雲仙岳噴火(平成2年11月~平成8年6月)
足りなかった心構え
~自宅から火砕流 ※ 見物~
(島原市 70代 女性)
うちの居間の戸を開けると、火砕流が見えるんです。ぱっと赤くなったら、電気を消して、真っ黒い空に真っ赤な明かりが下って行くのを、「今、2回目」なんて言いながら、まるで花火見物でもするように見ていたんです。
親戚なんかも、「ちょっと遊びに来ん?このごろはきれいかよ、うちの茶の間から見えるから」と言ってきてね。
実は、火山の知識のある息子から、「そろそろあぶないから、お母さんたちは逃げる用意をしときなさい」って言われていたんですよ。「家族と東京に行くから、避難するときは長崎の家を使っていいよ」とカギまで送ってよこしてね。
でも、わたしは、「何を言っているの?」と、耳を貸しませんでした。火砕流のほんとうの恐ろしさを、想像することもできなかったのです。
※火砕流は、高熱の火山岩塊、火山灰、軽石などが高温の火山ガスとともに山の斜面を流れ下る現象で、流下速度は時速100キロメートルを超えることもあります。