来より防火地域の指定等による建築物の構造規制,市街地再開発事業,住宅地区改良事業,住宅市街地総合整備事業,住宅金融公庫融資等による耐火建築物への建替えの促進,公営住宅等公共住宅の不燃化,都市防災総合推進事業による避難地・避難路周辺等の不燃化等各種の対策を進めてきている。

d 住宅防火など火災予防対策の推進
 住宅火災による死者数は建物火災による死者数の約9割を占めている。また,特に高齢者の割合が他の年齢層に比べ極めて高い現状にある。
 この低減を図るため,消防庁においては,平成13年に策定した「住宅防火基本方針」に基づき,住宅用火災警報器・消火器等の設置促進や訪問診断等による意識高揚等の住宅防火対策を積極的に推進してきたところであるが,平成15年の消防審議会答申等を踏まえ,平成16年,住宅に住宅用火災警報器等の設置・維持を義務付ける消防法の改正がなされた。なお,改正消防法は,新築住宅については平成18年6月1日から,既存住宅については市町村条例の定める日から施行される。
 また,放火及び放火の疑いによる火災は,全火災の2割以上を占め,都市によっては4割を超える場合もあるなど,深刻な社会問題となっている。このため,消防庁では,平成16年に,個人,事業所,自治会・町内会,商店街等が,地域の放火火災に対する危険度を自ら評価分析し,放火火災防止対策を実行し,継続的に状況の検証をするといったサイクルに沿った取組等を内容とする「放火防止対策戦略プラン」を策定し,このプランに基づき,「放火されない環境づくり」による安全で安心な暮らしづくりを進めている。

e 林野火災対策
 出火多発期である春先を中心とした行楽期等における林野周辺住民・入山者等に対する広報,火災警報発令中における火の使用制限の徹底・監視パトロールの強化,火入れを行う者に対する適切な指導等,出火防止の徹底を重視して実施している。
 また,林野火災の危険度が高い地域においては,林野火災特別地域対策事業を推進しており,平成18年度までに38都道府県の541市町村にわたる228地域において実施されている。
 さらに18年度には,消防庁と林野庁は共同で「広域的な林野火災の発生時における消防活動体制のあり方検討会」を開催し,広域的な林野火災時に被害の低減を目的として,関係機関との連絡・連携体制,住民への広報・避難勧告,無人航空機の利用可能性等について検討し,報告書をとりまとめた。


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