防災リーダーと地域の輪 第30回

地域全体を動かしたマップづくり

児童数13名の小学校が平成27年度「第12回小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」の「未来へのまちづくり賞」、平成28年度「第13回小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」の「防災担当大臣賞」、同年度の「ぼうさい甲子園」の「津波ぼうさい賞」を受賞した。

愛媛県の南端に位置する愛南町は、急速に進む過疎化・高齢化のなか、南宇和郡の旧5町村が平成16年10月1日に合併して誕生した。南は太平洋、西は豊後水道に面しているため、南海トラフ巨大地震が発生すれば、町の大部分が5~10メートル浸水すると想定されている。そのため、愛南町では町をあげて防災啓発活動に力を入れてきた。

内海の御荘湾に面した愛南町立中浦小学校は、児童数13名の小規模校。平成27・28年度と愛南町の防災教育研究指定校になり、防災教育の一貫として防災マップづくりに取り組んでいる。平成27年度「第12回小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」では、尻貝地区の4~6年生7人がつくった作品が「未来へのまちづくり賞」を受賞。さらに平成28年度の第13回同コンクールでは、夜間の避難をテーマとした同地区の3~6年生6人による作品が「防災担当大臣賞」に輝き、中浦地区の児童たちがつくった作品も「佳作」に選ばれた。さらに同校の取組は、平成28年度「ぼうさい甲子園」で「津波ぼうさい賞」も受賞している。

「子どもたちは前回のマップづくりにある程度の達成感があったようで、当初は今年度のテーマ設定に困っている状態でした。そんな矢先、〝実際に役立つマップにしたいから、地域アンケートを取ったらどうか〟という意見が出てきました。そこで、子どもたち自ら10日間ほどをかけ、約70戸の家を回ってアンケートを集めたところ、〝夜に地震が起きたら、どう逃げていいのか不安です〟という声が寄せられました。こうして、夜の避難マップが必要だという課題が浮かび上がりました」と尻貝地区の子どもたちを指導した前田和美先生は言う。

「調べてみると、高台への避難路に電灯が一つもないことが分かりました。何とかしたいという思いから子どもたちはインターネットでソーラーパネル看板照明灯を見付け出し、町の防災対策課に相談しました。山影になるので必要な電力が得られない、という答えには落胆しましたが、それではとさらに蛍光看板があることを見付け出し、子どもたち自ら区長さんに導入をお願いしました。マップづくりの指導に当たっては、ただ楽しいだけではなく、この活動が地域にどうつながっていくかを一つひとつ考えさせるように気を付けました」

このようにして、マップづくりは地域を巻き込んだものとなっていった。〝探検〟に出た際もすぐに地域の人々が集まり、子どもたちだけでは見落としがちなことを大人の視点で指摘してくれたという。子どもたちは避難路の災害リスクを点検し、各家庭からの避難経路を5ルート設定した。まとめに当たっては、夜間をイメージする台紙を選び、調べたことを図やグラフを用いて表したり、伝えたい内容によって画用紙や文字の色を変えたりするなどの工夫を盛り込んだ。

イノシシの出没箇所、滑りやすい側溝、崖崩れの危険ゾーンは図案化して一目でわかるように表示され、極端に危険な側溝には蓋をしてもらった。さらに地元の測量会社の協力を得て、津波からの一時避難場所や校舎屋上の高さ(海抜)を測量してもらって記載した。完成したナイトマップは、夜間の避難時に実際に役立つ大作となった。

前年度と同じように、各チームがつくったマップは大判で印刷し、雨に濡れても大丈夫なようにラミネート加工して、地域の全家庭に配布された。さらには地域の人々を学校に招き、子どもたちがマップづくりをはじめ様々な防災教育で学んだことを発表して、相互交流を深めた。

「自分たちで課題を設定し、その解決方法を練り、実行しながらまとめていく。総合学習の手段として、マップづくりの役割は非常に大きいと思います。マップづくりを通して、子どもたちは地域に対する感謝の気持ちも育んだようです。発表会では多くの学んだことから何を発表するかを子どもたち自ら取捨選択し、発表の仕方も様々に工夫しました。そして地域の方々との交流を通して、来年の活動につながる新たな課題も見えてきました。防災教育を通した子どもたちの意識は、明らかに高まっていると思います」と前田先生は言う。

  • 防災マップづくりのために地区調査を行う中浦小学校の児童
    防災マップづくりのために地区調査を行う中浦小学校の児童
  • 「第13回小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」で「防災担当大臣賞」を受賞した、夜間の避難をテーマとした防災マップ
    「第13回小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」で「防災担当大臣賞」
    を受賞した、夜間の避難をテーマとした防災マップ
  • 測量しながら避難路にも海抜をマーキング
    測量しながら避難路にも海抜をマーキング

(写真提供 愛南町立中浦小学校)

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