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世界の自然災害

災害に対する脆弱性を減らし、人的・経済的損失や災害リスクを軽減していくことは国際社会の重要課題のひとつである。2015年は、今後15年間の国際的な防災指針となる「仙台防災枠組2015~2030(仙台防災枠組)」をはじめ、「持続可能な開発目標(SDGs)」や2020年以降の気候変動に関する国際合意である「パリ協定」が採択され、国際防災分野において重要な年となった。SDGsでは、持続可能な開発の基盤に欠かせない要素として、仙台防災枠組が提唱する防災・減災の主流化やレジリエントなまちづくりが組み込まれた(注1)。
ベルギーのルーベンカトリック大学災害疫学研究所(CRED)(注2)によると、2015年には全世界で346件の自然災害が発生し、2万2773人が死亡、9860万人が被災、経済的損失額は665億米ドルにのぼる。また1995年から2015年の世界の自然災害発生件数を見ると、6457件の気象災害が発生し、60万人以上の命が奪われるとともに、約41億人が被災している(注3)。洪水、暴風雨、干ばつ、熱波など気象災害が90%を占めている(図1)。

  • 図1 1995年~2015年 世界の自然災害

本稿は、発生件数が高く、さらに気候変動により激甚化する傾向の気象災害について、最近の洪水事例(スリランカ、米国ルイジアナ州)から被害状況と政府の対応を紹介する。
スリランカ:洪水による災害(注4)
2016年5月15日に発生した非常に強い熱帯暴風雨ロアヌがもたらした豪雨により、スリランカ全州25のうち22州において大規模な洪水及び土砂崩れ等が発生し、約42万人が被災、203人が死亡した。また家屋被害(倒壊:691棟、一部損壊:4895棟)、浸水による農作物の被害、土砂災害による道路の寸断といった被害もあり、過去5年で最大の災害となった。
スリランカ政府は、浸水地域や土砂災害の恐れのある丘陵地域に軍を派遣し、避難や救助活動を行うとともに、軍及び地方政府との連携のもと食料や水などの物資を配布した。5月26日には、保健省と防衛省により保健医療チームが結成され各地の避難所を巡回し、ヘルスケアおよび感染症対策等を行っている。
政府は地方政府との協力のもと被災者支援を行ったが、ほぼスリランカ全土が被災し、政府のみでは充分な被災者支援が行えないことから、日本を含む各国や国際機関等に対して支援要請を出した。日本を含む諸外国からの救援物資支援や、世界保健機構(WHO)による被災者への社会心理的ケア、国際連合児童基金(UNICEF)による乳幼児のミルクなどの物資支援、その他NGOによる被災者支援が展開されている。

  • 2016年5月 洪水の様子(スリランカ防災省災害管理局 提供)

  • 2016年5月 国家災害対応委員会による物資支援(スリランカ防災省災害管理局 提供)

米国ルイジアナ州:洪水による災害(注5)
2016年8月12日から米国南部のルイジアナ州は記録的な豪雨に見舞われ、広い地域で大規模な洪水が発生した。この洪水により13人が死亡し、約10万棟の家屋や建物が被災、2万人以上が救助を要する状態となった。
ルイジアナ州知事は8月12日に非常事態宣言を発令し、これを受けてオバマ大統領は14日に災害事態宣言を発令するとともに、連邦緊急事態管理庁(FEMA)による経済的救済プログラムの詳細情報を公表した。また16日までに、甚大な被害を受けたルイジアナ州の20郡を非常災害地域に指定した。
FEMAは被災者の生活再建や、家屋や工場の再建、また企業活動・行政活動の復旧にあたって、資金面からの支援を行った。また、現地でジョイントオフィスを設置し、連邦政府から派遣された調整官と州政府の調整官が連携し、災害対応を行っている。

被害が拡大する要因は自然や地形などの地理的条件だけではなく、政府の防災対策や財務・対応能力など社会経済構造、貧困など災害に対する脆弱性やジェンダーなど社会文化的背景が相関的に関係する。言い換えれば、災害による被害を皆無にすることは困難だが、防災・減災の取組みを積極的に進めることによって、損失を減らすことは可能である。
各国が発展段階に応じた災害対応力の強化や、被害を最小限に抑えるための事前対策への投資を行うとともに、災害リスクの軽減のための国際防災協力が求められている。
(注1)「持続可能な開発目標(SDGs)」では、自然災害や気候変動の脅威が指摘されるとともに、ターゲット1.5として、「2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害への暴露や脆弱性を軽減する。」ことが明記されたほか、ターゲット13.1として、「全ての国において、気候関連の脅威や自然災害への強靱性と適応能力を強化する」旨が明記されている。そのほか、仙台防災枠組と同様、災害による死者数と被災者数の削減などの目標も明記されている。
(注2)ベルギーのルーベンカトリック大学災害疫学研究所(CRED)では、死者10人以上、被災者100人以上、緊急事態宣言の発令、国際支援要請のいずれかに該当する災害を対象としている。../../../../tolink/out83.html
(注3)The Centre for Research on the Epidemiology of Disasters (CRED) and The United Nations Office for Disaster Risk Reduction (UNISDR). The Human Cost of Weather Related Disasters 1995 to 2015 ../../../../tolink/out93.html 別ウインドウで開きます
(注4)UN Office for Coordination of Humanitarian Affairs. Sri Lanka: Floods and landslides Situation Report No. 2 (as of 26 May 2016)http://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/OCHA%20ROAP_SL_Sitrep2.pdf 別ウインドウで開きます別ウインドウで開きます
(注5)FEMA. Louisiana Severe Storms and Flooding (DR-4277)../../../../tolink/out84.html
CNN. Louisiana flood: Worst US disaster since Hurricane Sandy, Red Cross says(August 19,2016)../../../../tolink/out85.html
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