2−2 災害予防の強化



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2−2 災害予防の強化

災害による被害の発生を未然に防止し,あるいは軽減するため,災害に強い国づくり,地域づくりを進めるとともに,国民一人一人の防災意識の高揚のための施策の実施,防災訓練の実施等が重要である。

(1) 災害に強い国づくり,地域づくり

地域の特性に配慮しつつ,災害に強い国土とまちの形成を目指して国土保全,地域づくりを推進するとともに,主要交通・通信機能の強化,構造物・施設,ライフライン機能の安全性の確保に関する施策等を実施している。
 また,災害発生時に災害応急活動を円滑かつ効果的に実施するための施設・設備の整備等各般の施策を実施している。

a 国土保全事業の推進 
 水害,土砂災害,震災,火山災害等の自然災害から国土並びに国民の生命,身体及び財産を保護するための国土保全事業を,分野別に長期的な計画を策定し進めてきたが,国土保全事業を含む社会資本の整備について,より低コストで質の高い事業を実施するといった時代の要請に応じ,従来の分野別の長期計画を統合した「社会資本整備重点計画」を平成15年10月に策定した。また,森林整備事業と治山事業を総合的かつ効果的に推進していくため,「森林整備保全事業計画」を平成16年6月に策定した。さらに,平成17年度から,国土交通省は,洪水,高潮,土砂流出,地震等による災害の発生地域において緊急に実施することが必要となる災害の再発防止に資する事業等に対し,年度途中においても機動的な対応を可能とする災害対策緊急事業推進費を創設し,各府県からの要求に基づき配分を行っている。
 国土保全事業に係る予算の推移をみると図2−2−1のとおりである。平成17年度では,国土保全事業の国費は4,271億円(下水道事業関係の国費を除く)で,事業費は2兆3,421億円(下水道事業関係の事業費を除く)となっている。
 また,国土保全事業予算額が一般公共事業予算額に占める割合は,平成17年度は約17.6パーセントとなっている。

クリックで拡大表示 図2−2−1 国土保全事業予算の推移

b 災害に強いまちづくり 
 都市再生本部においては,都市再生プロジェクト第三次決定(平成13年12月)として,地震時に大きな被害が想定される危険な密集市街地について,特に大火の可能性の高い危険な市街地(東京,大阪各約2,000ha,全国で約8,000ha)について平成13年から10年間で重点地区として整備することにより,市街地の大規模な延焼を防止し,最低限の安全性を確保することとしている。また,住生活基本計画(全国計画)では「密集住宅市街地の整備を推進する」旨,経済成長戦略大綱(18年7月)では「密集市街地のリノベーションを戦略的に推進する」ことと位置づけられており,さらに,都市再生プロジェクト第十二次決定(平成19年1月)では,第三次決定の目標達成に向けた取り組みの一層の強化を内容とする「密集市街地の緊急整備」が再度プロジェクト決定されている。それらを受けて,平成19年3月に「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」の一部改正を行ったほか,密集市街地の改善に資する各種事業制度の創設・拡充,建替計画認定制度(特定防災機能向上型)に係る税制上の特例措置を創設するなど,道路等の基盤整備を推進しつつ,老朽化した建築物の建替えの促進を図ることにより危険な密集市街地のリノベーションを戦略的に推進している。

c 災害に強い農山漁村づくり 
 一度被災すると下流への甚大な被害を及ぼす恐れのあるため池等の農業用施設等の防災対策を実施している。
 また,緊急車両の通行や避難路の確保等のための林道,災害時の避難地や災害対策拠点として活用するための漁村広場や公園,緊急物資輸送に資する漁港の耐震強化岸壁,災害対策上必要な施設の整備を実施している。

d 地域の防災拠点の整備 
 災害時には応急対策活動の拠点として機能し,平常時には防災に関する普及啓発,教育,訓練等の場として機能する地域防災拠点施設や水防資機材の備蓄や水防活動の指揮所となる河川防災ステーションの整備を推進している。
 災害時に避難場所となる学校については,改築,耐震補強や,備蓄倉庫,耐震性貯水槽等の整備を推進している。官庁施設についても耐震安全性の向上や備蓄機能の強化等を実施している。病院については,災害時の患者受入機能(ヘリポート等),水,医薬品,医療材料の備蓄機能等を持ち耐震機能が強化された災害拠点病院の整備を推進している。
 また,災害に強いまちづくりの一環として,避難地・避難路の機能と延焼遮断帯の機能を併せ持つ都市公園の整備を推進している。
 この他,港湾における緊急物資輸送用の耐震強化岸壁や避難緑地等と一体となった臨海部防災拠点の整備,空港における液状化対策等を行っている。

e 広域防災基地の整備

(a)立川広域防災基地
 広域的な災害が発生した場合においては情報の収集・伝達,救難・救助等の災害応急対策の拠点となり,平常時においては地域の行政サービスの充実,国民に対する防災知識の普及等を図るため,東京都立川市に立川広域防災基地が整備されており,災害対策本部予備施設のほか,警察防災,海上防災,消防防災,自衛隊航空及び医療に関係する施設が整備されている。

(b)さいたま広域防災拠点
 関東地域の災害情報を集中的に管理し,圏域内の指揮命令を行うため,各省庁の地方支分局が集結するさいたま新都心において,さいたま広域防災拠点を整備している。

(c)横浜海上防災基地
 原油,LPG,LNG等の危険物を積載する船舶の事故や,南関東直下の地震等により沿岸部が大きな被害を受けた場合に速やかに救援活動を実施するため,横浜市みなとみらい21の新港地区に海上保安庁の横浜海上防災基地が整備されている。

