防災リーダーと地域の輪 第58回



地区防災計画作りをきっかけに地域の課題と避難行動を共有
愛知県西尾市上羽角町自主防災会会長の大竹俊光さんと前会長の細川和好さん

防災リーダーと地域の輪

 愛知県西三河地方に位置する西尾市の東部、上羽角町かみはすみちょうは東側の羽角山と西側の広田川に挟まれた低地に立地しています。上羽角地区全体が矢作川やはぎがわ水系の洪水浸水想定区域になっているほか、南の丘陵地には土砂災害(特別)警戒区域が点在する等の災害リスクを抱える中、平成16年(2004年)に自主防災組織が立ち上がり、年1回の自主防災訓練を中心に活動してきました。

 西尾市では、上羽角町の南側の丘陵地にある株式会社デンソー西尾製作所と災害協定を締結しており、大規模災害時の避難場所に指定しています。こうした背景から上羽角地区では「災害時にはデンソーに避難する」ことが認識されていましたが、一方で「どのように避難するのか」という具体的な避難行動は共有されていませんでした。

 令和6年(2024年)に自主防災会長を務めた細川和好さんは、こうした状況を危惧し、市の危機管理課による自主防災組織の支援制度を活用し、内閣府のモデル事業として地区防災計画作りに着手しました。

 「この地区では、80年前の三河地震以降特に大きな災害がなかったことから、住民の多くが被害をイメージできずにいました。それが、ワークショップで名古屋大学の田中隆文教授のお話を聞き、「矢作川の水がこの地区までくる」と知り、住民の認識が変わりました。令和6年(2024年)の自主防災訓練では、デンソー西尾製作所までの避難を実際に行いました。従来避難するルートが人により異なっていたのですが、通用門等の通れない場所もあるため、正式なルートを確認しました」(細川さん)。

 上羽角町自主防災会は、令和7年(2025年)10月現在77世帯で構成され、地区単位で12の組を編成しています。従来の避難訓練では、全員が広場に集合していましたが、丘陵地沿いの地区の住民は、避難場所であるデンソー西尾製作所とは逆方向となることから、避難の際には1カ所に集合せず組長が引率する形に変更されています。

 地区防災計画は、令和7年(2025年)の自主防災会長を務める大竹俊光さんに引き継がれ、現在も課題を反映する形でブラッシュアップされています。

 「組長は持ち回り制なので、高齢者が組長になるケースもあります。その場合、引率は厳しいので、別途組の中に「防災リーダー」を置くことで避難体制を二重化しました。また、自主防災訓練では必ず参加者にアンケートを行っており、出された意見をフィードバックするようにしています。今後については、せっかく作った地区防災計画なので、住民にしっかり共有する取組を行っていきたいと考えています」(大竹さん)。

ワークショップの様子(西尾市提供)

ワークショップの様子(西尾市提供)

自主防災訓練の様子(上羽角町自主防災会提供)
自主防災訓練の様子(上羽角町自主防災会提供)

自主防災訓練の様子(上羽角町自主防災会提供)



所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.