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ミュージシャン KOKIAさん

平成19年の新潟県中越沖地震で被災したひとりの女性からKOKIAさんに一通のメールが届きました。
「携帯電話の着信でKOKIAさんの曲が流れるたびに、私は励まされています。ありがとう」
返事は音楽で……と送った曲が「私にできること」。
間もなく曲は柏崎のFM局から発信され、被災した人々の心の支えとなったのです。

頑張ったのは柏崎の人たち 私はそれを伝えていきたい

 被災のさなかにいるにもかかわらず、感謝の気持ちを伝えてくれたことに心を動かされ、KOKIAさんはすぐに曲を書いて メールで送りました。
「それまでも歌の力を信じていましたけど、彼女からのメールで『音楽が人を支える』ことを実感して、とても感動したんです。涙が出てきて、とにかく何かしたい!と思いました。彼女と私の人生が重なったというか……。曲も歌詞も、手紙を書くような気持ちで作りました」
 それが、優しさにあふれた歌「私にできること」。
 曲を送ってから、約1週間後。自衛隊の音楽隊から、柏崎での復興ライブへの出演依頼がありました。ところが、最初は断ったそうです。
「現地で支援している方とは違い、私なんかが東京から足を運んでライブをしたら、気分を害する人もいるんじゃないか、と思って。生活への不安を抱えている被災地では、音楽どころじゃないと思ったんです」
 その後、再び強い説得があり、KOKIAさんは柏崎へ。まちの人たちはとても明るい笑顔で迎えてくれ、会場には約3000人が集まりました。
「家の片づけや支援活動をしなければならない貴重な時間をさいて足を運んでいるのは、心から音楽を求めているからなんですよ、と言われたんです。だから、どこまでも明るく振る舞って、できる限りのことを伝えたい、と思って歌いました」
 復興ライブが終わって東京へ戻ったその日、KOKIAさんは再び曲を書いています。それが、カップリングの「Lacrima」(ラクリマ)。
「被災地を見る前に書いた『私にできること』は、頑張ってほしいという気持ちが強い。でも、みなさんの笑顔の裏にある悲しさや辛さにも触れて、傷ついた心を一瞬でも和らげられれば、と思って作りました」
 今も、KOKIAさんと柏崎の交流は続いています。去年7月28日には、ぎおん柏崎まつりに参加。今春、小学校を卒業した子どもたちには、ビデオメッセージを送っています。
「難しいことや悲しいことを、受け入れやすい形に変えられるのが音楽。売名行為と言われてもいい。歌わないより、絶対に歌った方がいいと思ってるんです。だから、責任をもって、自分の思いを伝えていきます」
 始まりは、たったひとりに送った曲。それがたちまち、まち全体の支えになり、今では全国に広がっています。過去に被災した人にとっては、当時を思い出す励ましの曲。子どもたちには、助け合いの心を育むメッセージソングになっています。
「助けてもらう立場より、人を助ける立場のほうが幸せを感じられるんですよね。人から『ありがとう』と言ってもらえるほどのことをした実感はまったくなくて、みんなの善意で今の私がある。だから災害だけでなく、たとえ小さな悩みでも、聴いてくれた人が前向きになれるような歌をこれからも歌っていきたいです」

KOKIAさん

撮影:花井智子

KOKIAさん

Profile こきあ
平成10年、大学在学中にメジャーデビュー。シンプルでメッセージ性のある歌は、TVドラマの主題歌やCMソングなどで話題になり、平成16年にはアテネ五輪の日本代表選手団公式応援ソングを歌う。今年3月18日には、アルバム『KOKIA ∞ AKIKO』『AKIKO ∞ KOKIA』を2枚同時リリース。4月29日の東京オーチャードホールを皮切りに始まった「∞」ワールドツアーは、ヨーロッパへと続いている。

平成20年7月26日に行われた「ぎおん柏崎まつり」でのライブ

『AKIKO ∞ KOKIA』
(通信販売&配信限定盤)3000円

『KOKIA ∞ AKIKO』
(ビクターエンタテインメント)3045 円

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内閣府政策統括官(防災担当)

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