防災リーダーと地域の輪 第27回‐内閣府防災情報のページ

中学生が地域を守る

「災害時に貢献できる中学生の育成」を目的に創設された東京の荒川区立南千住第二中学校の「レスキュー部」は、地域との絆を大切にしながら、様々な防災活動に取り組んでいる。

荒川区立南千住第二中学校に「レスキュー部」が創設されたのは2012年5月。そのきっかけとなったのが、2011年3月に発生した東日本大震災だった。地震後の避難や、避難所での生活に中学生や高校生が果たした役割が大きかったことから、災害時に率先して地域に貢献できる中学生を育てるための部活動として始まった。

創部当初の部員数は、全生徒の約25%(65名)だったが、現在は約68%(243名)にまで増加している。多くの部員が他の部活動と掛け持ちをしながら参加している。

「中学生の防災意識を高めることは、現在だけではなく、その生徒が大人となり、親となる10年、20年後の地域の防災力の向上にも確実につながっていきます」と南千住第二中学校副校長の松田公好さんは言う。

レスキュー部は生徒の防災意識の向上と地域貢献を柱に、さまざまな活動を行っている。その一つが、毎年夏休みに行っている防災訓練である。日本赤十字社や地元町会などと連携し、学校が避難所となることを想定して実施をしている。昨年8月の訓練では125名が参加し、炊き出し、高齢者の避難誘導、避難所の設営などを行った。

レスキュー部は「絆ネットワーク活動」にも力を入れている。これは、日頃から地域の高齢者と顔見知りになっておくことで、災害時にスムーズな支援が実行できるようにする活動である。部員2〜4名が1チームとなり、毎月、学校だよりや学校行事の案内を、あらかじめ登録している高齢者宅(現在は30世帯)に持参し、直接手渡すことで、コミュニケーションを図っている。時には1時間近く、世間話をすることもあるという。

また、年1回、近隣の保育園と連携した避難訓練も行っている。部員が保育園に出向き、園児の手を引いて中学校の体育館まで避難誘導をする。体育館では部員が園児と一緒に遊ぶ時間を設けることで、お互いが顔見知りになる機会を作っている。

こうしたレスキュー部の活動は高く評価されており、さまざまな賞を受賞している。今年3月には、第20回防災まちづくり大賞の日本防火・防災協会長賞を受賞した。また、レスキュー部の活躍がきっかけとなり、荒川区では2015年4月から区立中学校全10校に防災部が設置されるようになった。

「レスキュー部員の影響で、全校生徒の防災意識も高まり、普段の学校での避難訓練の質も向上しています」と松田さんは言う。「また、高齢者や保育園児との交流を通じて、生徒に、優しく、思いやりのある心が育っていると思います」

レスキュー部員の思い

2015年には、レスキュー部の中に「スーパーレスキュー部」が設立された。より高度な防災の専門知識や技能を身に付けることが目的である。現在、17名が参加をしている。

「防災の知識や技能のレベルを上げたいと思って、スーパーレスキュー部に入りました」と3年生の横瀬さくらさんは言う。「高い知識や技能を持てば、防災について、家族に自分の意見をもっと言えるようになると思います」

横瀬さんが1年生の時にレスキュー部に入部したのは、家族の防災意識を高めたいという思いからだった。横瀬さんはレスキュー部の活動で得たさまざまな知識を、実際に家庭で実行している。例えば、テレビの転倒防止のために、テレビの下に粘着マットを敷いたり、防災リュックを用意して、玄関近くに置くといった対策である。

「レスキュー部の活動は楽しいです」と横瀬さんは言う。「絆ネットワーク活動で訪れたお宅で、高齢者の方に『がんばってね』と言われた時は、とれも嬉しかったです」

スーパーレスキュー部の部員である2年生の市川諒さんも、自分のためにも、家族のためにもなると考え、レスキュー部に入部した。

「小学校2年生の時に東日本大震災を経験しましたが、レスキュー部に入って、災害の脅威をさらに強く感じるようになりました。首都直下地震が発生したらどうなるのか心配です」

学校周辺には軽自動車が通るのも難しい細い道や、古い建物も多い。市川さんは、レスキュー部に入ったことで、そうした周りの状況により気を配るようになった。

「熊本地震もあったので、これからさらに防災意識を高めていきたいです」と市川さんは言う。「将来は、災害が発生した時に、率先してみんなを安全に導くような大人になれればと思います」

(写真提供 荒川区立南千住第二中学校)


  • 「絆ネットワーク活動」として、地域の高齢者を訪れるレスキュー部員

  • 保育園児の手を引いて、避難誘導する訓練

  • 昨年8月の防災訓練で行われた簡易トイレの組み立て

  • 昨年5月、荒川区総合水防訓練でバケツリレーを行うレスキュー部員

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.