防災リーダーと地域の輪 第53回



地域ぐるみの防災教育で津波から身を守れる子どもたちを育てる
高知県四万十町 興津地区自主防災組織・地域ぐるみ学校安全体制整備推進委員会

防災リーダーと地域の輪

 高知県南西部に位置する四万十町の役場がある窪川くぼかわ地区から車で約30分、太平洋に突き出した興津おきつ岬に、約700人が暮らす興津地区があります。南海トラフ地震が発生すれば、約15分で津波が襲来するとされ、地区への出入りは、狭隘きょうあいで険しい興津峠を越える1本道のみで、災害となれば孤立が予想される地域です。

 こうした地理的条件の下、地区では平成13年(2001年)から自主防災組織が立ち上がり、会長の船村覚さんを中心に、津波から身を守るための熱心な防災活動を行ってきました。高知大学の岡村眞教授(当時)の協力の下、積極的に勉強会を実施し、平成16年(2004年)には興津地区の避難計画を策定、4カ所の避難広場を設置し、津波避難タワーも建てられました。

 「当時は、現在のような補助事業がなく、県や町と掛け合いながら様々な方法で予算を捻出し」(船村さん)、平成23年(2011年)の東日本大震災以前に3基の津波タワーが整備されている等、全国的に見ても先進的な取組が実施されていました(その後、津波想定の変更を受けてタワーも高く改修されています。)。

 平成17年(2005年)には、地域の小中学校を巻き込む形で地域ぐるみの防災活動が始まりました。学校で地域と連携した防災教育を実施することで、子どもたちが津波から身を守る防災力を養おうという取組です。

 「防災マップづくりをはじめ、バスを借りて他地区へ勉強会に出かけたり、炊き出し訓練をしたり、電柱に標高表示をつけたりといった取組のほか、避難訓練はシチュエーションを変えながら実施しています。令和4年(2022年)のトンガ噴火による津波の際も、実際に避難した子どもたちがいる等成果が表れています。」(船村さん)。

 こうした活動を継続していることで、地区では防災意識が高い子どもたちが育ち続けています。優れた防災教育を顕彰する「ぼうさい甲子園」では、興津小学校が令和5年(2023年)の「ぼうさい大賞」に選ばれました。

 残念なことに、令和5年度をもって小学校も廃校となります。しかし、地区としての防災活動が終わるわけではありません。

 「京都大学防災研究所の矢守克也教授の研究室の支援もあり、3年前に廃校になった中学校には、『防災ミュージアム』が設置され、先日も卒業生たちが集まってぼうさい同窓会が行われました。地域ぐるみの防災活動は、これからも途絶えることはありません。」(船村さん)。

子どもたちによる防災マップづくり

子どもたちによる防災マップづくり

炊き出し訓練の様子

炊き出し訓練の様子



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内閣府政策統括官(防災担当)

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