一日前プロジェクト、みんなでやってみませんか?

 

一日前プロジェクト、如何でしたでしょうか。

皆さんも、難しく考えずに一日前プロジェクトを実施してみませんか?

災害における体験や被災経験を語り継ぐことが、災害体験者や被災者の皆さんには期待されています。そして、そうした体験や経験を話したい、語り継ぎたい、語り継がなければならないと思っている方々も、実は大勢いらっしゃるのです。ところが、こうした場やその方法が見つからず、語り継ぐこと・発信することができずにいる、というのが実情です。

この報告書でご紹介した『一日前プロジェクト』の手法を用いれば、比較的気楽に「語り継ぐこと」を実現できるのではないでしょうか。地域のコミュニティや仲間うちで機会を設け、災害経験者や被災者のみなさまのお話を聞くだけで「一日前プロジェクト」の実践になるのです。

多くの皆さんは、災害体験・被災経験をお持ちではないでしょう。そうした「未経験者」だからこそ、一日前プロジェクトの場を設けて、聞き手やまとめ役になることをお勧めします。そこでは、個々人のさまざまな「思い」を読み取ることができ、また、同じエピソードを聞いても、聞き手によって違った感慨をもたらします。

一方、災害体験者や被災経験者の皆さんは、かしこまることなく、平易なことばで本音の部分を語り継ぐために、一日前プロジェクトを活用することができます。

一日前プロジェクトの進め方を簡単にまとめてみました。

皆さんのご参考になれば、幸いです。

□物語を集める

一日前プロジェクトの素材となる物語を集める時のポイントは次のとおりです。

1.「物語」を拾い出す

(1)話を聞く

地域で同じ被災体験のあった人、または近年で同じ被災体験のある人同士に2~4人集まっていただいて、2時間程度話を聞く。時系列で、事実とそのとき感じたことを詳しく話してもらいましょう。聞き手は複数で行いましょう。

同じ場に集まる人は、その場で初めて会うような人同士より、公民館、避難所、PTA、同じ町内会、同じ職場、同じボランティアセンターなど、何らかの共通性があったほうが、互いに思い出し、相互に再発見をしながら話が進みます。集まった人が共通した場面に至るまでの経験が異なることも多く、その過程も丁寧に聞き取っていきましょう。

(2)物語を見つけだす

話を聞き終わったら、聞き手同士で手元のメモを確認しながら、災害を体験していない人にも共感を得られる物語となりそうな話のつながりを見つけ出します。話の中のキーワードなどから、見出しになりそうな言葉を選び出しておくといいでしょう。「教訓」や「知恵」につながるひとかたまりの重要な部分が物語になります。ただ、減災や防災行動を促す上で、相応しくない話を選び出さないように気をつけましょう。この段階で、下記(4)の見出しにつながる仮見出しを考えておくと、その後の編集がやりやすくなります。

(3)編集する

テープ起しなどをして整理したその場の記録ができあがったら、上記(2)で拾い出した物語の種を、できるだけ語り口を残して編集します。聞き取ったときには、一つの話の入口から複数の物語に展開することはよくありますので、元の話を切り分けていくのではなく、物語ごとに300字から500字時程度にまとめると読みやすいでしょう。私たちの経験では、1回の話で10話以上の物語ができることもありました。

(4)見出しをつける

新聞の見出しのように、内容を一言で言い表し、興味がもてるような見出 しをつけましょう。内容を過度に説明するような言葉ではなく、「これはど んな話なんだろうか?」と読んでもらえるきっかけになるように工夫しまし ょう。共感を呼ぶ物語を読んでもらえるかどうか、一日前プロジェクトの核 がこの見出し付けとも言えます。

2.物語を拾い出す場面をどう作るか

今年は、『災害被害を軽減する国民運動に関する専門調査会(以下「専門調査会」)』の専門委員同士のつながりで、公民館やPTA、青年会議所、災害ボランティアなどのネットワークを使って、平成16年新潟・福島豪雨災害や新潟県中越地震、福岡県西方沖地震の被災体験から物語を拾い出しましたが、今後も、大きなニュースにならなかった小規模災害や、災害にまで至らなかったケースなどを含め、できるだけ多くの災害経験者から、話を聞き取って多様な物語を残していくことが求められます。

今後、どのように物語を集めていくのかが展開のポイントです。特に聞き出す場面作りや聞き手の確保が重要になります。

一つは、防災や減災に詳しい人を、一日前プロジェクトの聞き手になってもらうことです。例えば、専門調査会の専門委員にも、聞き手役に相応しい人がたくさんいます。一日前プロジェクト実行委員会のような横断的かつ継続的でゆるやかなチームを作るのも有効ではないでしょうか。

また、人から話を聞き出すことを仕事としているマスメディアの記者に協力を得ることも期待されます。災害があった際に、地方紙や地元局が記録集を発行したり、DVDにまとめたりすることは少なくありません。その一環として、一日前プロジェクトへの協力を依頼し、著作権の整理などを行っておくことで、成果を紙面や放送だけでなく、広く国民に共有できる物語としていくことが可能になります。これは、「国民運動」で求められているマスコミの役割を果たすことにもつながるでしょう。

また、今年は行いませんでしたが、物語を作る条件がそろわないときは、すでにある資料などから「物語」を拾い出すこともできるでしょう。ホームページや印刷物を引用するときは、引用元に許可を得ることが必要になりますが、舞子高校ホームページ『語り継ぐ』や、「『仮設』声の写真集」(阪神・淡路大震災「仮設」支援NGO連絡会編)など、人びとの言葉で語られていたり、書かれているものが有効でしょう。阪神大震災だけでなく、多くの災害でさまざまな記録集が作られ、そこにはたくさんの身近な体験談があふれています。人と防災未来センターにも膨大な資料が集められています。これらの資料から、物語を拾い出すことができれば、より多くの人が災害への備えや減災の実践の重要性を実感できるライブラリーになるはずです。

 

□一日前プロジェクトを活用する

一日前プロジェクトで集められた物語の活用の方法は、多様にあると思いますが、この物語を使った簡単なワークショップの案を考えてみました。このような多様な活用方法の事例を集めて提供することも、今後の一日前プロジェクトの課題になるでしょう。

当日の流れ

第1段階「読む」

災害の体験者の物語をていねいに読みます。

事前に4人から7人位のグループに分かれ、自己紹介や雰囲気を柔らかくする簡単なゲームをします。物語を読む前に、実際の災害のビデオなどを見るのも効果的です。

 

第2段階「書く」

物語の中で、驚いたこと、悲しかったこと、うれしかったことなどに下線を引きます。大切だと思ったことは、付箋にメモします。

 

第3段階「話す」

付箋のメモを模造紙に貼り付けていきます。グループのメンバーが順番に付箋を貼り付けますが、同じ内容の付箋があるときは、前の人の付箋に重ねます。このとき、自分でできること、地域ですること、社会全体ですることに分け、みんなで防災対策を話し合いましょう。

 

第4段階「発表する」

グループで防災対策で重要だと思われることを何点か選んで発表します。

 

第5段階「実行する」

自分たちのグループで話し合ったこと、他のグループの発表で参考になったことを、実行しましょう。自分でできることで簡単なこと(簡単な家具の転倒防止)などは、その日のうちに済ませたいですね。

 

 

ここにご紹介した活用の方法は、一つの例に過ぎません。

みなさんのお仲間やコミュニティの中で、学習教材としての活用や回覧板のコラムとして使用するなど、いろいろな活用方法を考え、そして実行してみてください。

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