防災リーダーと地域の輪 第41回



根新田町内会
〈内閣府(防災担当)普及啓発・連携担当〉

防災リーダーと地域の輪 第41回

茨城県常総市の南東部に位置する根新田地区は、鬼怒川と千代田堀川に挟まれた田園地帯で、根新田町内会(会員数約100世帯)を中心に、お祭り、スポーツ、防犯・防災などの地域活動が活発に行われています。

根新田町内会は、活動を発信するホームページ「わがまちねしんでん」を平成26年8月に開設し、その2ヶ月後、事前登録された携帯電話にショートメール(SMS)で情報を一斉送信するシステム「ねしんでんほっとメール」の運用を始めました。

「SMSは、雨による行事の中止といった連絡を電話で行う手間を減らせるだけではなく、災害が発生した時の緊急連絡にも役立てられると考えました。多くの高齢者はスマートフォンよりも携帯電話を使っているので、SMSが一番良い伝達方法でした」と根新田町内会事務局長の須賀英雄さんは説明します。

ねしんでんほっとメールの運用開始から約1年後の平成27年9月、「関東・東北豪雨災害」が発生しました。鬼怒川の堤防が決壊し、常総市の約3分の1が浸水しました。死者2名、負傷者40名以上、全半壊家屋5,000棟以上という甚大な被害が発生し、ヘリコプターや救命ボートなどで救助された人は4,200名以上にのぼりました。

平成27年9月の「関東・東北豪雨災害」で浸水した根新田地区

平成27年9月の「関東・東北豪雨災害」で浸水した根新田地区

この時、根新田町内会はSMSによる鬼怒川の水位の情報や避難喚起とともに、隣近所を訪れて避難の呼びかけを行いました。その結果、多くの住民が浸水前に避難し、地区のほとんどが浸水したにもかかわらず、市内の他の地域と比べ、救助された人の割合は非常に低くなりました。

「地区の住民からは、『SMSの情報は心強かった』、『SMSで地区が一つになっていると感じた』と非常に感謝されました。水が引いた後も、道路、支援物資、災害ボランティアなどの情報を発信し続けました」と須賀さんは話します。

関東・東北豪雨災害後、町内会は様々な防災活動を始めました。春と秋に防災訓練を実施し、SMSによる情報伝達、救命救急、消火、安否確認などを行なっています。

例えば、安否確認の訓練では、「無事です」と書かれたタオルを玄関先に掲げて家族の安全を周囲に知らせてから、班ごとに隣近所の安全を確認し、その結果を公民館に開設した災害対策本部に連絡するという一連の行動を実践しています。

また、平成29年に「マイ・タイムライン」を導入しました。マイ・タイムラインは、台風などによる水害に備えるため、台風が接近する3日程度前から自分自身や家族が行う防災行動を時系列で整理したものです。町内会は、国土交通省や常総市などの支援を受けワークショップを開催、70世帯以上がそれぞれのマイ・タイムラインを作成しました。

この他、千代田堀川を24時間監視する防災用ライブカメラを設置し、その映像を町内会のホームページで誰もが見られるようにしました。また、「災害被害者をゼロにする」をスローガンに、防災組織の編成、災害時の行動、防災訓練の内容などをまとめた「自主防災基本計画」を作成しました。

根新田町内会は、他の自治会や自治体からの視察の受け入れ、講演、講習会なども積極的に実施しています。根新田町内会をモデルに、SMS一斉送信システムを導入した自治会は全国で15以上にのぼっています。

こうした活動が評価され、根新田町内会は平成31年3月に「第23回防災まちづくり大賞」(総務大臣賞)、令和元年9月に「令和元年防災功労者内閣総理大臣表彰」を受賞しました。

令和元年10月の台風第19号では、鬼怒川が氾濫危険水位に達し、根新田地区を含む鬼怒川沿いの地域に避難指示が発令されました。この時も、根新田町内会はSMSを通じて、鬼怒川の水位や避難の情報を発信しました。地区は浸水被害を受けることはありませんでしたが、SMSの情報は住民が避難行動を判断する上で、大きな助けとなりました。

「正確な情報をもとに、マイ・タイムラインを実行すれば、台風や大雨から逃げ遅れる人をゼロにすることは可能です。今後も平常時の防災活動を継続し、災害時にしっかりと行動できるようにしていきたいです」と須賀さんは話します。

根新田町内会がSMS で発信した災害情報(左) 救援物資の配布訓練(右)

根新田町内会がSMS で発信した災害情報(左) 救援物資の配布訓練(右)

安否確認訓練で掲げられた「無事ですタオル」(左) 地区の各班から集めた安否確認情報を集計する災害対策本部(右)

安否確認訓練で掲げられた「無事ですタオル」(左) 地区の各班から集めた安否確認情報を集計する災害対策本部(右)


(画像提供:すべて 根新田町内会)



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