4.強震動・津波の計算手法2


4.強震動・津波の計算手法
(2) 津波の予測方法
1) 津波の計算
(ア) 津波の波源
想定震源域またはそれに付加断層を加えたものについて、弾性体理論に基づき海底地殻変動(垂直変動)を求める。
海面初期変位は、上で求めた海底地殻変動量と等しいとし、変位は全地点で時間差なしに与えられるものとする。
(イ) 津波伝播・遡上計算
深い海域においては線形長波理論により、また、浅い海域においては海底での摩擦及び移流を考慮した非線形長波理論により計算を行う。
陸上での遡上部分においては、家屋等、障害物の効果は粗度計数で表現する。
計算は差分法により数値的に行う。深海部では大きな(1,350m)メッシュ領域とし、沿岸部に近づくにつれてより小さな(450m、150m、50m)メッシュ領域を設定して計算する(遡上域は50mメッシュ)。
(ウ) 地域データ
国土地理院発行の50mメッシュ標高データ、および、一級河川横断断面図を用いて作成する。
(エ) 海底地形データ
水路部発行の、沿岸の海の基本図(縮尺:1/10,000〜1/50,000)及び海図(港泊図。縮尺1/3,000〜1/15,000)を用いて作成する。
   
2) 想定震源域と津波の波源域
 

津波の大きさは、海底の地殻変動量に比例して大きくなる。津波の波源域の検討にあたっては、想定震源域のより浅い部分の変位量を考慮する必要がある。
このため、想定震源域の変位量について、深さごとの剛性率に対応して変化させたモデルと、想定震源域の変位量を一様にした場合の津波の高さを比較する。
想定震源域は、強震動の発生可能性領域を設定するもので、津波の波源域は、この想定震源域よりも南海トラフ側の浅い方に拡がることも考えられる。このため津波の波源域が想定震源域よりも南海トラフ側に付加断層を加えたいくつかのケースについても試算する。

   
3) 過去の地震による津波との比較
  前項のいくつかのケースについての計算結果と、宝永地震、安政東海地震、安政南海地震、昭和南海地震の津波の実測値とを比較し評価を行う。
津波計算は、沿岸での津波の高さのみでなく、過去の地震時の状況をできるだけ復元し陸上への遡上についても試算する。なお、海岸付近では過去の地震のたびに隆起・沈降を繰り返しており、特に宝永地震当時の標高や地形等を復元することが困難であるため、これについては可能な範囲で比較することとしたい。
(ア) 安政東海地震当時の潮位及び地形等の復元
  (1) 潮位の復元
    理論潮汐計算により地震発生の当年当月当時刻の潮位を求め、試算時にはこのレベルを津波来襲前の水位として考える
  (2) 地形の復元
    過去の地震当時の地形を復元するには、地殻変動による影響を考慮する必要がある。地殻変動は、地震と地震の間の期限で定常的に発生するものと、地震そのものにより隆起・沈降するものとがある。このため、地震間の長期的な地殻変動による影響を差し引いたものを地震後の地形として復元し、この地形に対して津波の計算を行う。
地震時に発生する隆起、沈降は、それぞれ想定した断層モデルにより計算する。
地震間の長期的な地殻変動は、国土地理院による水準測量結果から算出した約95年間の垂直データ(1988〜1999年実施の測量と1883〜1913年実施の測量との差を取る)に基づき、この地殻変動が一定速度で進行したものと仮定して、地震発生時点までの、外挿して求める。
(イ) 陸上の土地利用形態等の考慮
  過去の地震当時は、現在のような住宅等構造物の存在する市街地は少なかったと考えられるため、陸上での粗度係数を田畑での値に相当する0.02とする。また、現在の沿岸堤防、河川堤防等の線型構造物は存在しないものとする。なお、埋立地等の復元は非常に困難であることから、現在の地形をそのまま使用することとする。
 
 

 
 
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