南関東地域震災応急対策活動要領
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第6章 応急収容活動
第1 応急収容活動の基本方針
大地震時における応急収容は、被災者の生活確保に必要不可欠であるとともに、その成否が被災者の精神的な安心、治安等に与える影響も大きいと考えられる。
国は、次の基本方針に基づいて効果的な応急収容活動を行うものとする。
(1) 十分な避難所の確保
発災直後に大量の被災者に対して十分なスペースを提供することができるよう、あらかじめ避難所を十分確保しておくよう地方公共団体を指導するとともに、国として支援する。
(2) 応急仮設住宅の確保
応急仮設住宅の速やかな建設が円滑に行われるよう必要な資機材の調達等を行う。
(3) 円滑な広域的避難収容
被災者の移動が円滑に行われるよう緊急災害対策本部において広域的避難収容実施計画を作成し、その実施について必要な措置をとる。
(4) 社会的混乱の防止
被災地における社会的混乱の防止のために必要な措置を講じる。
(5) 災害弱者への配慮
被災者の収容に当たっては、高齢者、障害者等災害弱者に十分配慮する。特に高齢者、障害者の避難場所での健康状態の把握、応急仮設住宅への優先的入居、高齢者、障害者向け応急仮設住宅の設置等に努める。
第2 応急収容活動の基本的な役割分担
住居を失った被災者の生活を確保するための応急収容活動に係る国の各機関、地方公共団体を通じての役割分担は、おおむね次のとおりとする。
(1) 国の役割
国は、被災都県外への広域的な避難収容の方針について定めるとともに、応急仮設住宅の建設等に必要な資機材(以下この章において「資機材」という。)の調達、被災者を収容するための所管施設の開放等を行うことにより、地方公共団体が行う応急収容活動を支援する。
ア 緊急災害対策本部
(ア)
被災者の避難、収容状況、食料、生活必需品等の需給状況等を考慮して、特に必要と認められる場合には、広域的避難収容実施計画を定める。
(イ)
農林水産省、通商産業省及び建設省(以下「応急収容資機材関係省庁」という。)に対して資機材の調達等を依頼する。
イ 農林水産省
応急仮設住宅の建設等に必要な木材及び国有林材の供給を行う。
ウ 通商産業省
応急仮設住宅の建設等に必要な資機材の調達を行う。
エ 建設省
応急仮設住宅の建設等に必要な建設機械及びプレハブ住宅等の調達に努める。
(2) 被災地方公共団体の役割
被災地方公共団体は、当該地方公共団体の被災住民の収容を行うとともに、当該地方公共団体に通勤、通学等している者についても必要に応じて収容する。
第3 被災都県内での収容
被災都県内での被災者の収容、応急仮設住宅の建設、空家のあっ旋等については、地方公共団体が地域防災計画に基づき行うが、国としても次のような支援を行う。
1 資機材の調達
(1) 被災都県からの要請
被災都県は、被災者の収容活動に関連して資機材が不足し、調達の必要がある場合には、調達を必要とする理由、必要な品目及び数量その他の必要な事項を示し、応急資機材関係省庁に対して調達を要請することができる。
ただし、被災都県は特別の必要があると認める場合には、緊急災害対策本部を通じて応急資機材関係省庁に対して上記の要請をすることができる。
(2) 応急収容資機材関係省庁に対する依頼
緊急災害対策本部は、上記(1)のただし書の要請があった場合には、応急収容資機材関係省庁に対して調達活動等を行うよう依頼する。
(3) とるべき措置の通報等
応急収容資機材関係省庁は、(2)の依頼に対してとるべき措置を緊急災害対策本部に対して通報し、それを受けた緊急災害対策本部は、指定行政機関を通じて要請元である被災都県に対して当該とるべき措置を連絡する。
(4) 資機材の調達体制
応急収容資機材関係省庁は、緊急災害対策本部からの依頼に基づき、関係業界団体等を通じ、住宅建設用資機材メーカー、建設業者等から資機材の迅速かつ確実な調達を行う。また、輸送手段がない場合には、第3章の定めるところによるものとする。
なお、資機材の引渡し方法等については、第5章、第3の8から10までを準用する。
2 避難所の開設、運営に関する協力
所管施設を避難所として開放することを予定している省庁は、避難所開設予定者と十分な連絡調整を図り、速やかな調整及びその後の運営に協力する。
第4 被災都県外での収容
被災都県外への被災者の避難は、被災者が自主的に行うことを原則とするが、被災者の避難、収容状況等にかんがみ、積極的に被災都県外に被災者を避難させる必要があると認められる場合には、次により広域的避難収容措置をとる。
1 被災都県からの要請
被災都県は、被災者の避難、収容状況等にかんがみ、被災都県の区域外への広域的な避難、収容が必要であると判断した場合には、警察庁、防衛庁、厚生省、運輸省及び消防庁(以下「避難収容関係省庁」という。)に対し支援を要請することができる。
ただし、被災都県は特別の必要があると認める場合には、緊急災害対策本部を通じて避難収容関係省庁に対して上記の要請をすることができる。
2 広域的避難収容実施計画の作成
(1)
緊急災害対策本部は、上記1のただし書の要請があった場合には、避難収容関係省庁及び関係地方公共団体と協力の上、具体的な広域的避難収容実施計画(以下「実施計画」という。)を定める。また、輸送手段がない場合には、第3章の定めるところによるものとする。
(2)
実施計画は、次のような基本方針に基づき作成する。
ア 対象者
児童・生徒、社会福祉施設入所者等教育上、介護上その他の理由により被災都県内にとどまらせることが適当でない者及びその付添者を優先的に扱う。
イ 収容予定場所
旅館、寺院等被災者の長期収容に適当な施設を積極的に活用する。
ウ 収容施設の開設及び運営の主体
被災都県とし、開設地の地方公共団体はこれに協力する。
エ 費用負担の方法
原則として被災都県が支弁し、災害救助法に基づき国も所要の負担をする。
3 関係省庁及び関係地方公共団体に対する依頼
(1)
緊急災害対策本部は、実施計画を定めた場合には、実施計画に基づく措置をとるよう避難収容関係省庁及び緊急輸送関係省庁に対して依頼し、依頼を受けた各省庁は要請等必要な措置をとる。
(2)
避難収容関係省庁及び緊急輸送関係省庁並びに関係地方公共団体は、実施計画に基づき適切な広域的避難収容活動を実施する。
第5 社会的混乱の防止
応急収容等による生活環境の激変に伴い、被災者は心理的な不安に陥りやすい状態にあるため、被災地においては社会的な混乱が発生するおそれがある。
被災地及びその周辺においては、警察が独自に、又は自主防犯組織等と連携し、パトロールや生活の安全に関する情報の提供等により、速やかな安全確保に努めるものとするが、国は、これに必要な支援を行う。
第6 帰宅困難者の収容等
南関東地域で大規模な地震が発生した場合、自力で帰宅することが困難な通勤、通学者、出張者、買物客等が大量に発生することが想定され、地方公共団体は、このような帰宅困難者の収容についても、考慮する必要がある。
また、帰宅困難者に対する対応は、応急収容活動に限られるものでなく、情報・広報活動等、多岐にわたるとともに、被害状況によっては、被災都県だけの対応だけでは不十分になることが想定されることから、周辺地方公共団体、国等も含め、特段の配慮が必要である。
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1998.6.23 中央防災会議(事務局内担当:国土庁防災局震災対策課:E-mail:edcplan@nla.go.jp )