特集 熊本地震から5年
~ 「創造的復興」の実現で新しい熊本へ~



特集 熊本地震から5年

余震がまさかの本震に

 平成28年4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生し、県内益城町で震度7の揺れを記録しました。その後も余震が続く中、4月16日午前1時25分には最初の地震よりも大きいマグニチュード7.3の地震が発生、益城町と西原村で震度7を記録したほか、熊本市を含む広い範囲が強い揺れに見舞われました。気象庁はこの一連の地震を「平成28年(2016年)熊本地震」と命名しています。

 大きな地震が発生すると、震源付近で地震活動が活発化します。従来は最初に発生した大きな地震を「本震」、その後に起こる地震を「余震」と呼んでいましたが、熊本地震ではこの考え方は通用しませんでした。本震と思われていた最初の地震の後にそれ以上の大きな地震が発生したのです。

 震度7の地震が28時間内に2回発生したことは観測史上初めてでした。熊本地震がきっかけとなり、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)は「余震」という言い方はせず、最初の大地震と「同程度の地震」への注意を呼びかけることを基本とすることを発表しました。熊本地震は従来の地震の常識を大きく覆し、日本の地震防災に多大な影響をもたらしたのです。

 地震による被害も甚大でした。熊本市や益城町、西原村、南阿蘇村などを中心に多数の家屋倒壊や土砂災害が発生し、死者は273人(関連死含む)、住宅被害は19万8000棟以上にも上りました。また、道路や鉄道など交通は寸断され、停電やガスの停止、断水、通信断絶などインフラにも大きなダメージを与えました。

 熊本県は「被災者の痛みを最小化すること」、「元の姿に戻すだけではない創造的な復興を目指すこと」、そして「復旧・復興を熊本のさらなる発展につなげること」という「復旧・復興の3原則」を地震の直後に表明しました。さらに平成28年8月には「創造的復興に向けた4つの柱」からなる復旧・復興プランを示し、歩みを進めてきました。それから5年、熊本はどのような復興の道をたどっているのでしょうか。


住まいと産業の再建

 創造的復興の中でも特に重要だったのが住まいの再建です。仮設住宅の入居者数はピーク時には2万225世帯・4万7800人を数えました。熊本県では自宅再建希望者に向けて借入の利子に対する助成や、賃貸住宅等への入居の際の初期費用や転居費用の助成などを実施したほか、令和2年3月末には災害公営住宅(12市町村で1715戸)がすべて完成、令和3年9月末時点で99.7%の被災者の住まいの再建を達成しています。

 生業の再建も同時に進められました。農業については令和3年3月末に営農再開100%を達成しましたが、こちらも元の姿に戻すだけでなく、創造的復興の一環として農地の大区画化などの基盤整備も実施しています。企業の事業再建についても、被災した中小企業等の施設や設備の復旧・整備、商業機能の復旧促進を支援するグループ補助金(※複数の中小企業がグループを構成して復興事業計画を作成し、申請。認定を受けるとグループに参加する企業が支援を受けられる制度)を交付するなど、積極的な支援策の実施により令和3年9月末時点で99.7%の復旧が完了しています。

整備された災害公営住宅(上が大津町、下が西原町)
整備された災害公営住宅(上が大津町、下が西原町)

整備された災害公営住宅(上が大津町、下が西原町)

阿蘇へのアクセスの回復

 交通インフラの復旧も急務でした。とりわけ重要な観光地である阿蘇方面へのアクセスルートが寸断されていたことは、「観光立県」を推進する熊本にとって深刻でした。

 地震に伴う大規模な斜面崩壊により阿蘇市・大分方面へ向かうJR豊肥本線や国道57号が埋没し、南阿蘇村・高森町へ通じる国道325号も黒川を渡る阿蘇大橋の崩落で通行不能になったことに加え、南阿蘇村道栃木・立野線の阿蘇長陽大橋の橋台が崩落したほか、南阿蘇鉄道も被災して不通となっており、観光客が阿蘇方面へアクセスするにあたり、大きな障害となっていました。

 復旧工事は急ピッチで進められ、まず平成29年8月に阿蘇長陽大橋ルートが仮復旧しました。その後令和2年8月にJR豊肥本線が全線で運転を再開、同年10月には従来の国道57号の復旧に加え、阿蘇方面への新たなアクセスとして自動車専用道路の国道57号北側復旧ルートが開通、そして令和3年3月に落橋した阿蘇大橋に代わる国道325号の新阿蘇大橋が開通して阿蘇山方面へのアクセスは大幅に改善しました(※新阿蘇大橋の開通に伴い仮復旧だった阿蘇長陽大橋ルートは本格復旧工事のため令和4年3月まで通行止め)。なお、南阿蘇鉄道は立野~中松間が依然として不通ですが、令和5年夏ごろまでに全線復旧の予定です。

 観光客の足となる交通インフラ復旧のタイミングが、新型コロナウイルス感染症の流行による人流抑制と重なってしまったことは不運でしたが、本格的に観光客を迎え入れる態勢は整いつつあります。

高台に整備された県営災害公営住宅(陸前高田市)

高台に整備された県営災害公営住宅(陸前高田市)



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