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※「国土庁防災局」は、2001年より、「内閣府(防災部門)」になりました。
米国地震被害軽減プログラム(NEHRP:The National Earthquake Hazards Reduction Program)の戦略プランについて
 

将来の課題、展望、優先事項
  間もなく 21 世紀を迎える時代となったが、地震の危険性がある地域でも都市化や資本投下が続いており、もしも都市部に大地震が発生するとその衝撃は計り知れないものとなる。このような状況にも関わらず、地震リスクの低減努力に対する資金援助は、過去 20 年の間に急激に減少してきた。例えば、米国地質調査所(USGS)の地震防災事業への資金割り当ては、同事業が開始された 1978 年以来、金額的に 40% もの減少となっている。ローマ・プリータ地震とノースリッジ地震で大きな被害が生じて、地震防災事業への資金割り当てが一時的に増加したが、それでも下降傾向にある全体的な資金減少をくい止めるほどのものではなかった。国立標準技術研究所(NIST)では、状況はさらに深刻となっている。こうして、地震防災事業は今や岐路に立たされている。極めて重要ながら遅れが出ている分野を活性化し、資金不足によって長年据え置かれてきた人員構成、計測器材、実験設備を再構築していくには、資金の投下が必要である。資金投下が行われないと、地震防災事業の科学から実用へという一連の流れに穴が開き、スムーズかつ効果的に機能している関係 4機関によるがっちりしたスクラムが損なわれることになる。地震防災事業が、今後も、地震危険性の大幅な低減のために、大きな可能性を秘めた科学技術の進歩を利用していくためには、何にもまして、ただ糊口をしのぐだけではない十分な資金投下が必要である。

 米国地震被害軽減プログラム(NEHRP)が、地震危険性の理解を広め地震による損失を低減するために、科学研究開発にこれまで投資して成功を収めてきたことは、十分に知られている。今後もこのような進歩を継続していくためには、資金投下がぜひとも必要である。戦略計画は、地震被害低減のために大きな進歩となるとても胸躍る幾つかの新しい研究開発案を提示している。それらの科学技術分野は、我々の地震に対する理解と地震の影響を防ぐ能力を大きく進展させる可能性を秘めたものである。その意味で、これらの分野は、地震防災事業の研究から実用へという一連の流れに新しい血を注ぎ込むものとなり、同事業の成功の鍵を握るものである。しかし、ただ科学や技術の研究を支援するだけでは十分ではない。成功を確信するには、得られた情報を、一般大衆からエンジニア、プランナー、政府役人、ビジネスリーダーに至るまでの無数の潜在的ユーザーに効果的かつタイムリーに伝えていかなければならない。地震防災のための方針や方策を速やかに採用していくには、これらの活動に対する益々の支援が必要である。特に、連邦緊急事態管理庁(FEMA)と国立標準技術研究所(NIST)に、今後も多岐に渡る潜在的ユーザーに目的に合った特別仕立てのツールや製品を提供してほしいと望むなら、彼らには益々の支援が必要である。地元地域の意志決定者達が、必要なツールや知識を手に入れて地震防災に関して有益な判断を下したいと望むなら、必要とされるのはこのレベルの努力なのである。

 

結論
  米国地震被害軽減プログラム(NEHRP)の戦略計画は、同事業に加わっている 4つの機関の行動計画であり、米国の地震被害低減努力を先導するものとなっている。同計画は、地震防災事業の将来の展望、使命、目標を設定し、事業の優先順位についての枠組みを示し、各種活動を調和させ、将来の有力な活動分野を定義している。

 その戦略計画は、地震防災事業に加わっている 4つの機関と利害関係者らが共同で作成したものである。100 人を越える利害関係者を招いてのワークショップが 1999 年と 2000 年の 2回開かれ、優先順位の高い活動の設定について説明がなされた(付録 A-C)。ワークショップで示されたインプットは、戦略計画にも示されているように、将来の地震防災努力の全体的な方向性に大きく影響を与えるものであった。利害関係者も巻き込んだことによって、連邦の努力は、利害関係者、地元自治体、民間の間で確実に調和されることとなった。

 また戦略計画は、議会が望む地震防災事業のあるべき姿である、研究、新しい知識の速やかな譲渡、ユーザーによる研究成果や技術の採用というスムーズな一連の流れにうまく対応したものとなっている。この計画は、政府の要求、特に "政府機関の能力成果法"の下で要求されるようになった高度な生産性、効率、責任能力に十分対応するものとなっている。

 この戦略計画は、単なる計画ではなく、要求事項である。各省庁は、1993年の政府機関の能力成果法によって、議会や利害関係者と相談の上で、使命を明確に定義し、長期的な戦略計画を策定し、最終目標につながる年間目標を提示するよう求められるようになった。ここに示す地震防災事業の戦略計画は、これらの要件を満たしたものとなっている。

 ここに示した戦略計画は、生きている計画である。地震防災に関係する要素は、時代と共に変化し、時には予想と全く違う方向に流れることもある。従って、目標や個々の目的、優先事項、戦略、計画等は、戦略計画の存続期間中に色々変わることがある。そこで、関係機関が 2年ごとに戦略計画を見直し、実行状況を評価し、経験に基づきアプローチを洗練あるいは変更させることになっている。この 2年ごとの見直し作業は、議会が要求する地震防災事業の報告書の提出時期とちょうど重なっている。さらに、5 年ごとに、内部および外部の利害関係者を招いてより包括的で正式な見直しを行い、結果によっては、内容が大幅に変更されることもある。

 

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