東日本大震災(平成23年3月)
流された整理だんすからへそくりが出てきた!
新地町 60代 女性 主婦
インタビュー日:2012年9月19日
3月11日、防災無線から聞いたこともないような警報が聞こえたのは、居間に腰を下ろし、新聞を広げたとき。そのうちにものすごい揺れに襲われ、屋根がわらが落ち始めたときはただごとではないと思いました。それでも揺れが収まったところで一安心し、道路に散らばった隣家の屋根がわらを片付け始めたんです。すると、「何やってるの? 津波が来るから早く逃げなきゃ」と通りかかった知り合いが叫ぶんですね。そこで初めて津波の危険があると知り、車で逃げました。
高台に避難して津波にのみ込まれる家や車の様子を見てからは、自分が自分ではないような感覚でした。腕が振るえて振るえて運転もままならない。足もとの道路が乾いていることにふと気づいたときに、やっと少し落ち着いたのを覚えています。
結局、家は跡形もなく流されてしまいました。何日か後になって自宅付近を見回ったとき、家のあった場所の裏側に見覚えのある整理だんすを見つけました。海水で膨らんだこのたんすを、裏の家の人にバールでこじ開けてもらい、日常着を取り出しました。それと一緒に、もうすっかり忘れていたへそくりの袋が出てきました。手元に残った袋を見ながら「へそくりはもっと安全な場所にしまおう」なんて、おかしなことを考えています。
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