地区の11のマンションを束ねる地区防災計画の実現
兵庫県神戸市港島地区防災対策委員会

神戸市中央区の人工島「ポートアイランド」。港湾機能の他、住宅や商業施設、教育施設等も含む海上都市として街開きが行われたのは1981年のことでした。
ポートアイランドに建つ住宅は、全て集合住宅(マンション)です。地区内にある11のマンションは、個々に管理組合や自治会組織をもち、2019年にそれらを束ねる形で発足したのが港島地区防災対策委員会です。
同委員会では、従来各マンション単位だった防災対策や訓練等の活動をまとめ、2020年に「港島防災福祉コミュニティ地域おたすけガイド」(港島地区防災計画書)を策定し、現在では、毎年合同で地区総合防災訓練を実施しています。
「毎月開催される委員会には、各マンションの防災担当のほか、消防署や市の福祉担当者、避難所担当者、そして、兵庫県立大学の澤田雅浩先生にも参加いただいて様々な議論をしています。例えば、各マンションが防災への取組を報告し、それに対して、澤田先生に優れている点を「まねっこポイント」として挙げてもらい、「マンションカルテ」として整理して共有しています。」と話すのは、同委員会の会長を務める高柳章二さんです。
高柳さんは、50歳で阪神・淡路大震災を経験しています。地区内では建物の倒壊等はなく、被害は一部損壊にとどまったものの、避難所は過密状態で感染症が流行する等、劣悪な環境だったといいます。こうした経緯を基に、地区防災計画では、建物に被害がなければ、自宅避難を原則としています。
「南海トラフ地震では、4メートルの津波が想定されていますが、ポートアイランドの住居は、底上げがされており、いざという時は、上層階への避難も可能です。自宅避難であれば、プライバシーの確保はもちろん、日常のコミュニティも維持できます。一方で、大規模災害となれば、外からの援助も時間がかかるので、事前の備えとして、10日分程度の水や食料、非常用トイレ袋の備蓄をお願いしています。また、現在地区の公園の地下に大容量貯水槽が整備されており、給水訓練を行う等その周知に力を入れています。」(高柳さん)
街開きから40年以上が経過し、高齢化も大きな問題となっています。地区では、高齢者の見守りや日常の交流にも力を入れているほか、中学生を対象に防災ジュニアチームを結成する等、コミュニティの若返りも図っています。
「子どもたちは、覚えもよく頼もしいです。世代を超えて地域の安心安全が実現できればいいと考えています。」(高柳さん)
※写真は全て港島地区防災対策委員会提供

毎月開催されている委員会の様子

地区総合防災訓練の様子

防災ジュニアチームの訓練の様子