防災の動き

福祉施設から変える防災

(一社)福祉防災コミュニティ協会は、平成28年11月25日に産声を上げた若い協会です。被災現場に行くと、高齢者や障がい者が非常に厳しい状態になってしまいます。そして、支援者である福祉施設の職員も被災しながらの支援活動で大変な思いをしています。事前に、福祉施設の職員が効果的に災害対応を学び、計画やマニュアルを作成すれば、災害時の困難さは相当程度軽減されると考え、本協会(会長 浅野史郎 神奈川大学特別招聘教授(元 宮城県知事))を設立しました。

災害福祉の研究

私たちは、以前から、災害時の福祉を研究、実践してきましたが、東日本大震災発生後、平成24年度から26年度の厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)「障害福祉施設における災害対応力向上策に関する研究」で深く研究することができました。

その成果として、知的・発達障害福祉施設での災害対応および事業継続に関するヒアリングデータを内容分析し、入所・通所・相談支援業務などの災害対応の困難さと、その対応を抽出し、福祉施設の事業継続計画(BCP)の優先順位を検討しました。また、震災経験のない福祉施設関係者のイマジネーション力を向上させるエピソード集・教材を作成しました。さらに、東北3県をはじめ、横浜市、名古屋市、世田谷区、江東区、練馬区などの障害福祉施設を対象として、こうした教材を用いた事業継続計画策定のためのワークショップを実施し、得られた知見を踏まえて、研修プログラムを開発し、さらに繰り返し実施しています。

これを踏まえて、(公財)東京都福祉保健財団らの支援を受け、特別養護老人ホームの事業継続計画(BCP)ガイドライン、福祉施設の事業継続計画(BCP)作成ガイド、福祉避難所マニュアル等を作成してきました。

愛知県でのBCP 研修
愛知県でのBCP 研修
愛知県でのBCP 研修

災害時の支援活動

平成28年4月の熊本地震では、発災後の応急対策期には多くの関係者とともに熊本県益城町災害対策本部や避難所支援チームのサポーターとして支援活動を行ったり、福祉避難所の立ち上げに協力したりしました。また、益城町の仮設住宅を中心に、大塚製薬株式会社及び地元の介護ボランティア団体等と連携して、高齢者等の熱中症予防のため経口補水液を届けたり、ノウハウのある団体と連携して仮設住宅内の棚や手すりの設置、家具転倒防止対策を実施しました。

また、平成29年の九州北部豪雨災害、平成30年の大阪北部地震、西日本豪雨災害においても大塚製薬株式会社及びボランティア団体等と連携して支援活動を行っています。

熊本県益城町でのボランティア活動
熊本県益城町でのボランティア活動

研修事業

本協会の主な事業は自治体や福祉施設を対象とした研修事業です。自治体が集合研修を行うことで、「ひな形」を活用して、多くの福祉施設が同時に「福祉避難所マニュアル」や「事業継続計画(BCP)」を作成することができます。

平成30年度は、消防防災科学センターの委託により、都道府県単位では富山県、石川県、三重県で福祉避難所マニュアル作成研修を実施しました。その福祉避難所マニュアル作成研修の進め方を紹介します。

(1)前期研修(3時間30分)

福祉避難所の課題を認識し、グループワークにより気づき、理解を深めます。自らの福祉施設で福祉避難所マニュアルの素案を作成できるよう「ひな形」を説明します。「ひな形」は電子データで研修受講者に渡されます。

(2)施設での素案作成

施設に戻ってから、職員アンケートにより災害時の参集可能性、災害時の課題などを記入してもらい、施設職員の参画を進めます。アンケート結果等を反映して「ひな形」に記入する形で福祉避難所マニュアルの素案を作成します。

(3)後期研修(3時間)

それぞれの福祉施設で作成した素案を持ち寄り、グループワークで相互参照、講師によるポイント説明などレベルアップを行います。福祉避難所マニュアルの第1版が完成します。

マニュアルは作成して終わりではありません。レベルアップするために、このマニュアルには訓練終了後に「課題」、「ありたい未来」、「解決年月日」などを記入する欄があり、PDCAサイクルを回せるようになっています。

これまでも福祉避難所マニュアル作成研修を実施してきましたが、1回限りの研修ではマニュアル作成率は低いままでした。しかし、2回研修とすることで、後期研修が終わった施設はほとんどが福祉避難所マニュアルを作成できるようになりました。

福祉施設の事業継続計画(BCP)や福祉避難所マニュアル作成に関心のある自治体、社会福祉協議会、福祉関係団体のみなさまには、ぜひ一度、お問い合わせください。また、本協会の認定コーチや会員となって一緒に活動してくださる方々も募集しています。

本協会は、赤い羽根福祉基金から平成28年度、平成29年度の2年間にわたり、助成をいただきました。この支援があって、私たちはマニュアルのレベルアップ、研修手法の点検、見直し、さらには研修講師の養成を行うことができました。心から感謝申し上げます。

フォローアップ研修
フォローアップ研修



〈( 一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事 鍵屋一〉

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

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