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EPCF
※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
津波に対抗する地域社会について
 
クリスティン・トリスラー
連邦緊急事態管理庁(FEMA)地域地震プログラムマネージャー
 

  米国津波予防プログラム(NTHMP:Natinal Tsunami Hazard Mitigation Program)の防災小委員会は、"津波に強いコミュニティ"を次のようなコミュニティと定義している:

1)津波の危険性とはどのようなものか理解している
2)津波の危険を回避する道具を備えている
3)津波の危険性についての情報を普及させている
4)津波の危険性のある他の地域と情報交換を行っている
5)津波の危険に対する防災計画を策定している(Dengler, L. 1998)

 本報告では、米国津波予防プログラム(NTHMP)がいかに津波に強いコミュニティの創出を支援しているか、その概要を述べることとする。

背景
 米国津波予防プログラム(NTHMP)は、津波の危険を防ぐために設けられた連邦政府と州政府間の連携事業である。米国津波予防プログラム(NTHMP)が確立されるまでには、幾多の経緯があった。1980 年代に、研究努力によって、カスカディア・サブダクション・ゾーン(地殻もぐり込み地域)に沿って津波を引き起こす地震がこれまでに発生していたこと、および今後も発生する可能性があることが判明した。沿岸地域の住民達は、そのニュースに関心を持った。1992年には、カリフォルニア州のメンドシノ岬付近で一連の大地震が発生し、沿岸部の小さな町々に大きな被害を与え、小型の津波も発生した。その結果 、研究者達は、将来起こりうる津波に対して、警戒心を新たにした。しかしながら、米国津波予防プログラム(NTHMP)が本腰を入れて確立され始めたきっかけは、1994 年 10 月 4 日の出来事であった。この日、マグニチュード 8.3 の千島列島地震が発生し、合衆国西海岸に津波警報が発令された。結果 として、この警報が、西海岸の町々の津波に対する防災体制を試すこととなった。多くの町々が、その情報をどのように理解すべきか分からず、またわずか数時間の間にどのような津波対策を取るべきか分からないままであった。西海岸を襲った最後の大型津波は、30 年も前の 1964 年のことであった。その時の教訓は時の流れとともに薄れており、また新しく移り住んだ住民には分からないことばかりであった。このような状況の中で、1994年のその時、高さ不明の津波が彼らの方に向かって押し寄せていた。警報の発令からもはや引き返せない行動開始までの不安な気持ちが、意志決定者達の心に深く刻み込まれた。その時の津波は大したものではなかったが、意志決定者達は、今回はただ運が良かっただけだと知っていた。沿岸部のコミュニティは、次の警報が発令されるまで、あるいは実際に津波が襲ってくるまでに、津波に強い町作りをしたいと望んだ。それらの要望がはずみとなって、そのような目標に向かって新しく永続性のある連携関係が構築されることとなった。この報告では、それらの連携関係に付いて触れ、それらがいかに地震に強いコミュニティの創出に向かって支援努力してきたかを述べることとする。米国津波予防プログラム(NTHMP)については、エディ・バーナード博士が詳細に報告しているので、今回ここでは米国津波予防プログラム(NTHMP)の中の防災小委員会の概要とその活動に焦点を当てることにする。

 津波の危険性を減らすために専門知識を寄せ合ったのは、米国海洋大気局(NOAA)、連邦緊急事態管理庁(FEMA)、米国地質調査所(USGS)、およびアラスカ、カリフォルニア、ハワイ、オレゴン、ワシントンの各州であった。これらの機関が議会から求められた課題は、次の 5 つであった。

1)津波危険性の評価
2)危険情報の円滑な連絡
3)津波を引き起こす可能性のある地震の早期感知
4)津波警報についての誤報を防ぐ
5)コミュニティの津波防災努力を支援する

 米国海洋大気局(NOAA)が運営委員会の座長を務め、議会から資金を受け取り、津波のモデル化や警報システムの分野を先導している。米国地質調査所(USGS)は、津波を引き起こす地震のリアルタイムの感知を可能とするために、既存の地震観測網の向上を図っている。

 

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