防災の動き



3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「Project PLATEAUプラトー」における、防災に関する取組の紹介
国土交通省都市局都市政策課

1 3D都市モデルの概要

 国土交通省が2020年度からスタートしたProject PLATEAUでは、スマートシティをはじめとするまちづくり分野でのDXを進めるため、3D都市モデルのデータ整備、ユースケース開発、3D都市モデルの整備・利活用ムーブメントの惹起とオープンデータ化に取り組んでいます。2020年度のPLATEAUでは、全国56都市を対象に、約10,000㎢という世界的にも前例のない規模で3D都市モデルを整備し、これを活用して40以上の実証実験を展開してきました。また、整備した3D都市モデルデータについては、G空間情報センター(https://www.geospatial.jp/gp_front/)より提供するとともに、特設ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/plateau/)上でビューアー「PLATEAU VIEW」を通じて提供し、属性情報やユースケース(人流・環境など)のデータの重畳など、手軽な参照を可能としています。また、本プロジェクトの特徴として、データ形式に3D地理空間情報のためのデータ交換標準フォーマットである「CityGML」を採用し、都市の幾何形状「ジオメトリ」に加え、より高度な分析に活用できるよう、属性により切り分けた建築物等の各種地物の様々な意味に関するデータ「セマンティクス」を統合したモデルとなっています。この属性情報には、都市計画基本図等の都市の図形情報や形状情報、都市計画基礎調査等によって取得された建物・土地の利用現況に加え、洪水、津波、高潮等の災害リスク情報等が含まれています。

「Project PLATEAU」の特設ウェブサイト
「Project PLATEAU」の特設ウェブサイト

3D都市モデル新宿駅周辺
3D都市モデル新宿駅周辺。

2 防災をテーマにしたユースケースの開発

 3D都市モデルの多様な活用可能性を探るため、データ整備にあわせて、「まちづくり」「防災」「地域活性化・観光」等の各種実証実験やフィージビリティスタディを全国で44件実施しました。ここでは「防災」について紹介します。

 近年、令和元年東日本台風をはじめ、豪雨災害により甚大な被害がもたらされています。激甚化・頻発化する自然災害に対しては、平時から災害リスクを認識した上で、河川氾濫時の危険箇所や避難場所についての正確な情報を提供することがなにより重要であり、各市町村において「ハザードマップ」の周知に向けた取組が進められています。一方で、現在のハザードマップは、二次元の地形図に洪水浸水想定区域を重ねる形で作成されており、地図に慣れていない子どもや地域を知らない旅行者などにはわかりづらい場合があるため、浸水のリスク等をより視覚的にわかりやすく発信することが重要となっています。

 そこで、PLATEAUでは、3D都市モデルの三次元(高さ)等の特性を生かして災害ハザード情報をわかりやすく表示する取組を実施し、具体的には、全国48都市を対象に、洪水浸水想定区域図等を3D化し3D都市モデルに重ね合わせることで、災害ハザード情報をより直感的・視覚的に理解しやすい形で表現しました。

 例えば福島県郡山市では、都市計画基礎調査等により把握していた「建物高さ」、「地上階数」、「浸水深」、「構造種別」、「家屋倒壊等氾濫想定区域内木造建物」を建物属性として活用しました。浸水によって流出するリスクが懸念される木造建物を除いた上で、浸水位と建物の高さ及び階数を比較し、浸水が最大値となっても最上階が浸水しない建物を抽出して、建物の最上階へ緊急的に垂直避難が可能と判定するアルゴリズムを作成し、郡山駅周辺等で垂直避難可能なビルを抽出・可視化することで、市の防災政策に生かす取組など、3D都市モデルを用いた防災対策の高度化を図る取組への活用が期待されています。

 さらに、鳥取県鳥取市では、国土地理院の「浸水ナビ」(地点別浸水シミュレーション検索システム)で提供される、破堤点別で時系列に従って徐々に洪水浸水範囲が拡大していくシミュレーションデータを活用し、洪水による浸水の広がりにあわせて道路等が徐々に使えなくなっていく様子を3D都市モデル上に可視化しています。破堤から何分後に自宅や避難所に洪水が押し寄せる可能性があるのか、いつまでに避難しなければならないのか、などをよりビジュアルに検討することが可能となりました。鳥取市ではこれらの結果を参考に、住民の防災意識啓発を図るとともに、住民自らが防災対策や避難計画を考える場をつくり、防災行動につなげていくことを目指しています。

福島県郡山市
福島県郡山市

鳥取県鳥取市
鳥取県鳥取市

3 さいごに

 PLATEAUの取組はまだ始まって間もない黎明期にあり、今後は3D都市モデルを全国に展開し、スマートシティをはじめとするまちづくりのDX基盤としての役割を果たしていく必要があります。さらに、この取組とあわせ、データ整備の効率化・高度化、ユースケース開発の深化、より緻密なスケールの地物(街路空間等)のデータ仕様の定義等にも取り組んでいきます。また、災害分野においても引き続き、これまでの知見に基づいた3D都市モデルの活用方法を全国に広げていくことに加え、自治体と連携し、これまでの取組の一層の深化を図っていく予定です。3D都市モデルの整備・更新・活用のエコシステムの構築に向け、まちづくりに関わる官民を問わない多様なプレイヤーが共に取り組むことを期待しています。

●【特設ウェブサイト】

▶https://www.mlit.go.jp/plateau/ QRコード



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