気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館/けせんぬま震災伝承ネットワーク 気仙沼市立階上中学校
〈内閣府(防災担当)普及啓発・連携担当〉
東日本大震災の発災から10年が経過し、被災地の復興は着実に進んでいます。そのいっぽうで、震災の記憶が少しずつ薄れ、重要な教訓が風化してしまうことも懸念されています。こうした風化を防ぎ、東日本大震災から得られた実情と教訓を伝える役割を果たしているのが、被災地各地に整備された震災伝承施設です。
宮城県気仙沼市にある「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」もそのひとつです。被災直後の姿をとどめたまま保存された震災遺構(気仙沼向洋高校旧校舎等)と一体になった伝承施設で、映像や写真パネルにより被災の様子を伝えるほか、震災遺構の内部を観覧することで、リアルな津波の威力を体感することができ、訪れた人々の防災意識の向上に寄与する施設となっています。
この伝承館では見学だけでなく、さまざまな防災・減災体験プログラムが用意されています。そのひとつが予約制の語り部によるガイドですが、驚かされるのは、多くの中学生・高校生が語り部として活動していることです。平成31年3月に伝承館がオープンしたときには、語り部ガイドを運営する「けせんぬま震災伝承ネットワーク」に登録されている語り部は大人だけでした。しかしその後近隣にある気仙沼市立階はし上かみ中学校の生徒たちが「自分たちもやってみたい、挑戦したい」と有志が集まり、中学生による語り部活動が始まり、やがてその輪は近隣の高校へと波及していきました。
訪れる人たちは生徒たちの話を真剣に聞き、生徒たちはその真剣さに応えようとさらに勉強を重ねました。結果として生徒たちの家族の中でも防災の話を頻繁にするようになり、それまであまり地元の人が訪れることがなかった伝承館に、生徒たちの家族がやってくるようになりました。生徒たちの語り部活動は来訪者だけでなく、地域の防災意識も必然的に高めることになったのです。(続)
中学生による語り部活動の様子