特集2 『にしのみや津波ひなん訓練』の実施‐内閣府防災情報のページ

平成25年1月27日、兵庫県西宮市が主催する、南海トラフ巨大地震を想定した「にしのみや津波ひなん訓練」が実施されました。関係機関、各種団体、企業等の参加・協力に加え、数万人規模の一般市民も参加した大規模訓練となりました。

1様々な場所で、総勢1万1400人が参加した「シェイクアウト訓練」

兵庫県西宮市は大阪湾の奥まったところにあるため、これまでは、地震に伴う津波による被害は少ないと考えられてきましたが、平成23年の東日本大震災を教訓として昨年8月に内閣府から発表された南海トラフ巨大地震の想定は、本市にも5mの津波が到達するというものでした。
本市ではこの想定を踏まえ、浸水が予想される区域にお住まいの約21万人の市民を対象とした、地震の発生から津波が来るまでの一連の流れを体験する、市民参加型の実践的な津波避難訓練を実施しました。
災害発生時には、市民一人ひとりがその状況に応じて判断し、行動しなければなりません。
この避難訓練は、大規模災害の原則である、「自分の命は自分で守る」という考えと、地域みんなで助け合って避難するということを各自が考え、確認し、いざというときに判断・行動できることを目的に行ったものです。
訓練は、実際の災害と同じように、緊急情報の伝達として、市内全域の防災スピーカー(142基)や地域のコミュニティFMラジオから地震発生と大津波警報を放送し、参加者は、自宅や今いるその場で地震の揺れから身を守る訓練=「シェイクアウト訓練」(「姿勢を低く!」、「体・頭を守って!」、「揺れが収まるまで待つ!」という行動をとる)を行い(写真①)、その後、各自で判断して、近くの津波避難ビル(平成24年8月現在で市内に360棟)に避難する訓練と、津波による浸水の恐れが低い地域まで避難する訓練を実施しました(写真2)。
津波避難ビルへの避難では、地震によるビルの倒壊・火災・定員オーバーなどを想定し、この訓練に併せて全戸配布した「津波避難ビルマップ」にある複数箇所の避難ビルを確認しました(写真3)。
また、津波による浸水の恐れが低い地域への避難訓練では、設定した6箇所のゴール地点を目指して避難したうえで、各地点での防災講演会、炊き出し訓練などの防災・減災イベントを体験していただきました(写真4)。
さらに、津波避難ビルに指定されている病院・福祉施設では、避難者受入れ訓練に加え、避難者と施設側のスタッフが協力して施設利用者などを上階に避難させる利用者搬送訓練も行いました(写真5)。

2津波による浸水の恐れが低い地域への避難訓練

3津波避難ビルへの避難訓練

4訓練ゴール地点の防災・減災イベント

5病院・福祉施設における利用者搬送訓練

訓練中は、防災スピーカーと防災サイレンを連続して鳴動させました。災害時に放送される内容、音量、音が聞こえる範囲を体験することで、防災スピーカーや防災サイレンが災害時の情報手段の一つであると参加者に認識していただくことができたと考えています。
本市では、今回の訓練に際しては、市のホームページ、市内の駅や商業施設等でのポスターやチラシ案内、新聞等メディアでの紹介など、様々な方法で参加を呼びかけたところ、訓練全体での参加者数は、延べ4万6300人にのぼりました。多くの市民の方に参加していただいたことから、各ゴール地点は大混雑となりましたが、参加者は整然と避難し、訓練による怪我、大きなトラブル等はありませんでした。
また、これまで市民に防災訓練を呼びかけても、高齢者の参加がほとんどでしたが、今回は、家族連れの姿が目立ち、これまで少なかった年齢層の方の参加も数多く得ることができました。
訓練後に実施したアンケートでは、「災害は他人事ではないことが分かった」、「津波避難ビルの場所や入口が分かった」、「災害が起こった時に助け合えるような近所づきあいを始めたい」等、災害への備えについて気づいていただける結果となりました。
今回の訓練は、市の組織全体で実施し、多くの職員も訓練のアンケート回収や安全管理など進行補助を行ったことにより、実災害においても職員一丸となって市民の生命・身体を守るという意識を再確認する機会となりました。さらに、アンケートの回答数から、各避難ビルを利用する避難者数の推計を行うこともできました。
このような大規模訓練を実施したことで、季節・時間・曜日による状況の違い、災害時要援護者への対応、また県、近隣都市を含めた広域避難など、次回以降取り組むべき課題が明確になりました。今後、訓練の検証を進め、地域ごとの望ましい避難行動や、防災施策を検討するうえでの基礎資料としていきます。
(執筆・写真提供 西宮市防災危機管理局防災総括室 災害対策課)

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