大都市震災対策専門委員会提言

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II.大都市地域における震災対策の推進

第7 大都市地域の震災対策に関する各種の対策の体系的あり方

1 大都市地域の震災対策に関する国と地方公共団体の連携の推進

大都市地域においては、大規模な地震が発生した場合の被害の広域性・甚大性、社会環境の特殊性等から、関係機関の連携による震災対策の推進が重要な課題である。

現在、関係都府県・市町村においても地域防災計画の作成及び実施等を通じて各機関の連携が図られているほか、地方公共団体間で締結されている災害時相互応援に関する協定等により、広域的な対策の推進も図られているところであり、これらの地方公共団体レベルの各種対策については、防災対策の基本的主体が地方公共団体であることを踏まえれば、今後とも主要な対策として位置付けられるものである。

一方、大都市地域における大規模震災の特殊性を踏まえ、現行の震災対策の推進を支援し、充実する上で特に重要な大都市地域特有の課題について、国と地方公共団体等の連携のもと、対策を一層推進していく必要がある。

2 圏域ごとの連携による震災対策の充実・強化策のあり方

(1)

南関東地域については、直下の地震の発生による被害の防止・軽減をあらかじめ図るため、平成4年8月21日に「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」を中央防災会議で決定し、当該地域において講ずべき地震防災に関する対策について、当該対策を総合的に推進する上で当面する課題を掲げるとともに、当該課題に係る施策の進め方の基本方針を示しており、国、関係地方公共団体、関係公共機関等においては、緊密な連携のもとに、同大綱に基づく対策の具体化及び推進を図っているところである。

南関東地域については、我が国の首都を擁し、人口や国際機能、経済機能等の諸機能が過度に集積しており、また、直下の地震の発生についてある程度の切迫性を有していることが現在も指摘されることから、特別の枠組みに基づく震災対策の推進が引き続き必要である。

このため、本提言の考え方に基づき、阪神・淡路大震災から得られている教訓等を踏まえ、南関東地域直下の地震対策に関する大綱を速やかに改訂するとともに、同大綱に基づく対策の具体化及び推進を引き続き図っていく必要がある。

(2)

近畿圏についても、大阪湾岸から京都盆地にかけて広域的に広がる市街地に人口や諸機能が集積しているため、大規模な地震が発生した場合の被害は甚大かつ広域に及ぶことが想定される。

このため、近畿圏における地震活動活発化の可能性、被害の甚大性・広域性、地方公共団体における取組の現状等を総合的に勘案して、地元地方公共団体の意向を踏まえながら、圏域の震災対策の現状と課題を検証し、現行の震災対策を充実・強化するための連携方策のあり方について、具体的に検討を進める必要がある。

これまで、近畿圏災害対策協議会等において広域的な取組の検討が進められているが、今後、本提言の考え方に基づき、国と地方公共団体で広域的な連携を図りながら対応することが必要な課題の整理や施策の推進方策について、国と地方公共団体間で検討を進めるべきである。

(3)

中部圏についても、濃尾平野から伊勢平野にかけて広域的に広がる市街地に人口や諸機能が集積し、また、南関東地域と近畿圏との中間に位置しているため、大規模な地震が発生した場合の被害は甚大かつ広域に及ぶことが想定される。

このため、中部圏における地震活動活発化の可能性、被害の甚大性・広域性、地方公共団体における取組の現状等を総合的に勘案して、地元地方公共団体の意向を踏まえながら、圏域の震災対策の現状と課題を検証し、現行の震災対策を充実・強化するための連携方策のあり方について、具体的に検討を進める必要がある。

3 特定の課題ごとに作成する実践的な対策

圏域ごとの震災対策のあり方を検討するに当たっては、特に重要であると考えられる課題ごとに、実践的かつ具体的な対策のあり方を明らかにするための検討が必要であり、以下の視点に留意した検討を進める必要がある。

(1)

南関東地域で大規模な地震が発生した場合にはその被害は激甚かつ広域なものとなるおそれがあることから、被災都県を越えた広域的な、また、関係機関が効果的な連携をとった総合的な災害応急対策の確立を図る必要があるため、昭和63年12月6日に中央防災会議で「南関東地域震災応急対策活動要領」を決定し、緊急災害対策本部を中心とした関係機関の基本的な役割分担等、広域的かつ総合的な災害応急対策活動体制についての活動の要領を定めている。

同要領については、本提言の考え方に基づき、阪神・淡路大震災から得られている教訓等も踏まえ、緊急災害対策本部を中心に関係機関が連携して実施する応急対策の新たな分野について基本的な役割分担を追加する等のため、速やかに改訂する必要がある。

(2)

そのほか、大都市地域における特定の課題については、連携面に配慮して実践的な応急対策を講ずることが必要である。

このため、広域的な連携を確保して実践的な応急対策の備えを行うべき課題の抽出、個別の課題ごとに国レベルで講じるべき施策及び国による地方公共団体の支援方策について、国の関係機関及び関係地方公共団体間の連携のもとに検討する必要がある。

(3)

予防対策についても、大都市地域における特定の課題を抽出し、個別の課題ごとに、連携面に配慮して国レベルで講じるべき施策及び国による地方公共団体の支援方策について、国の関係機関及び関係地方公共団体間の連携のもとに検討する必要がある。


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1998.6.10
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