防災リーダーと地域の輪 第26回

防災が当たり前の世の中へ

一般社団法人「防災ガール」は、「防災をもっとオシャレでわかりやすく」をコンセプトに、女性・若者をターゲットにした防災活動に取り組んでいる。

一般社団法人「防災ガール」は、20〜30歳代の女性が中心となり、同世代の女性や若者向けに防災を広める活動を行っている。防災ガールを2013年に立ち上げたのが、代表を務める田中美咲さん。田中さんは大手ITサービス企業に務めた後、東日本大震災の復興支援を行う公益社団法人に転職、福島県で雇用創出事業に携わった経験を持つ。

「若者は災害時に共助の重要な担い手になります。しかし、若者は防災に『ダサい』、『面倒くさい』というイメージを持っており、防災への関心が低いです。防災ガールは、おしゃれに分かりやすく防災を伝え、若者の防災意識を変えることを目指しています」と田中さんは言う。

防災ガールのメンバーは現在約100名、その活動は幅広い。例えば、若い女性向けの防災ブランド「SABOI」を立ち上げ、防災グッズの制作・販売を行っている。そのグッズの一つが、懐中電灯、ウェットテッシュ、ヘアピンなど9点が入った「防災ポーチ」。毎日持ち歩くバッグにポーチが入れられるように、女性目線で中身を厳選した。また、災害時にヒールを履いていても、歩きやすく工夫されたこの靴に履き替えて避難できるように、小さく折り畳めるパンプスも制作。その他、AEDの使い方や止血方法などがイラストで描かれた手ぬぐいなども制作した。これらの商品は普段使いもできるおしゃれな防災グッズとして人気を集め、インターネットで販売し、完売している。

防災ガールは、これまでにない新しい防災訓練も各地で実施している。それが、GPSを利用したスマートフォン用のゲーム「ingress」(イングレス)を使った次世代版避難訓練「LUDUSOS」(ルドゥオス)。参加者が2つの陣営に分かれ、指定された防災・災害に関連する場所を制限時間内に回ってポイントを競うというもの。2015年8月に東京の渋谷で開催された訓練には約100名が参加し、渋谷駅周辺の「一時避難場所」、「帰宅支援ステーション」、「帰宅困難者受け入れ施設」などを徒歩で巡った。ゲームの途中では「ここで大きな揺れを感じたら何に気をつけるべきでしょうか」といったクイズも出題される。ゲーム終了後のアンケートでは参加者から、災害時の行動として、「群衆に巻き込まれないよう人の流れに気を付ける」、「身近な一時避難拠点へ行く」、「上からの落下物に気を付ける」など、訓練での経験から学んだ意見が多く出された。

「実際に街を歩き考えながら訓練に参加することで、災害時の危険性や自分の身の守り方を具体的に考えるようになります。その結果、参加者の防災意識が非常に高まりました」と田中さんは言う。

防災の基本アクション

防災ガールは各地の企業や学校から、防災に関する指導や講演を依頼されることも多い。その時に紹介するのは、覚えやすく、簡単に実行できる防災行動である。防災ガールではそうした行動を「防災の5つの基本アクション」としてまとめている。

  1. 声をかけあおう
    家族と普段から防災について話し合う。地域、学校、会社の人と日頃から声をかけあう。妊婦や障害者など、助けが必要な人に気を配る。
  2. 「もしも」の状況を考えておこう
    防災ポーチ、携帯電話の充電器、常備薬を持ち歩く。自宅や会社の避難経路・避難場所を知っておく。家具を固定する。自宅で食品などを備蓄する。
  3. 健康管理をしっかりしよう
    こまめに水分補給をする。体温調整ができるようにする。体力づくりをする。
  4. 情報を理解し、判断しよう
    内閣府(防災)twitter(https://twitter.com/CAO_BOUSAI)をフォローする。防災速報のアプリをダウンロードする。情報の発信元を確認する。
  5. リラックスしよう
    焦らずに、冷静に判断する。無理をしたり我慢をせず素直になる。一人の空間をつくったり、大きく深呼吸する。

防災ガールは今年中に、防災ガールの活動を通じて何らかの防災行動をとる人が、全国の消防職員数とほぼ同じ16万人になる目標を掲げている。
「少しでも防災行動をとった経験がある人が16万人いれば、かなり多くの人を助けることができ、助け合いが成立するようになります。これまで防災に関心のなかった人の意識を新しい方法を使って変えることで、防災を当たり前の世の中にしていきたいです」と田中さんは言う。

(写真提供 一般社団法人 防災ガール)


防災ガールのメンバー

懐中電灯、ウェットテッシュなどが入った防災ポーチ

防災ガールは、スマートフォン用のゲームを使った次世代版避難訓練「LUDUSOS」(ルドゥオス)を各地で実施

2015年9月の関東・東北豪雨により被災した家屋で、床下の土砂の除去を行う防災ガールのメンバー

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内閣府政策統括官(防災担当)

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