大都市震災対策専門委員会提言

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I.総論

第4 大都市地域における大規模震災の特殊性

大都市地域は、一般に地震による揺れが大きいとされる沖積平野に人口や諸機能が高度に集積する市街地が広範囲に広がっており、その直下又は周辺で大規模な地震が発生した場合には極めて大きな被害が発生しやすい状況にある。

こうした大都市地域における大規模震災は、被害の甚大性・広域性・複雑性、応急対策活動の困難性、国家レベルへの影響の拡大・長期化など、単独の都市に発生する災害に比べて対応すべき課題が多いという特殊性がある。

(1) 施設・構造物等の被害の甚大性

大都市地域においては、耐震性に課題がある古い住宅や多数の人々を収容する都市的建築物、応急対策活動に必要となる施設・建築物、交通施設やライフライン等の都市基盤施設、産業施設等の危険物を扱う施設が高密かつ大量に存在している。

さらに、地盤の悪い地域や崖地に近接した地域でも土地利用がなされており、地震動の増幅、液状化や斜面の崩落による災害が生じやすい。

このため、大規模な地震により多数の施設・構造物等に被害が発生する可能性が高く、人的・物的被害や経済・社会活動の停止・混乱による影響が甚大なものとなり、さらに、救助・救急、消火、避難収容、がれき処理等の応急対策需要量の増大や応急対策活動への支障が生じる可能性が高い。

(2) 高密な市街地の広がりと被害の広域性

大都市地域においては、行政区域を越えて市街地が広域に連たんしており、また、多くの人・モノが常時広域に移動・流通していることから、広い範囲に強い地震動が発生した場合には、火災の多発・拡大のおそれがあるほか、経済・社会活動に関する被害も含めて広域的な被害が発生する可能性が高い。

このため、応急対策活動の困難性、円滑な応急対策活動を実施するための各機関の相互調整・連携の複雑化、帰宅困難者や移動中の避難者対策など、大都市地域に特有の課題を生じることとなる。

(3) 被害の重大性と影響の拡大

大都市地域においては、我が国の政治・経済・社会機能において極めて重要な機能が集積しており、また、重要な文化財等の文化的な資産も多数存在していることから、大規模な地震が発生した場合の被害は他の地域や国民生活全体、さらには世界的に波及するなど極めて甚大な影響を及ぼすこととなる。

(4) 都市的な社会環境と対応の困難性

大都市地域においては、地域コミュニティの不在、多くの外国人や高齢者の存在による住民構成の特殊性など都市的な社会環境が震災時の被害の拡大やその対応を複雑化・多様化させる要因がある。


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1998.6.10
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