(d)東京湾臨海部等における基幹的広域防災拠点
 都市再生本部における都市再生プロジェクト第1次決定(平成13年6月)では,東京圏において大規模かつ広域的な災害が発生した際に災害対策活動の核となる現地対策本部機能を確保するため,東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備を行うこととし,平成17年度には,本部棟(東京都江東区有明の丘地区)及び施設棟(神奈川県川崎市東扇島地区)の施設整備に着手した。平成19年度中には,東扇島地区の整備が完了する予定である。また,BCP(業務継続計画)の策定等により,災害時に防災拠点が適切に機能する体制の構築を進めている。

(2) 防災に関する普及・啓発

災害から自らの身を守るためには,平常時から,一人一人が防災に関する意識を高め,正しい知識や技術を身につけることが重要であり,社会全体で生命,身体,財産を守るための具体的な行動を実践する国民運動を展開する必要がある。

中央防災会議では,平成18年4月「災害被害を軽減する国民運動の推進に関する基本方針」を決定し,社会全体における防災力の向上を図るため,個人や家庭,地域,企業,団体等が日常的に減災のための行動と投資を息長く行う取組を実践することを呼びかけている。

a 「防災週間」等各種行事を通じての普及・啓発への取組
 昭和57年5月11日の閣議了解で「防災の日」(9月1日)及び「防災週間」(8月30日〜9月5日)を定め,毎年この期間を中心に各種行事や広報活動等を実施している。
 この一環として,平成18年度においては名古屋市で「防災フェア2006 inなごや」(内閣府・名古屋市・防災推進協議会共催)を実施し,屋内外において,防災に関する各種展示や活動の紹介,実演に加え,起震車や降雨体験装置等,市民が体験しながら自らの身の回りの安全について考える機会となる行事を開催した。
 また,第22回防災ポスターコンクール(内閣府・防災推進協議会共催)を実施し,幼児・小学1〜4年生の部,小学5・6年生の部,中学生・高校生の部,一般の部の4部門について作品を募集,審査を行い,防災担当大臣賞,防災推進協議会会長賞,佳作及び入選作品を表彰した。
 また,防災功労者(災害時における防災活動又は平常時における防災思想の普及もしくは防災体制の整備について全国民の模範となる顕著な功績があったもの)の表彰式を行い,平成18年は内閣総理大臣が個人3,団体18を,防災担当大臣が個人6,団体8をそれぞれ顕彰した。
 このほか,関係各機関や地方公共団体においては,[1]各種催物,展示会の開催,[2]テレビ,ラジオ,新聞及び広報誌等による広報,[3]標語,図画の募集等を展開し,防災知識の普及と防災意識の高揚を図っている。
 また,これ以外にも,「全国火災予防運動」(3月1日〜及び11月9日〜),「水防月間」(5月又は6月),「山地災害防止キャンペーン」(5月20日〜6月30日),「土砂災害防止月間」(6月),「がけ崩れ防災週間」(6月1日〜),「危険物安全週間」(6月第2週),「道路防災週間」(8月25日〜),「建築物防災週間」(3月1日〜及び8月30日〜),「救急医療週間」(9月9日を含む週間),「雪崩防災週間」(12月1日〜)等においてシンポジウム,講演会,講習会等を実施し,防災知識の普及と防災意識の高揚を図っている。

b 「防災とボランティア週間」における取組
 平成7年12月15日の閣議了解で「防災とボランティアの日」(1月17日)及び「防災とボランティア週間」(1月15日〜1月21日)を定め,毎年この期間を中心に各種行事や広報活動等を実施している。
 この一環として,毎年,内閣府においては,従来からこの期間に「防災とボランティアのつどい」を実施しており,平成18年度は,1月21日に東京都内で実施した。
 このほか,関係各機関や地方公共団体においては,[1]各種催物,展示会の開催,[2]テレビ,ラジオ,新聞及び広報誌等による広報等を行っている。

c 学校における防災教育
 災害時に自ら適切な行動をとれるようにするためには,学校における防災教育をより一層充実し,子供の時期から正しい防災知識をかん養していくことが重要である。
 文部科学省においては,学校における防災教育の充実を図るため,安全指導の進め方や避難訓練の実施を指導計画に盛り込むための教師用参考資料や,地震等による自然災害に対する備えや適切な行動のための防災教育教材の作成・配布を行うほか,防災教育の研修会の開催(独立行政法人教員研修センターで実施)などの施策を講じている。
 さらに,平成14年度から実施されている現行学習指導要領では,小学校の社会(6年生)において,国民生活の安定にかかる国や地方公共団体の取組の事例として,災害復旧等の具体例を取り上げたり,また中学校の保健体育においても,日頃からの安全への備えや自然災害の際の安全確保について指導することとした。また,総合的な学習の時間においても,地域や学校,児童生徒の実態等に応じ,横断的・総合的な課題等を取り上げることとされており,防災をテーマとして採用している学校もみられる。

(3) 自主的防災意識の育成

大規模な災害が発生した場合には,地域住民が防災関係機関と一体となって初期消火,避難誘導,被災者の救出・救護等の自主的な防災活動を行うことが,被害の拡大を防ぎ円滑な災害応急対策を実施する上で極めて重要であり,このような観点から,地域住民の連帯意識に基づく自主防災組織が結成されている。

自主防災組織については,災害応急活動のほか,平常時から危険箇所の点検・周知,災害履歴の伝承,防災訓練等を通じて,地域全体としての防災意識の向上,知識の普及面でもさらに重要な役割を担っていくことが期待されている。

さらに,消防庁においては平成16年度から地域コミュニティにおける住民パワーを生かし地域の安心安全を確保するため,自主防災組織等を核に地域の様々な団体と広域で連携し,防災・防犯活動を行う「地域安心安全ステーション整備モデル事業」に取り組んでいる。


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