平成23年(2011年)・岩手県 東日本大震災からの復興

平成23年(2011年)3月11日、東北地方太平洋沖地震の発生により、東日本の太平洋岸には大津波が押し寄せ、岩手県の陸前高田市では1,750人以上が犠牲となり(行方不明者含む。)、3,800棟以上が全壊する甚大な被害を記録しました。
地域の重要ななりわいの一つである水産業も、大きなダメージを受けました。津波により市内の12の漁港全てが損壊や沈下等の被害を受けたことに加え、施設、漁船、漁具等も失われ、水産加工施設も全壊もしくは流失しました。
市では、国、県及び漁港との連携の下、復旧・復興に着手し、漁船、水産施設、養殖筏等の復旧は平成26(2014)年度をもって完了しました。併せて進められていた高さ最大12.5mの防潮堤の建設も令和3(2021)年度には竣工し、これをもって全ての漁港施設が復旧しました。
漁港は、防潮堤の外側に位置し、自動閉鎖式の陸閘で隔てられています。陸閘は津波来襲時にJアラートの信号を受信して、現地で人が操作することなく安全かつ迅速・確実に自動で閉鎖されるほか、防潮堤には、避難用の階段も設置されています。また長部漁港では、水産加工団地が嵩上げ復旧されたほか、広田、長部及び脇の沢漁港では、漁港背後地等を活用した水産関連業務団地の整備も進められています。
陸前高田市では、こうした漁港インフラの整備だけでなく、「陸前高田市水産業振興計画」を策定する等、水産業活性化のための様々な施策も実施しています。同市では、従来ワカメ、カキ等広田湾産ブランドが高い評価を得ていましたが、これらに加えて一部の漁業者が、高級食材であるエゾイシガケガイの養殖を成功させる等、新しいブランド品の開発も続けられており、付加価値が高く消費者ニーズに対応した水産加工品の開発を推進することで、「将来へ希望が持てる水産業」の実現を目指しています。


震災発生直後(上)と復興後の長部漁港付近の航空写真

高さ12.5mの防潮堤には自動閉鎖システムを備えた陸閘が設置されている。

長部漁港の背後地を活用して整備された水産関連業務団地。奥には防潮堤が見える。
![]() (高田松原津波復興祈念公園の国営追悼・記念施設) |
広田湾に臨む高田松原の一角に、東日本大震災による犠牲者への追悼と鎮魂、震災の記憶・教訓の伝承を目的とした高田松原津波復興祈念公園が設置されています。公園内には国営追悼・記念施設として東日本大震災津波伝承館や「献花の場」、「海を望む場」が整備されているほか、壊滅した7万本の松の中で唯一残った「奇跡の一本松」、「旧道の駅タピック45」をはじめとした震災遺構も見学可能で、道の駅高田松原も併設されています。 |
表紙写真
陸前高田市の復興した長部漁港及び広田漁港は、防潮堤で隔てられており、陸閘を通じて行き来ができるように防災力が強化されています。広田湾ワカメやカキ、ホタテ等の養殖が盛んで、消費者から高い評価を受けています。

Build Back Betterとは
「Build Back Better(より良い復興)」 とは、2015年3月に宮城県仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」の成果文書である「仙台防災枠組」の中に示された、災害復興段階における抜本的な災害予防策を実施するための考え方です。
本シリーズでは、災害が発生した国内外の事例を紹介し、過去の災害を機により良い街づくり、国土づくりを行った姿を紹介いたします。