記者の眼

普段からの意識が大事

 この11月より三重県の津支局に異動することになった。東京で引き継ぎを行っていたとき、新たに防災を取材することになった同期の記者は、「防災については、避難訓練の経験くらいしかない」と語った。実を言うと、私が今年の5月に防災の取材を始めたときも、同じような経験しかなかった。そのような状態から約半年という短い取材期間であったが、最も印象に残った「災害に対する普段の意識」について二つ書いておこうと思う。
 一つは、「災害による被害をいかに軽減するか」である。震災被害にあった方たちの体験談をまとめた本の中で「震災以降、寝室には何も家具を置かなくなった」という変化が語られていた。私たちが「地震は怖いもの」と思うのは、地震が発生することではなく、地震を原因とする家屋の倒壊や火災による被害などではないか。そうであるならば「地震が発生したら、身の回りにはどのようなことが起こりうるのか」と想像力を働かせ、対策を取れば、過度に地震を恐れる必要はなくなる。これはもちろん他の災害にも当てはまることだ。
 次に「災害後の生活再建」について。地震による被害を最小限に食い止めた後は、元の生活に復帰することが必要で、これが最も大切かつ難しいことだ。経済的な観点では、公的な支援制度である激甚災害制度や被災者生活再建支援制度はもちろん重要だが、個人としても地震保険に加入するなどの備えを考える必要がある。また、継続的に精神的なケアを受けられる体制の拡充や、新たな生活環境に移った人を地域から孤立させないような体制確立も今後の取り組むべき課題だ。
 最後に自戒を込めて。先日、緊急地震速報が配信された。とっさの事態に「地震発生時、防災担当記者が取るべき行動は何?」と理解していたつもりの段取りが頭から抜け、あたふたしてしまった。それを見ていた先輩記者から「まずは、君が落ち着きなさい」と笑いながらたしなめられてしまった。いざ何かが起こってからでは、時すでに遅し。「普段からの意識が大事」。防災の取材を通して学んだことを転勤先でも忘れないようにしたい。

宮下 大輔さん

時事通信社津支局
真島 裕

ましま・ゆう
2010年4月時事通信社入社。内政部配属。11月より津支局勤務。

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内閣府政策統括官(防災担当)

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