防災リーダーと地域の輪 第13回

「やさしい日本語」で外国人の防災活動支援

防災の知識がなく、日本語が不自由な外国人は、災害時に要援護者となってしまう。
京都を拠点に活動する「やさしい日本語」有志の会は、そんな外国人に一人でも多く助かって欲しいと日本語を使った、外国人のための防災教育の普及に取り組んでいる。

「やさしい日本語」有志の会(以下、有志の会)は、事務局を務める杉本篤子さんらボランティア日本語教師の有志が集まって京都に設立された。

会の名称にもなっている「やさしい日本語」とは、弘前大学の言語学研究者を中心に研究がすすめられている”外国人にもわかりやすい日本語”のことで、日常会話で使われる日本語よりも、さらに簡単な用語や単純な文章構造が用いられている。例えば、災害時によく使われる「避難する」あるいは「安否確認」は、それぞれ「逃げてください」、「大丈夫かどうか聞く、調べる」といった「やさしい日本語」に言い換えることができる。

「このような『やさしい日本語』のコンセプトは、日本語を勉強中の外国人に言葉を教えるノウハウと非常によく似ているので、日本語教師にはわかりやすいんです」と杉本さんは言う。

日本語教室に通ってくる外国籍住民から「防災についてあまり知識がなく、準備をしていない」という話を聞いていたこともあり、是非「やさしい日本語」による外国人のための防災教育を広めようと、杉本さんらは2009年から本格的な活動を開始した。

日本人は、「外国人には英語で対応しなければ」と考えがちだが、外国人の中には、英語が分からない人もいる。その一方で、日本語を勉強していて、ひらがなや簡単な日本語なら理解できる外国人もいる。

「言葉が理解できれば、外国人も日本人と同じ情報を得て行動できるのです」と杉本さん。

だからこそ、災害時に外国人へ確実に情報を伝えるため、「やさしい日本語」は非常に有効なのだ。

和歌山県国際交流協会で行われた「外国人のための防災講座・救命講習会」(上段左右)、静岡県国際交流協会で行われた日本人向けの「やさしい日本語」ワークショップ(下段左)、「やさしい日本語」有志の会が開催した外国人のための防災グッズ展示会(下段右)
(写真提供 「やさしい日本語」有志の会)

”気づき”が次の行動につながる

有志の会は、地元京都で外国籍住民に防災授業を実施するだけでなく、京都府内外の日本語教師向けに防災教育ツールの開発や防災教育の啓発活動に力を入れている。

実際に防災授業を受けた外国人は、防災知識を得たことで気持ちに変化が起きて、「地域の防災訓練があったら受けてみようか」と防災に関心を持つようになったり、なかには、授業の帰りに早速防災グッズを購入する人もいるそうだ。

さらに有志の会では、日本人向けのワークショップを開催し、災害時に外国人が陥りやすい問題や、彼らにわかりやすい日本語がどのようなものかを日本語教師以外に広める取り組みも行っている。

「災害時に使われる用語や、日本人が日常当たり前に使う言い回しが外国人には難しいということをたくさんの人に気づいてもらうことが、外国人を助ける最初のステップですね」と杉本さんは言う。

このような幅広い地道な活動が認められ、防災教育チャレンジプラン2011年度の防災教育優秀賞を受賞した有志の会。今後は、京都府や公益財団法人京都府国際センターと協力して実施する京都府内の外国籍住民の防災意識アンケート調査や、京都府の中学校での「やさしい日本語」の講習会実施も予定されており、活動は、さらに広がりをみせている。

「やりたいことは、まだたくさんあります。今後、さらに多くの方に関わっていただければ」と杉本さんは前向きに語ってくれた。

「やさしい日本語」有志の会が開発した防災教育ツール「防災グッズカード」。30種類の防災グッズを6ヶ国語で品名表示。カードの裏側には「やさしい日本語」によるグッズの詳しい解説がある。

防災リーダーの一言

日常的に住民同士がコミュニケーションをとっているところでは災害時にトラブルが少ないと聞いています。日本人と外国人も日常から「やさしい日本語」を使ってコミュニケーションが取れるようになれば、災害時でもきっとお互いに助け合えることがたくさんあると思います。
また、災害時のお知らせだけでなく、日常生活情報も「やさしい日本語」に作り替えていこうという取り組みが各地の国際交流協会や自治体などで増えています。
「やさしい日本語」は、様々な場面で使えるコミュニケーションのツールですから、多くの方が理解して使っていただければと思っています。

小西正志

杉本篤子
すぎもと・あつこ
「やさしい日本語」有志の会 事務局

所在地 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)
内閣府政策統括官(防災担当)

Copyright 2017 Disaster Management, Cabinet Office.