台風情報の高度化について
気象庁大気海洋部気象リスク対策課 アジア太平洋気象防災センター
1 はじめに
気象庁では、台風による災害の防止・軽減に資するため、台風情報の精度の向上及び内容の拡充に努めてきました。一方、近年は、台風情報等の防災気象情報を活用した公共交通機関の計画運休、自治体等によるタイムライン(防災行動計画)の策定等が進んでいます。
こうした社会の変化を踏まえ、利用者のニーズに応じた台風情報のあり方について議論を行うため、令和6年(2024年)9月から令和7年(2025年)7月にかけて台風や防災の専門家、報道関係者等に参加いただき、「台風情報の高度化に関する検討会」を開催しました。
令和7年8月に同検討会の報告書がまとめられましたので、その内容を紹介します。
2 台風情報の改善について(図1)
現在は、24時間以内に台風が発生すると予想した時点から進路予報等の台風情報を提供しています。検討会では、さらに早い時期からの情報として、①台風シーズンを通した発生数の見通し、②1か月先までの間に台風が存在する可能性の高い領域、及び、③1週間先までの間に熱帯低気圧が台風に発達する可能性についての情報を提供する必要性が示されました。これらの情報を提供することによって、住民がより早くから台風に備えることや、事業者が事業計画を策定すること等を支援できるようになります。
また、台風が発生した後の情報では、①現在の5日先までの24時間刻みの進路・強度予報を、6時間刻みに細かくすること、②風の情報については、現状の暴風域・強風域の円表示に加えて、警戒・注意すべき範囲・期間がより適確に伝わる詳細な分布情報を提供すること、③高潮・波浪の情報については、予報期間を5日先まで延長するとともに、台風の位置・風分布等と整合した分布情報を提供すること等が必要とされました。このように、台風の特徴をより細かく伝える情報を提供することによって、住民の主体的な行動や自治体等の防災対応をより一層適確に支援できるようになることが期待されます。
これらの情報改善について、令和12年(2030年)頃に向けて必要な技術開発やシステム整備を進め、順次改善を図るとともに、その後も技術開発を進めることで、更なる精度向上と情報改善を図ることが必要とされました。また、台風情報の改善を支える基盤的な取組として、静止気象衛星や海洋気象観測船の整備等の観測の強化、数値予報技術の開発等の予測技術の向上を推進していく必要性や、先端AI技術の積極的な活用の重要性が示されました。

図1 台風情報の改善について
3 台風情報の解説・普及啓発の充実について(図2)
住民、自治体等の防災関係機関、航空関係機関や指定公共機関、各種事業者等に早めの備えを促すとともに、様々な事前対策や防災対応がより効果的に行われるためには、情報自体の改善に加えて、利用者に応じた解説や、情報の活用方法についての普及啓発を充実させることも重要です。
解説については、台風発生前からの台風の見通しに関する情報を活用した様々な利用者へのより早くからの情報共有・解説や、台風発生後のより詳細で分かりやすい解説、それらに資するコンテンツの充実・整理の必要性が示されました。
また、普及啓発については、住民に向けて情報の見方や利用方法を様々な媒体を通じてより分かりやすい形で提供することや、専門家に向けて情報の詳細な仕様や精度等を提供すること、国に加えて報道機関や気象予報士等の様々な「担い手」による普及啓発活動を推進していく必要性が示されました。

図2 台風情報の解説・普及啓発の充実について
4 おわりに
気象庁では、台風情報がこれまで以上に社会の防災・経済活動において有効に活用されるものとなるよう、報告書で示された台風情報の高度化に向けた取組を着実に進めてまいります。
(台風情報の高度化に関する検討会)
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/shingikai/kentoukai/taifuu/taifuu_kentoukai.html
