不屈の大地 Build Back Betterの軌跡



「平成23年7月新潟・福島豪雨」からの復興 平成23(2011)年・福島県

地図

 平成23(2011)年7月、新潟県から福島県の会津地方にかけての地域を集中豪雨が襲いました。福島県会津若松市の会津若松駅と新潟県魚沼市の小出駅を結ぶJR只見ただみ線は、洪水による橋梁の流失や土砂崩れによる路盤の崩壊など、甚大な被害を受けました。とりわけ会津川口駅~只見駅間は3カ所の橋梁が流失するなど損傷が大きく、利用者数の減少が続いていることも相まって当初復旧工事が行われず、只見線は廃線の危機に直面することになりました。福島県と沿線自治体はJR東日本に復旧・存続を要請、検討の結果、JR東日本単独での復旧は困難との判断から、福島県と沿線市町が土地や施設を保有し、JR東日本が運行を行う上下分離方式を採用することで復旧が決まりました。

 そして被災から11年を経た令和4年10月、ついに只見線は全線での運転を再開しました。地域の住民たちにとっては待ちに待った開通であり、沿線のあちらこちらに「おかえり只見線」と書かれたのぼりがひるがえり、列車に向かって手を振る人たちの姿も見られました。

 復旧にあたってはさまざまな安全対策が施されました。第六只見川橋梁では、只見川の増水とそれに伴う河床洗掘かしょうせんくつ(水の流れにより、河床(河川の底)の土砂が洗い流されること)により橋脚、トラス桁および桁橋が流失したことから、建設時よりも想定水位を上げたうえで、橋脚の位置を洗堀の影響を受けない位置へ移動したほか、橋桁を上路トラスから水位上昇や、洪水による流下物などの影響を受けにくい下路トラスに変更しています。第七只見川橋梁でも同様の措置が取られたほか、第八只見川橋梁においても、橋梁改良や盛土補強などが施されました。

 只見線はSNSなどを通じて海外でも人気が高まり、外国人旅行者が多く訪れるようになりました。地元の飲食店や宿泊施設にもたらされる経済効果は小さくなく、存続・復旧は地域の悲願でもありました。復活した只見線の姿はJR肥薩ひさつ線やJR米坂よねざか線など、復旧を待つ全国の「被災ローカル線」にも大きな希望を与えることになるはずです。

本名ダムをバックに第六只見川橋梁を渡る只見線の列車

本名ダムをバックに第六只見川橋梁を渡る只見線の列車

被災直後の第六只見川橋梁(ダム側から撮影)。橋脚やトラス桁、桁橋が流失している(提供:福島県金山町)

被災直後の第六只見川橋梁(ダム側から撮影)。橋脚やトラス桁、桁橋が流失している(提供:福島県金山町)

只見駅で発車を待つ列車

只見駅で発車を待つ列車

沿線のそこここで見られた「おかえり只見線」ののぼり

沿線のそこここで見られた「おかえり只見線」ののぼり

水元公園は防災公園としての役割を果たす。広大な中央広場は発災時集合場所となるほか、ヘリポート、防災パーゴラやかまどベンチなども備える。



只見駅に設置された只見線ギャラリー

表紙の写真

紅葉をバックに第八只見川橋梁を渡る只見線の列車。復旧工事に4年を要したこの橋梁は「只見線鉄道施設群」の1つとして土木学会選奨土木遺産に認定されています。

表紙絵

Build Back Betterとは

「Build Back Better(より良い復興)」 とは、2015年3月に宮城県仙台市で開催された「第3回国連防災世界会議」の成果文書である「仙台防災枠組」の中に示された、災害復興段階における抜本的な災害予防策を実施するための考え方です。

本シリーズでは、災害が発生した国内外の事例を紹介し、過去の災害を機により良い街づくり、国土づくりを行った姿を紹介いたします。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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