防災リーダーと地域の輪 第11回

商業高校だからできる防災教育

愛知県立半田商業高等学校では、商業高校の専門性を活かし、「商業」と「防災」の連携による防災教育普及と防災意識の啓発に取り組んでいる。

半田商業高校では、2009年度から本格的な防災活動を開始した。NPOの企画に協力して、過去に周辺地域で起きた大地震や台風を題材にしたDVD「デジタル防災紙芝居」の製作に参加したことがきっかけだという。脚本の元となるデータや体験談を集めるために実際に災害を体験した方を招いたワークショップを実施し、当時の2、3年生全員が聞き取りにあたるなど全校あげての取り組みとなった。
「防災活動を一年で完結させてしまうのはもったいない」と翌2010年度からは、この「デジタル防災紙芝居」を活用した「出前授業」を市内の小中学校で実施している。
教頭の白井上二さんは「生徒達の道徳心やコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力も向上します」と話す。
改善を重ねて内容の充実を図り、昨年度からは話を聞くだけではなく、その場で学んだことを記入できる小学生用の「防災こどもノート」も導入している。「出前授業」は半田商業高校の防災活動の柱としてすっかり定着してきた。

オリジナルな防災活動
2011年度はさらに、「半商生だからできること」を合言葉に、東日本大震災復興支援と防災商品開発にも取り組んだ。
復興支援活動は、「半商ハートツリー・プロジェクト」と名付けられた。「復興支援に役立ててほしい」と地元の農園から無償提供を受けたハート型の小さな実がなる低木「ハートツリー」の鉢植えを販売し、売上げを義援金として被災地へ送ろうというものだ。愛知県立常滑高等学校の協力も得て、植木鉢には地域名産品の常滑焼が使われることになった。販売企画から広告制作、通信販売用ウェブも立ち上げた他、生徒達は地域の防災訓練や夏祭り等を手伝いながら、会場で直接販売をさせてもらうこともあったという。
約3ヶ月間で1,160鉢を販売し、集められた義援金は約350万円。震災後に岩手県石巻市立女子商業高等高校からの転入生があったことから、義援金は昨年11月に半田商業高校の生徒代表らによって同校に直接届けられ、両校の新たな交流のきっかけにもなった。
一方の防災商品開発は、オリジナルの備蓄用缶入りパン「ごんぱんだ」。半田市ゆかりの童話「ごんぎつね」、「乾パン」、「半田」に因んだ命名だ。中身は地元のパン屋さんと共同開発し、試食会や企画会議を重ねて「ドライフルーツ入り」と「さつまいも入り」の2種類の試作品を完成させた。生徒が原価計算や販売価格の決定を行い、キャラクター付のパッケージデザインも半商生オリジナルだ。現在は一般販売に向けて調整中だが、まず来年度から半田商業高校の備蓄品として活用を開始し、さらには防災意識啓発の意味もこめて近隣の県立高校等にも広めていきたい考えだ。
このような独創的な取り組みにより、半田商業高校は、防災教育チャレンジプランの2011年度「防災教育大賞」を見事受賞した。
「防災活動を通して、生徒達が復興支援の気持ちを共有できたこと、「ハートツリー」の販売活動などで様々な方に助けていただき人の温かさがわかったこと、これは大きな成果です」と話す白井さん。「今後も『出前授業』や『ごんぱんだ』普及を通じて、小中高校生が防災意識を高めてがんばってもらいたいと思っています」

平成23年度の防災教育普及活動の様子。(左上から時計回りに)「ごんぱんだ」完成品、試食会で改善点を検討、「出前授業」でアルミ製ブランケットの説明、イベントで「ハートツリー」を販売中にテレビ局のインタビューに対応
(写真提供 愛知県立半田商業高等学校)

防災リーダーの一言

防災教育こそが「生きた道徳教育」だと思っています。
義援金を届けるために被災地を訪れた生徒は、非常にショックを受けていましたが、防災活動を通じて生徒達は、技術的なことも、ハートの部分でもすごく成長しました。「毎日をもっともっと真剣に生きなければいけない」と話しています。防災教育を通じた命の教育、心の教育というものが道徳教育に繋がると考えています。
防災意識の啓発と防災教育の普及、そして生徒全員が同じ気持ちを共有し、学校全体の防災意識が高められるような企画が今後の課題です。商業高校が防災教育で何が出来るのかということを考えながら検討していきたいと思います。

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白井上二
しらい・じょうじ
愛知県立半田商業高等学校 教頭

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内閣府政策統括官(防災担当)

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