不屈の大地 Build Back Betterの軌跡



平成27年(2015)9月 関東・東北豪雨災害からの復興

 平成27年9月9~11日にかけて、関東から東北にかけて線状降水帯の発生を伴う豪雨となり、鬼怒川上流の栃木県日光市の五十里観測所で24時間雨量が551mmに達する等、多くの観測所で観測開始以来最多雨量を記録しました。

 これに伴い、鬼怒川は中流部では河川の流下能力を上回る流量となり、溢水が相次ぎました。9月10日12:50には、常総市三坂町付近で堤防が決壊、常総市内は広域にわたり浸水し、甚大な被害が発生しました。

 災害を受けて、国、茨城県、鬼怒川下流部の7つの市町が主体となって、「鬼怒川緊急対策プロジェクト」が立ち上がりました。三坂町の破堤箇所については、最優先で堤防復旧工事が行われ、2週間で応急復旧工事が完了、翌年5月には梅雨の出水期に間に合う形でより強固な本復旧堤防が完成しました。

 このプロジェクトは、河道の掘削や堤防の強化といったハード面の対策だけでなく、ソフト対策も含めて災害に備える「水防災意識社会」の再構築を目指すものです。そのソフト対策の一つとして推奨されたのが、住民自らが避難行動を時系列で整理する「マイ・タイムライン」です。常総市では住民が自主的にマイ・タイムラインを作成し、減災への新しい取組の萌芽となりました。

参考文献
関東地方整備局下館河川事務所,2015,『三坂地区堤防決壊に係わる補足説明資料』
水害時の避難・応急対策検討ワーキンググループ,2015,『平成27年9月関東・東北豪雨災害の概要』
常総市水害対策検証委員会,2016,『平成27年常総市鬼怒川水害対応に関する検証報告書』
関東地方整備局下館河川事務所,2021,『鬼怒川緊急対策プロジェクト』

上三坂町の破堤地点。決壊翌日の9月12日の様子(国土地理院撮影動画より)

上三坂町の破堤地点。決壊翌日の9月12日の様子(国土地理院撮影動画より)

上三坂町の堤防決壊箇所付近の被害状況(提供:常総市)

上三坂町の堤防決壊箇所付近の被害状況(提供:常総市)

復旧した堤防の天端。表面は舗装され、法肩にはブロックが施され強化されている(令和7年(2025)年9月撮影)

復旧した堤防の天端。表面は舗装され、法肩にはブロックが施され強化されている(令和7年(2025)年9月撮影)

堤防の裏法。法尻には浸透した水を排水するドレーンが設置されている(令和7年(2025)年9月撮影)

堤防の裏法。法尻には浸透した水を排水するドレーンが設置されている(令和7年(2025)年9月撮影)


 常総市三坂町の堤防決壊現場には、水害を語り継ぐため「決壊の跡」と刻まれた記念碑が建てられています。碑の裏側には、上三坂地区住民一同の名で「私たちは、水害の記憶と被災者、被災地の思いを後世に伝え、このような悲劇を繰り返さないため記念碑を建立するものである。」と記されています。すぐ横には「鬼怒川緊急対策プロジェクト」完成記念の看板のほか、令和3年(2021年)7月に東京2020オリンピックの聖火リレーがこの地で実施され、復興五輪の象徴の場所となったことを記念するモニュメントも設置されています。
堤防上に建てられた「決壊の跡」。水害を後世に語り継ぐ(令和7年(2025)年9月撮影)

堤防上に建てられた「決壊の跡」。水害を後世に語り継ぐ(令和7年(2025)年9月撮影)


表紙写真

 破堤から復旧した常総市上三坂町付近の鬼怒川の堤防。築堤はかさ上げ・拡幅されているほか、天端舗装や浸透した水を排水する裏法尻部のドレーン工が施される等、決壊前より強固なつくりとなっています。(提供:国土交通省関東地方整備局下館河川事務所)

表紙写真

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